2018年8月28日 (火)

8月 雑感

 7月末に福岡市で日本小児臨床アレルギー学会があり参加してきました。食物アレルギーの教育セミナーで海老澤元宏先生が米国の話をされ、その中で米国では食物アレルギーの児はエピペンを持っていないと小学校に入学できないできないとありました。米国ではワクチンを一通り全部打っていないと、小学校へ入れてくれないと同じです。日本ではそのようなことはありません。エピペンを持っていないと入学できないという以上、米国では学校でアナフィラキシーショックがあったら教職員が患児にエピペンを打ちます。そのために学校と保護者の間でエピペンを打ったことで問題がおきても罪には問いませんという契約書を交わします。そういう契約も日本では無理ですね。

 同じ学会で会場から、エピペンもAEDのように街のあちこちに設置して、アナフィラキシーショックの患者がいたらだれでも打てる環境整備はできないのかと質問がありました。しかしそれは無理だと海老澤先生は答えていました。理由は医師法が医師、看護師以外の注射という行為を禁じているからです。それでは救急救命士が現場でまったく打てなくなるのですが、そこだけは素人にはわかりにくい法律の解釈を微妙に変えて人命救助のために救急救命士には業務拡大として認めたようです。その点は法務省、厚労省、文科省で見解を一致させています。

 NHKラジオ第一放送のNらじ8月13日の放送を聞いて。最近は毎年のように大きな災害が起きる日本ですが、その度にボランティアの方々が献身的に復旧に力を尽くされています。そのボランティア活動で注意しないといけないのがレジオネラ感染症です。レジオネラ菌といえば、設備や衛生管理面で不備があった温泉施設で集団感染のニュースをよくききます。レジオネラ菌は、土壌や河川、湖沼など自然界に生息します。この水中の菌が、空間中に霧状(エアロゾル)に飛散して、それを吸い込むと肺炎になります。土砂災害の復旧現場で土砂の中にいたレジオネラ菌が土砂が乾燥して土埃とともに飛散し、それを吸い込むと感染することがあります。現場ではマスクが必須です。しかしレジオネラ菌の感染はもっと日常的な場面でもおこります。一つは夏に街中に見かける納涼のためのミストです。そして自宅での子どものプールの水浴びです。両者とも水質管理が悪いとレジオネラ菌に感染することがあります。

 8月に日本小児科学会の講習会に参加してきました。薬物療法の講義の中で、海外の子どもの薬にはシロップ剤と錠剤しかなく、散剤(粉薬)がないという話がありました。子ども用の小さな錠剤をMini-tablets(ミニタブレット)といいます。海外では子どもはシロップよりミニタブレットを好むという研究もあるようです。直径が2mmのミニタブレットは乳児にも飲ませることがあるようです。そして海外では新生児でもミニタブレットが飲めるというデータが多く出ているそうです。新生児に錠剤などとんでもないという日本の常識は必ずしも正しいとは限らないようです。私の外来でも粉薬は嫌いで錠剤にしてくださいという幼児もよくいます。日本では錠剤はだいたい6歳以上の年齢でつくられていて、大きさが大きいものばかりです。幼児には錠剤はなかなか処方できません。しかしこれからはもっと低年齢用の錠剤が出てくるかもしれません。

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2018年4月29日 (日)

腸内細菌叢

 小児科は子どもの全般を診ます。だからその守備範囲は極めて広いものです。専門家の集まりである小児科学会に行くと3日間で約1400題にも上る様々な分野の研究発表があります。その中で最近のトピックスの一つが腸内細菌叢の研究です。
 4月20日から22日に福岡で開催された日本小児科学会学術集会でも、「腸内細菌叢の異常と小児疾患のかかわり」という演題で関西医科大学の金子一成先生が講演されていました。新生児の腸内細菌は出生時に産道やその周囲の母体の細菌がもとになります。以前は胎児は無菌とされていましたが、最近の研究では母体にいるときから腸内細菌がいるという報告があります。小児では、早産、帝王切開、人工乳、抗生剤、環境が腸内細菌叢の異常をきたすことが明らかになってきました。最近はプロバイオティクスやプレバイオティクス療法の有効性が言われていますが、多様性のない善玉菌を入れても効果はないという話でした。海外では糞便移植という治療法が開発されています。また帝王切開で生まれた児に、出生後に膣分泌物を塗る、疑似経腟分娩という方法も始まっています。抗生物質を内服すると、一発で腸内細菌叢が変化し、それまでの細菌は消えて、抗生物質に耐性のある菌がほぼ1種類になってしまうというショッキングなデータも発表されていました。
 全国の小児科開業医を中心にした学会誌にも、腸内細菌叢の特集が組まれていました。東京女子医大の大阪利文先生をはじめ7人の先生が「腸内細菌と小児の健康」について論文を書かれていました。
 妊娠が進むと母体の腸内細菌叢が変化して、新生児に有利なものになるという研究報告があります。満期経腟分娩の新生児の腸内細菌は、ビフィズス菌や大腸菌が主体な比較的単純な腸内細菌叢です。生後1か月でビフィズス菌が優勢になります。生後4か月から6か月になると、腸内の酸素濃度が低下してきてバクテロイデスやウェルシュ菌などが増えてきます。母乳栄養を止める頃から成人の腸内細菌叢へと変わり始めます。学童期には食習習慣とが腸内細菌叢の優勢な種類を決めていきます。
 腸内細菌叢が大きく変化する乳児期に腸内細菌叢の発達に影響を与えるのが、母親の常在菌、乳児の栄養の方法、帝王切開の有無、抗生剤の投与、低出生体重児などです。母乳栄養児はビフィズス菌と乳酸菌が多く、人工乳栄養児ではビフィズス菌の存在比が低いようです。帝王切開児では皮膚や口腔常在菌、出産時の環境由来の細菌が主になり、ビフィズス菌の定着が遅れるようです。抗生剤の投与は当然のことながら、新生児・乳幼児の腸内細菌叢の形成に影響を与えます。細菌の多様性が低くなり、腸内細菌叢の成熟が遅れます。低出生体重児でも細菌種の多様性が低く、腸内細菌叢の成熟が遅れます。
 腸内細菌叢の異常がアレルギー疾患や炎症性腸疾患に関与することについては、免疫学的な研究がかなり進んでいます。過敏性腸症候群や発達障害についても腸内細菌叢の異常が関与しているという研究が進んでいます。さらには癌と腸内細菌叢の研究も進んでいます。身近な話では、赤ちゃんの夜泣きにも腸内細菌叢の異常が関与しているという研究もあります。夜泣きの子の腸内細菌叢ではビフィズス菌や乳酸菌が少なく乳酸菌を与えたら夜泣きが改善したという研究もあります。このように、異常になった腸内細菌叢のバランスを整えるために、乳酸菌やビフィズス菌などの有益に働く微生物(これをプロバイオティクスと言います)を腸内に届ける治療の研究も進んでいます。
 また母乳栄養児によくみられる乳児の血便は、従来は大腸粘膜のリンパ濾胞過形成が原因といわれてきましたが、この病態の一部はブドウ球菌による腸炎が原因の可能性があると言われ始めました。このような児にプロバイオティクス療法をすると症状の改善がみられるという研究があります。
 ヒトの身体にいる細菌はヒトが生きていくうえでいかに重要な働きをしているか、Martin J. Blaser著 山本太郎訳「失われゆく、我々の内なる細菌」みすず書房 2015年 を読むと思い知らされます。人体にはヒトの細胞の3倍以上の100兆個の細菌がいます。この細菌はヒトと共生化した独自の群れであり、その構成は3歳くらいまでにほぼ決まり、個々人で異なります。しかし抗生剤の導入でこの構成は乱されていて、帝王切開も母親から細菌を受け継ぐ機会を奪っています。この結果生じる健康問題の深刻さにようやく警鐘がならされてきています。
 しかし細菌を新生児に受け渡す母親の腸内細菌叢も抗生剤の使用や生活環境の変化で昔のままではなくなってきています。人類が生来持っていた腸内細菌叢の組成はどのようなものだったのでしょうか。
 前書のあとがきに書かれていますが、人類の歴史上、腸内細菌叢の大きな変化は二度起こったと考えられています。一度目は人類が火を使い料理をするようになったとき、二度目は農耕が始まった時です。タンパク質は加熱することで栄養を摂取しやすくなり、農耕はタンパク質主体の食事から炭水化物を主食とする生活へと変えました。その結果、腸内細菌叢も変わりました。そして最近の50年間のライフスタイルの変化と抗生剤の使用が、三度目の変化をきたしています。ヒトの細菌叢が完全に変化し希少な細菌が消えてしまう前に、世界各地から糞便を集めて、液体窒素のなかで保存し、次世代に手渡すプロジェクトが始まっています。チベットやヒマラヤの高地に暮らす人、砂漠の乾燥地帯に暮らす人、いまだ狩猟採集を生業とする人などの糞便を集めます。抗生剤や消毒剤、近代的生活に暴露されいない人の糞便はさらに貴重です。
 長年ヒトと共生してきた細菌が失われていったとき何が起こるのでしょうか? 我々は真剣に考えなければいけません。
 NHK総合テレビで1月14日に放送された「シリーズ 人体 神秘の巨大ネットワーク 第4集 万病撃退!“腸”が免疫の鍵だった 」も腸内細菌叢を取り上げていました。全身の7割もの免疫細胞が腸に集結し、腸内細菌たちとメッセージをやりとりしている。ひとたび、腸での免疫のバランスが崩れ、免疫細胞が暴走を始めると、花粉や食べ物、自分の体の一部まで「敵」と誤って攻撃し、さまざまなアレルギーや免疫の病を引き起こしてしまうと言っていました。更には抗生物質の投与が腸内細菌叢を乱して肥満を誘発するとも言っていました。
 帝王切開児や生後早期に抗生剤を投与された児など、乳幼児期に腸内細菌叢の形成と発達に異常をきたすと、アレルギー、喘息、肥満などの発症リスクが高まるという研究報告は多くなっています。小児への抗生剤の投与は腸内細菌叢へ悪影響を及ぼすことを理解したうえで慎重な対応が求められます。抗生剤は細菌感染にしか効果がないわけです。小児科外来で診る病気で細菌感染症は約1割です。残りの9割は抗生剤が必要ありません。「とりあえず」や「念のため」の抗生剤の投与は慎まなくてはなりません。

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2018年1月31日 (水)

インフルエンザ

インフルエンザ
 インフルエンザは例年なら1月中旬から本格的な流行が始まりますが、今シーズンは昨年12月中旬から患者さんが増えだし、1月中旬からは近年にない大流行になりました。糸島地区では患者数のピークは1月15日の週でした。私のクリニックの経験では、今回の流行は2009年の新型インフルエンザより瞬間的には患者数が多いようです。
 なぜ今冬はこんなにも患者数が多くなったのでしょうか。メディアはA型とB型が同時に流行したためだと言っています。しかし私はそれだけではないように思います。これから先の話は正確な統計や検証をしたものではなく、あくまで私が毎日の診療から類推したものだということをお断りしておきます。。
 大流行の第一はワクチンの問題です。今年度は予防効果が期待されて採用したA型の香港型ウイルスの株が、ワクチンの製造過程でうまくできないことがワクチンをつくり始めた後からわかって、香港型ウイルス株の出来は3割しかないことが判明しました。そのため香港型のワクチン株を昨シーズンの株に戻して再生産しなおしたため、ワクチンの製造が大幅に遅れて、結果的にはワクチン不足を招きました。メディアではワクチン接種が始まる10月から11月は不足が大きいが12月以降は改善していったといっていました。しかし臨床の現場では、国民が接種を求める10月11月にワクチンが無かったため、接種率が20から30%は落ちたのではないかと思います。その結果例年に比べてインフルエンザに対する予防の準備ができていませんでした。
 また昨シーズンの香港型のワクチン株の予防効果は低いことが判明していて、1割しかないという報告もあります。今シーズンもA型は以前のソ連型で2009年の新型インフルエンザの型と香港型の2つの型の流行が例年通りあります。今年はワクチンを接種していてもA香港型の予防は期待薄です。
 第二は昨シーズンにB型インフルエンザの患者数が少なかったことです。公式のサーベイランスでは昨年はB型が明らかに少なかったとは言っていません。しかし私の印象では例年B型が流行する2月から3月のB型は昨年は明らかに少なかったように思います。そのためB型に対する免疫が弱くなっていたかもしれません。もしかしたらこれが例年になく早くからB型が流行し始めた理由かもしれません。
 第三には、昨年10月のブログでも書いたように、昨年、私はインフルエンザを夏も秋も診ていました。毎月少なくとも2人の患者さんを診ていました。平均すれば1週間に0.5人弱のインフルエンザの患者さんを診ました。1つの診療所で1週間の患者数が1人以上出たら流行が始まったと考えます。私の診療所でも見つかるくらいの頻度でインフルエンザが1年を通して広く世間に存在していたと思います。
 インフルエンザは例年は5月初めまでの大型連休まで診られます。まだまだ気を付けてください。
 
 さてインフルエンザの診療をしていて、患者さんとの話ででてくるQ&Aについて書いてみました。
Q:熱がないインフルエンザはありますか?
A:あります。しかし熱が無くても、身体がダルイ感じがあり周囲にインフルエンザの患者さんがいたらインフルエンザの可能性があります。
Q:熱が高いのに、喉が赤くないことがありますが。
A:インフルエンザの患者さんの喉は赤くないが多いようです。喉の赤みと熱は関係ありません。
Q:発病24時間たって検査をしたのに陽性反応がでないことがありますか。
A:あります。迅速検査には限界があります。陰性の場合、インフルエンザなのに陰性なのか、症状は似ているが異なる病気なのかの診断は慎重にしないといけません。思い込みの診断は要注意です。
Q:インフルエンザと似た症状の病気にはどのようなのがありますか。
A:乳幼児ならRSウイルス感染です。昨シーズンは小学生のヒトメタニューモウイルス感染でインフルエンザ様の症状の患者さんをよく診ました。高熱と咳が主ならマイコプラズマ感染症も疑います。高熱と倦怠感が主な場合は小学生なら溶連菌は鑑別しなくてはいけません。
Q:1シーズンにA型インフルエンザに2回なりますか。
A:ヒトで流行するA型には2つのグループがあるので1シーズンに2回なることもあります。
Q:A型とB型の同時感染がありますか。
A:あります。インフルエンザという同じ名前でも全く別の種類のウイルスです。
Q:インフルエンザと他の病気の同時感染がありますか。
A:あります。よく経験するのがインフルエンザと溶連菌の同時感染です。この2つの病気は治療薬が異なりますから、注意深い診断が必要です。
Q:タミフルを内服したり、リレンザやイナビルを吸引しても熱が下がらないことがありますか。
A:あります。適切に発病24時間以内に開始しても、特にB型では薬が効かないことがあります。
Q:もうすぐ新しいインフルエンザの薬がでるとききました。
A:塩野義製薬が「ゾフルーザ」という名前の新しいインフルエンザの薬を5月にも発売予定です。薬の作用が今までの抗インフルエンザ薬と異なり、1回の内服で終わります。小児にも適応があるようです。

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2017年12月30日 (土)

この1年を振り返って

 12月17日に横浜市で開催された、日本アレルギー学会主催の総合アレルギー講習会に出席しました。いろいろと講演を聞きましたが、その中で、島根大学医学部皮膚科学教室の千貫祐子先生の「マダニ咬傷と獣肉アレルギー」の話は興味深いものでした。ウシ、ブタ、ヒツジなどの四つ足の哺乳類の肉を食べた後にでるアレルギー症状の一部はマダニが原因だそうです。マダニに噛まれたら血を吸われますが、マダニは刺したときに唾液を注入します。唾液の成分の糖鎖に対してアレルギーが成立した場合、その人が肉を食べるとアレルギー反応を起こし、時にはアナフィラキシー症状を引き起こすことがあります。実は肉の中にはマダニの唾液成分の糖鎖と同じものが豊富にあるためです。この糖鎖は子持ちカレイの魚卵にもあります。子持ちカレイの魚卵を食べてアレルギー症状がでたらこの糖鎖のアレルギーかもしれません。この糖鎖のアレルギーの怖いところは、転移性大腸癌や頭頸部癌の治療薬である「セツマキシブ」にもこの糖鎖があることです。そのためセツマキシブを治療で点滴すると強いアレルギー症状が出現することがあります。実際に症例報告があり、中には死亡に至った例もあるようです。マダニに噛まれるのは野山に入った時が多いと思われますが、ペットのイヌやネコにダニがいることも多いわけです。イヌ・ネコとマダニと肉アレルギーの連鎖には要注意です。
 今年も終わりますが、この1年もまたもやワクチンに振り回されました。MRワクチンの不足は昨年から続いていましたが、日本脳炎ワクチンの不足は厳しいものでした。そして年末にはインフルエンザワクチンの不足が社会問題にもなりました。私のクリニックでも患者様にたいへんご迷惑をおかけしました。毎年、ワクチン不足のリスクに対してどんな対策をとるか頭を痛める日々が続いています。
 12月に入ると、手足口病が流行しました。手足口病は夏風邪の代名詞だったのに、なんと冬に流行しています。昔から教えられてきた病気の季節感がなくなってきているようです。先月も書きましたが、インフルエンザも1年中みられようにもなりましたから。
 ことしもいろいろなことがありましたが、来年が少しでもよい年であることを祈ります。
 みなさま良いお年をお迎えください。

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2017年10月30日 (月)

1年中みられるようになったインフルエンザ

 例年、インフルエンザは5月の大型連休を過ぎるとみられなくなります。しかし今年は違いました。6月も7月もそしてとうとう10月まで毎月インフルエンザの患者さんをみました。もちろん6月から10月までは患者数は多くはなく月に数人でした。しかしこのようなことは初めてです。
 何があったのでしょうか。理由はわかりませんが。一つ言えることはインフルエンザの発生条件には寒くなることや空気が乾燥することは必須ではないということでしょう。沖縄では以前から真夏にインフルエンザが毎年流行していますから。
 私は人の移動が重要かと思います。2009年の新型インフルエンザも発見からあっという間に全世界に広まりました。もしこれが飛行機の異動がない19世紀なら急速なパンデミックは起きなかったはずです。
 夏風邪の手仕口病やヘルパンギーナも真冬でもみます。以前は季節性の感染症もいまでは一年中みられます。病気の旬はなくなり、何時でも様々な病気の診断を考えて診療していく時代になったようです。

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2017年6月30日 (金)

アトピー性皮膚炎と汗

 6月に東京で日本アレルギー学会があり参加してきました。たくさんの研究発表や討論会がありましたが、その中で興味深かったのがアトピー性皮膚炎と汗のシンポジウムでした。
 汗は99%が水ですが残りの1%の中にいろいろな成分が含まれています。電解質、尿素、乳酸だけではなくプロテーアゼ阻害物質や複数の抗菌ペプチドが含まれます。尿素と乳酸は天然保湿因子になります。汗のシステインプロテアーゼ阻害作用はダニ抗原などを失活する効果があります。セリンプロテアーゼ阻害作用はアトピー性皮膚炎の角層バリアの改善に貢献すると考えられています。
 発汗には安静状態で汗が分泌される不感発汗と、温熱負荷で汗が分泌される温熱発汗があります。不感発汗は皮膚の水分保持に、温熱発汗は体温調節に重要な役割を果たしています。アトピー性皮膚炎の患者では発症早期の段階で著明な発汗低下があることがわかりました。
 アトピー性皮膚炎でみられる不感発汗の低下は、汗管、汗孔の閉鎖のため、汗が皮膚の表面に出ることができないためです。その結果、発汗低下となり皮膚の乾燥をもたらします。そしてうっ滞した汗が汗腺器官から漏れ出て組織に異常反応を引き起こします。真皮内に漏れ出た汗は皮膚の炎症・痒みをもたらします。アトピー性皮膚炎は汗うっ滞症候群という全く新しい考えがでてきました。
 それではステロイド外用剤や保湿剤は発汗にどのような影響を与えるのでしょうか。ステロイド剤やワセリンは不感発汗を誘導せず。もっともよく用いられる保湿剤であるヘパリン類似物質は用量依存的に不感発汗を誘導することが明らかになったそうです。しかも同じヘパリン類似物質の保湿剤でも、o/wのクリームタイプのものがw/oのソフトタイプより発汗を誘導するという話でした。
 アトピー性皮膚炎の患者にとっては汗は増悪因子と考えられてきましたが、実は皮膚の改善に役立つ働きもしています。

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2017年3月30日 (木)

インフルエンザの迅速検査

 千葉市の休日夜間診療所いわゆる急患センターでは、2010年以降インフルエンザの流行期には簡易迅速検査を原則行わないそうです。外来患者が非常に多くなり、待ち時間が長くなるからでしょうか、診療の効率化や迅速検査の限界等を考慮しての判断のようです。ただし重症例など医師の判断で例外もあることや、迅速検査を実施しなくても「医師の診察でインフルエンザと診断された場合には、抗ウイルス薬の処方が行われる」との但し書きも付けられているます。
 この背景には、2009年のインフルエンザ流行時に、厚生労働省が「無症状者のインフルエンザ陰性を証明するために医療機関を受診させ、簡易迅速検査などを行う意義はない」と通知を出し、また、「臨床所見や地域の流行状況などから医師が総合的に判断し、薬物療法が必要と判断した際には迅速検査やPCR検査は必須ではなく、診療報酬や調剤報酬上も抗ウイルス薬投与に迅速検査の実施は必須ではない」との見解も示したことあります。(2009年10月16日事務連絡「新型インフルエンザによる外来患者の急速な増加に対する医療体制の確保について」)。
 この千葉市の判断に対して、医師のサイトなどでは賛成意見が多いようです。家族や集団内でインフルエンザの患者が複数いれば、症状からインフルエンザが疑わしければ検査はせずに医師の判断で診断しても良いと考える医師。症状からインフルエンザが強く疑われるのに検査をすれば医療費の無駄と考える医師。そのような考えの医師たちです。
 そもそもインフルエンザはタミフルなどの抗インフルエンザ薬を使わなくても自然に治ると考える医師もいます。欧米ではインフルエンザを疑ってクリニックを受診したら、「インフルエンザくらいでなんで来るの」と言う医師が多いでしょう。
 私は30年以上小児科医をやっていますが、未だにどんなに丁寧に診察しても直観だけでインフルエンザと診断することには不安があります。それは今まで、典型的なインフルエンザの症状でも異なる病気だったり、家族全員がインフルエンザでも一人異なる病気だったり、まるで非典型的な症状なのにインフルエンザだった患者さんを数多くみてきたからだと思います。
 検査のやりすぎな戒めなければいけませんが、医師の主観的判断に頼りすぎる診断も戒めなければならないと思います。

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2017年2月27日 (月)

2月をふり返って

 2月はインフルエンザが流行し、特に福岡県の流行状況は、病院・診療所あたりの患者数が一時は日本一となりました。幸い私のクリニックに近い小学校は学級閉鎖になるほどではなかったので、大流行という感じまではありませんでした。
 現在、糸島地区ではインフルエンザはA型が2種類いますので、今シーズンにA型に二度罹った子どもも珍しくはありません。A型に二回とB型になった子どももいました。3回インフルエンザになったわけです。インフルエンザは型が異なれば違う病気ですから、一冬に何回もなる可能性があります。インフルエンザは5月の連休までは注意しなければいけません。
 例年あることですが、親兄弟がみんなインフルエンザになっても一人違う病気で熱をだすことも珍しくはありません。ひとりひとり確認しないと診断を誤ることがあります。また両親に風邪症状がなく保育園にも通っていない一人っ子の乳児が突然熱を出したら、普通は突発性発疹症を第一に考えますが、この時期はインフルエンザである例を診ます。どこで感染したのかはわかりません。
 また小学生を中心に溶連菌感染が流行しました。溶連菌は喉の痛みが強激しい扁桃炎ですが、小学生ではまるでインフルエンザのような高熱と倦怠感を伴うことがあります。インフルエンザの検査をして、陰性ならば疑う病気の一つです。ただし2月は溶連菌とインフルエンザを同時に感染した子どもを何人も診ました。抗生物質とタミフルを一緒に内服することになりました。
 また高熱と咳がひどい、ヒトメタニューモウイルスも多くみられ、検査をしっかりしないと診断が難しかったと思いました。小学生の患者さんも数人診ましたが、症状はインフルエンザなみに辛そうでした。さらにヒトメタニューモウイルスとRSウイルスの同時感染した子どももいました。
 例年、春先からは胃腸炎(嘔吐下痢症)のなかで最も重症なロタウイルス胃腸炎が診られます。今年も3日間点滴が必要になったロタウイルス胃腸炎を何人か診ましたが、年を追うごとに症状が重いロタウイルス胃腸炎は少なくなってきています。ワクチンの有効性は明らかなようです。

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2017年1月29日 (日)

なぜ卵アレルギーになるの?

 卵を食べると顔や体が赤くなっり、蕁麻疹が出たりするのは卵のアレルギーです。これは消化の力が弱い赤ちゃんの時に卵の成分を食べてしまって、アレルギー反応の準備ができでしまい、次に食べたときに蕁麻疹が出るという訳ではありません。最近の学説は、初めに目に見えないくらい小さな卵のたんぱく質が、湿疹で荒れた赤ちゃんの皮膚の中に入り込み、そこで体の免疫細胞が反応して、アレルギーの準備ができます。次に卵を食べたときに蕁麻疹がでると言われています。
 でもどうして皮膚に卵の成分が入り込むのでしょうか。お母さんが卵を食べた後に母乳を与えたりして、その時赤ちゃんの口の周りが荒れていたらそこから入るのでしょうか。それならミルクの赤ちゃんが卵アレルギーになるのは説明できません。
 実はキッチンで卵料理を作ったら、部屋中に目に見えないくらいの小さな卵のたんぱく質がばらまかれます。それが赤ちゃんの皮膚の荒れた部分に入り込んでアレルギー反応のもとになる訳です。
 先月、横浜で日本アレルギー学会の主催する、総合アレルギー講習会に参加してきましたが、そこで専門家から、家の中のハウスダストなどを調べると、実は卵のたんぱく質がかなり多く見つかるという話がありました。場所によってはダニの成分より多く見つかることもあるそうです。
 家の中は卵のたんぱく質がたくさんあり、赤ちゃんはアレルギーの危険性にさらされているようです。卵のタンパク質は卵料理を一切しない限り家の中からなくすことはできません。そのため卵アレルギーをはじめ食物アレルギーの予防にはスキンケアが重要になります。食物アレルギーは肌荒れからです。

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2015年11月29日 (日)

豆乳アレルギーの検査

 豆乳を飲むと蕁麻疹などのアレルギー症状が出る人がいます。これは豆乳アレルギーですが、豆乳は大豆からつくるからといって、「大豆」のアレルギー検査をしても陰性のことがほとんどです。それは大豆を作っている数多くのたんぱく質のなかで、豆乳アレルギーの原因となるたんぱく質と、一般の大豆アレルギー検査で調べるたんぱく質が異なるからです。ところで来年2月から豆乳アレルギーのたんぱく質の検査が、一般のクリニックでもできるようになります。
 通常の大豆アレルギーは、大豆製品の摂取で発病します。乳幼児の多く、蕁麻疹などの皮膚症状や、喘息などの呼吸器症状、嘔吐や下痢などの消化器症状が主です。
 豆乳アレルギーは成人に多く、花粉症と関連しています。ハンノキやシラカンバの花粉症との免疫の交叉反応で発病します。豆乳アレルギーを引き起こすたんぱく質が、ハンノキやシラカンバの花粉症を引き起こすたんぱく質と類似しているためです。症状としては口腔症状が多いようです。
 鶏卵や乳などの食物を作るたんぱく質は数多くあります。卵白のアレルギーの検査項目の「卵白」だけがアレルギーを引き起こすわけではありません。卵白アレルギーでは「オボムコイド」も一緒に調べます。オボムコイドは卵白のたんぱく質の一つで、加熱されても変性しにくいたんぱく質です。そのためオボムコイド陽性の卵白アレルギーでは固ゆで卵の摂食も要注意となります。乳アレルギーでは「ミルク」だけではなく、「カゼイン」「βラクトグロブリン」なども併せて調べます。小麦アレルギーなら「小麦」だけではなく、「グルテン」「ω5グリアジン」も調べます。ピーナッツアレルギーでは、「ピーナッツ」だけではなく「Ara h 2」も調べます。それぞれの項目でアレルギーの症状が異なることがあります。今回、大豆アレルギーでも「大豆」だけではなく、豆乳アレルギーに関連が強い、「Gly m 4」の検査ができるようになりました。

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