2016年6月28日 (火)

新しい減感作療法

 6月にアレルギー学会に行ってきました。新しい話題が多く聞けましたが、その中で驚いたのが「経皮的免疫寛容療法」でした。
 最近は食物アレルギーの成り立ちとして、まずは皮膚に食物の蛋白質が付いて、そこでアレルギー感作という免疫反応の準備ができて、その後にその食物が口から入ると蕁麻疹などのアレルギー症状が出ると考えられるようになってきました。そのため皮膚でアレルギー感作を起こさせないことが大事になります。
 また最近はスギやダニが原因のアレルギー性鼻炎の治療として、舌下免疫療法がはじまりました。これはスギなどのアレルギーを引き起こす抗原を少しずつ舌下から吸収させて、体に慣れさせてアレルギー反応を起こりにくくする治療です。免疫寛容療法とひとつです。
 食物アレルギーでも、たとえば牛乳アレルギーなら、今までは牛乳を飲むを避けてアレルギーが起きないようにしていたのを、わざと牛乳を飲ませて、免疫に寛容状態を引き起こして治療する「経口免疫療法」が専門施設では取り組まれています。
 ところで米国ではブタクサの花粉症の治療で、ブタクサの抗原をテープにしみこませて、そのテープを皮膚に貼って減感作療法を行う「経皮的免疫寛容療法」が始まったそうです。
 皮膚に抗原を貼ったら、そこでアレルギー感作がおきて、花粉症がさらに悪化すると思われがちですが、逆に治療に使うそうです。
 どうしてそんなことが可能になるのでしょうか。ポイントは皮膚の状態です。
 アトピーや湿疹で荒れた皮膚にそのテープを貼ったらアレルギー感作が起きて症状は悪化します。しかし健康な皮膚に貼ったら免疫寛容で減感作療法になるそうです。
 もう一度確認しておかないといけないのは、食物アレルギーなどが最初に皮膚で感作されるのは、皮膚が荒れている人です。皮膚が荒れていると、免疫反応を起こす細胞が表面に出てきていてアレルギーの原因になる抗原と接触しやすくなります。だから皮膚を健康に保つことがアレルギーの予防に重要になります。さらには健康な皮膚は減感作療法にも使えるようになるのです。
 これからも免疫寛容をつかった減感作療法は発展していくでしょう。詳細は省きますが「アレルゲンペプチド療法」「DNAワクチン療法」など研究が進んでいます。

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2016年4月29日 (金)

ゲノム編集で卵アレルギーは変わる?

 4月7日の日本経済新聞など複数の新聞に、茨城県つくば市の産業技術総合研究所などの研究チームが、ゲノム編集によって、卵アレルギーの原因となるたんぱく質のひとつであるオボムコイドをつくる遺伝子をもたない鶏を作ることに成功したと報じていました。
 ゲノム編集とは遺伝子組み換えよりもさらに進んだ技術で、正確に効率よく遺伝子を改変できる技術です。この研究成果から期待されるのはアレルギー原因物質の少ない鶏卵が開発されるということでしょう。
 いまのところゲノム編集の結果で生まれた家畜などは、安全性を確認する国際的議論がまとまっていないので食用にはできません。この鶏が卵を産んでも食べることはできません。まずは薬品や試薬の製造用卵への応用が考えられるそうです。
 もしかしたら、将来、卵アレルギーのおこらない卵を食べれる日がくるのでしょうか。

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2015年3月 2日 (月)

スギ花粉症舌下免疫療法

 昨年10月から、スギ花粉症に対する、舌下免疫療法が始まりました。花粉症の症状である、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみに対する、抗ヒスタミン薬やステロイド薬などの対症療法とは異なり、アレルギーの免疫反応を根本から治療するのが免疫療法です。スギ花粉に対する過剰な反応の結果が花粉症です。その過剰な反応が起こらないようにします。そのために毎日少しずつ、スギ花粉を舌下に内服して、口腔粘膜から吸収させアレルギー反応をつかさどる免疫細胞に慣れさせます。約2年間続けると効果があると言われています。毎日忘れずに薬を内服することが大事です。治療の適応は12歳からです。毎年、花粉症がつらい人には勧められる治療です。近い将来、ハウスダストの舌下免疫療法も認可されると思われます。アレルギーの治療も変わってきます。私のクリニックでも舌下免疫療法をおこなっています。

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2014年7月30日 (水)

食物アレルギーは皮膚から

 食物アレルギーは、食べた食物が腸でアレルギーをつくると考えられてきました。これを消化管感作と言っています。最近、この考えに疑問を投げかける研究が出てきました。
 蕁麻疹などのアレルギー症状がおこるには、最初に、体が原因物質を異物として認識することが必要です。これを感作といいます。感作が成立したら、その次に原因物質が体に入ってきた時には、すぐにアレルギー反応が出ることになります。今までは、食物が通る腸で食物アレルギーは感作されると考えられてきました。しかし、最近は食物アレルギーの感作が皮膚で起こるという意見が出てきました。
 健康な皮膚にアレルギーの原因になる食物がついても感作はされません。湿疹などで肌荒れが強くなると、原因物質が皮膚の奥に入り込みます。そこにはアレルギーの最初の感作を行う細胞がいます。その細胞が原因物質の食物をとらえてアレルギーの感作が成立します。
 もともと食物は体にとっては異物です。しかし食事をしても普通は異物を排除するアレルギー反応はおこりません。それは食物を異物として認識しないように、見逃すような反応ができているからです。これを経口トレランスといいます。
 先に皮膚で食物アレルギーが感作されると、経口トレランスが阻止されます。その結果、食物アレルギー反応として、蕁麻疹などが発症します。
 最近の欧米の研究では、乳幼児の食物制限は、食物アレルギーの発現率低下にはつながらず、むしろ摂取していた方が発現率が少ないという報告もでてきました。
 日本では、加水分解小麦を含んだ石鹸を使って小麦アレルギーになったことが社会問題になりました。加水分解小麦が皮膚から侵入して、感作が成立して、小麦アレルギーになったためでした。
 皮膚の感作が食物アレルギーのすべてではないでしょうが、これからの研究が期待されます。

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2011年5月31日 (火)

食物アレルギーの新しい概念と治療

日本アレルギー学会に行ってきました。
 小児科分野での最近の話題は、乳児の食物アレルギーの原因と治療です。
 食物アレルギーは口から食べた卵などにアレルギー反応をおこして蕁麻疹などがでます。その原因は例えば、母親が食べた卵の成分が母乳を通して赤ちゃんの体内に入り、アレルギー体質の赤ちゃんでは卵の成分にアレルギー反応をおこす準備(感作と言います)ができると考えられてきました。その結果、その後に赤ちゃんが卵を食べたら、蕁麻疹や湿疹などのアレルギー反応が出てくると言われてきました。感作されるところが消化管で、アレルギー反応が出るのが皮膚というわけです。
 最近、これとは異なる意見が出てきました。食物アレルギーの感作がおこる部位は、消化管でではなく、湿疹などの皮膚の荒れた部位だというのです。口から食べて消化管で感作されるのではなく、口の周りなどの荒れた皮膚から食物成分に感作するというのです。
 この考えのもとには食物耐性という理論があります。人は病原菌などの自分から見たら異物が体の中に入ってきたら、免疫などを使って排除しようとするのに、異物である食べ物が体に入ってきたときには排除する反応が起きません。これを(食物)耐性といいます。耐性というのは異物を排除する働きを抑えてしまう体の機能です。食物の耐性は消化管でおきます。
 感作する部位が皮膚なら、食物アレルギーの感作を予防するためには、アレルギーの原因になる食物を除去するのではなく、皮膚の湿疹の治療をしっかりすることになります。しかもアレルギー食品はこれまでとは逆に、食べることで耐性を誘導して蕁麻疹などのアレルギー反応がおこらないようにするということになります。
 最近、この理論を裏付けてしまう事例がありました。「茶のしずく石鹸」を使っていた人が、運動をした後にアレルギー症状を起こしたとの報告が相次いました。これは石鹸が小麦成分を含んでいたため、長く石鹸を皮膚に使うことで、皮膚で小麦アレルギーに感作してしまい、後日、うどんなど小麦食品を食べた後に直後に運動することでアレルギー症状を起こしてしまいました。食物アレルギーが皮膚で感作されることを証明したのです。今はこの石鹸からは小麦成分は除かれています。
 アレルギー専門の大学病院や総合病院では、重度の卵アレルギーの子どもたちに、卵を短期間で連続的に食べさせて、耐性をつけさせる治療がされています。これからの食物アレルギーの概念と治療は変わっていくことになるでしょう。

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2009年2月28日 (土)

こどもを花粉症にしない9か条

「こどもを花粉症にしない9か条」という記事が医療介護CBニュースで2月23日に配信されました。
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/20729.html
YAHOO! Japanニュースでも流れました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090223-00000004-cbn-soci

 2月23日に横浜市の理研横浜研究所で報道関係者を対象に開かれた「製薬協プレスツアー」(主催=日本製薬工業協会)で、理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターの谷口克センター長が「スギ花粉症ワクチン開発」と題して講演されたようです。この講演の中で、将来子どもが花粉症で苦しまないようにするためにはどうすればよいかという話があり、「花粉症にならないための9か条」を紹介されたようです。
 その9か条とは以下の通りです。
・生後早期にBCGを接種させる
・幼児期からヨーグルトなど乳酸菌飲食物を摂取させる
・小児期にはなるべく抗生物質を使わない
・猫、犬を家の中で飼育する
・早期に託児所などに預け、細菌感染の機会を増やす
・適度に不衛生な環境を維持する
・狭い家で、子だくさんの状態で育てる
・農家で育てる
・手や顔を洗う回数を少なくする

 私はこの講演を実際に聞いてはいないので、谷口氏の真意は測りかねますが、この項目はいわゆる衛生仮説です。衛生仮説という用語は、1989年の英国の論文にはじめて登場しました。「乳幼児期までの感染,非衛生的環境が,その後のアレルギー疾患の発症を低下させる」という説です。新生児から乳幼児の免疫のモデルに、アレルギーに働く免疫と、感染防御に働く免疫のバランスを考えるモデルがあります。乳児が細菌に感染しやすい非衛生的な環境で育つと感染防御に働く免疫が強くなって、アレルギーに働く免疫が弱くなり、アレルギーになりにくくなります。逆に衛生的な環境で育つと感染防御に働く免疫が弱くなって、アレルギーに働く免疫が強くなり、アレルギーになりやすくなります。免疫学的にも衛生仮説を証明できるデータがでましたが。最近は矛盾するデータも出てきて必ずしも定説にはなっていません。
 しか個別の項目については、考えるべきもの、注意すべきことがあります。
 結核のワクチンであるBCGの接種は、成人の花粉症対策として有効とのデータはあります。
 また小児期には抗生物質はできるだけ使わないということも大事です。しかし早期に託児所に預ければ必ず感染症にかかります。ウイルス性の風邪なら自分の力で治すこともできます。しかしまれには細菌性の肺炎球菌による菌血症、髄膜炎、肺炎やインフルエンザ桿菌による髄膜炎、喉頭蓋炎、肺炎などの重症の細菌感染症になります。そこまで重症でなくても肺炎球菌やインフルエンザ桿菌の中耳炎にはよくなります。そのたびに抗生物質を使わざるをえない状況になります。だから託児所に預けて細菌感染の機会を増やして抗生物質を使わないとは矛盾です。
 また、谷口氏は「生後6か月以内に麻疹、抗酸菌などの感染症にかかるとアトピーになりにくい」とも言っているようです。これは大変危険な誤解を招く報道です。現在でもワクチンを接種するよりは、麻しんなどの伝染病は患者さんからもらって罹ったほうが免疫が強くついてよいと思い込んでいる人が多くいます。一般の人は麻しんがどれだけ怖い病気か忘れています。麻しんは発病したら現代医学では治せません。約1000人に1人は死亡します。また治っても10万人に1人は数年後に脳症を発症して最後は亡くなります。おたふくかぜも1000人に1人は一生治らない難聴になります。ちなみに抗酸菌の代表は結核菌です。6か月以内に結核に感染したら重症化して結核性髄膜炎などを発症して死亡します。
 谷口氏もそのことはもちろん承知でいてデータ解析上の話として講演したと思いますが、マスコミが言葉を選ばずに伝えると大きな誤解を招きかねないことになります。

さて、成育医療センター研究所免疫アレルギー研究部のホームページに
http://www.nch.go.jp/imal/default.htm
「アレルギー疾患発症予防に関する12のQ and A」というページがあります。
内容は専門的ですが、専門家に認められた論文のデータに基づいた客観的な内容です。
谷口氏の講演のマスコミ報道よりは、ぜひこちらを読まれることを勧めます。
谷口氏の報道は、ひところ流行の抗菌グッズ信仰への警鐘ととらえたほうがよいかもしれません。

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2007年6月28日 (木)

アレルギー検査

 6月10日に横浜で開かれた日本アレルギー学会に行ってきました。食物アレルギーの教育講演で、乳児の食物アレルギーを疑ったらアレルギー検査は早めに行い、早めに対策をとることが重要という話がありました。母乳栄養の乳児で顔や体の湿疹がみられる場合、母親が摂取した鶏卵や乳製品が母乳を通して乳児に入り、アレルギー反応の一つとして湿疹を引き起こすという考えがあります。今までは血液検査によるアレルギー検査は生後6ヶ月を過ぎてから行うのが一般的でした。しかし症状が強い子には生後4ヶ月や5ヶ月でもアレルギー検査で陽性反応がでます。湿疹があったらステロイド剤で一時的に治して生後6ヶ月までアレルギー検査を待つのではなく早めの対応を勧める話でした。私も症状の強い子には早めに検査をしていました。

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