2008年5月23日 (金)

手足口病

 夏になると手足口病が多く診られます。手のひら、足の裏、口の中に発疹と水疱ができることが特徴で、発熱を伴うこともあります。原因はウイルスですから抗生物質はききません。休んでいれば数日で治る風邪です。
 最近、この手足口病が中国で流行して死亡例もでています。中国では昨年は手足口病に8万人が罹り17人が死亡しました。今年は既に26人が死亡しています。中国でこのように手足口病が流行するのは、手洗いなどの基本的な衛生意識の低くさが一因と考えられています。中国政府は、手足口病を法定伝染病に指定して唯一の予防対策である衛生意識の向上を図っています。これまで中国についての報道はチベット問題から聖火リレー妨害、四川大地震に占められて、手足口病の報道はありません。しかしこれは幸いなことかもしれません。不安を煽る報道はないほうがありがたいです。
 手足口病の原因となるウイルスは一つではありません。主な病因ウイルスは、エンテロウイルスであるコクサッキ-A16、あるいはエンテロウイルス71 ですが、その他のエンテロウイルスの仲間も手足口病という症状をおこします。そのなかで、エンテロウイルス71というウイルスがまれに髄膜炎、脳炎をおこすことがあります。日本でも、約10年前に手足口病の経過中に死亡あるいは重篤な神経症状を合併した症例が複数の医療機関で経験されました。
 手足口病は基本的には軽症の病気です。重症合併症はきわめて稀なことであり、手足口病になったすべての患者さんに厳重な警戒を呼びかける必要はありません。しかし、初期の症状の変化には注意すべきで、とくに、元気がなく、頭痛・嘔吐、高熱を伴う、などが見られた場合は慎重に対処する必要があります。
 また手足口病は登校・登園禁止の病気ではありません。この件については、1993年に小児科学会が見解を発表しています。手足口病のウイルスは、喉からは1から2週間、便からは3から5週間排泄されます。発症後のウイルス排泄期間が長く、実質的に登校停止で感染を予防することは困難です。そのため発疹だけのこどもを登園禁止を強いる必要はありません。いまだに手足の発疹が出ている間は登園禁止にしている幼稚園・保育園がありますが考え直していただきたいと思います。ましてや登園許可証を要求するなど非現実的です。

手足口病についての詳しい情報は、国立感染症研究所 感染症情報センターのサイトをご覧ください。
手足口病とは?
http://idsc.nih.go.jp/disease/hfmd/about.html
東アジア地域で分離されるエンテロウイルス71型の分子疫学
http://idsc.nih.go.jp/iasr/25/295/dj2952.html

手足口病」の登校(園)停止に関する見解 (日本小児科学会雑誌 97:1875-1876,1993)
手足口病はエンテロウイルスの感染であり、コクサッキーウイルスA16型、エンテロウイルス71型による報告がほとんどである。コクサッキーウイルスA4、5、6、10型の報告もある。口腔内の粘膜疹(アフタ様)と手のひら、足の裏、膝、臀部の米粒大の水疱が特徴である。特記すぺきは中枢神経系合併症で、髄膜炎が主であるが、きわめてまれに弛緩性麻痺をおこす。ウイルスは口腔内、便中に排泄され、飛沫感染、経口感染をおこす。不顕性感染が多い。潜伏期間は3-6日でウイルスの排泄期間は長く、咽頭からl一2週間、便から3-5週間排泄される。本症の場合は、発症後のウイルス排泄期間が長く、実質的に登校停止で感染を予防することは困難である。また全体的にみて不顕性感染も多く症状も軽微のため、本症をもって他のエンテロウイルスと分けた特別の扱いは不要である。したがって本症の発疹期にある患児でも、他への感染のみを理由にして登校(園)を停止する積極的意味はないと考える。ただし、本症には合併も見られることがあり、個々の症例の最終判断は主治医が決めることになる。以上の考えに基づいて地域の学校医(または医師会)で見解を統一しておくことが望ましい。

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2008年1月28日 (月)

C型インフルエンザ

 インフルンザはA型の香港型とソ連型それにB型が毎年冬に流行します。ところでインフルエンザにはC型があります。今までC型インフルンザは罹っても軽症と言われてきました。しかし最近の研究では「発熱(38.5℃以上、2日間以上)、咳、鼻汁を主訴としていた。A型インフルエンザと症状が類似し、鑑別が難しい」ことがわかってきました。C型インフルエンザの診断は患者さんからウイルスを採取して分析するしかありません。A型、B型のような迅速診断キットはありません。一般外来での確定診断は難しいのが現状です。インフルエンザの流行する時期に、インフルエンザのように高熱と倦怠感があるのに、迅速検査を行っても陰性反応しかでない症例があります。もしかしたらC型インフルエンザを診ているのかもしれません。

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2008年1月 7日 (月)

あけましておめでとうございます

 この冬は昨年ほどの暖冬ではありませんが、昼間は寒さも和らいでいるようです。まだ冬休みで病気の子どもも少ないようです。

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2007年12月28日 (金)

この1年を振り返って

 暖冬のため2007年は静かに年があけました。ところが3月になるとインフルエンザが爆発的に流行し一冬分のインフルエンザを一月で診ることになりました。そのさなかに厚労省が突然、タミフルの10代での使用を事実上禁止する通達をだしました。科学的裏付けや統計的データもないままに、厚労省がマスコミ報道に押し切られたかたちの通達に思えました。現場は患者さんへの説明に混乱しました。この年末に厚労省の調査会が、全国で17歳以下の患者約約1万人の調査で、タミフルを服用しない患者群が、服用した患者群より約2倍の頻度で異常行動が起こるという統計調査の暫定的結果を発表しました。飛び降りなど生命にかかわる異常行動でも発生率に大きな差はありませんでしたが、まだ解析の余地があるということで因果関係の判定は先送りとなりました。この発表を報道したマスコミはわずかでした。
 春は首都圏の大学生を中心にはしかが流行しました。今の時代に先進国ではしかが流行するなど世界の常識では考えられないことです。カナダへ修学旅行に行った高校生がはしかを発病したため隔離され、同行の高校生にはしかワクチンが強制的に接種されてしまいました。カナダの保健当局ははしかの発生にバイオテロ並みの危機感を覚えたようです。日本国内ではパニック状態になり、はしかワクチンが不足し、定期接種しなければならない幼児にできなくなりました。ここ数年、春には、関東ではしかの発生が続いているので来春も同じようなことになるでしょう。しかも来春から中高生にもはしかワクチンの定期接種が始まります。またワクチン不足がおこると心配されます。
 秋には日本脳炎ワクチンが日本からなくなってしまいました。製薬会社は新型の日本脳炎ワクチンを製造するために旧型ワクチンの生産ラインを壊していました。ところが新型ワクチンの認可が下りなくなったため、旧型の在庫が底をつき、新型も供給できなくなってしまいました。新型ワクチン認可がでなかったのは、治験の結果、接種した部位の腫れが、旧型より強かったためでした。治験はやり直しとなりました。ワクチンの接種が受けれずに免疫をもたない子どもたちが数年、数十年先には、今春のはしかの大学生のように、日本脳炎の患者になってしまう不安が残ります。
 あまり知られていませんが、実は二種混合ワクチンも一時供給不足になりました。
 1月に、日本の小児科医が切実に望んでいたインフルエンザ桿菌タイプb型(Hib)ワクチンの認可がでました。世界に遅れること10年、ようやくこれで髄膜炎、口頭蓋炎などの生命に係る病気からこども達を救えると喜んだのもつかの間でした。Hibワクチンはフランスの製薬大手サノフィ・アベンティスから輸入するのですが、ワクチンに微量の沈殿物があるという理由で輸入がストップされています。サノフィは問題ないとしていますし、実際世界で使われているワクチンですが、厚労省はダメだといっているようです。サノフィも日本のためだけに製造行程を変えるつもりはないようです。そのため日本では当分の間使えそうもありません。その間にも年間数十人のこどもたちの命がHibにより奪われ、その何倍ものこどもたちがHibの後遺症に苦しむことになってしまうのに!
 1998年、世界保健機関(WHO)がHibワクチンの乳児への定期接種を推奨する声明を出したことから、Hibワクチンは現在では世界100カ国以上で使用されるようになり、世界的に見ればHib感染症はまれな疾患となっています。
 こどもの重症細菌感染症のほとんどはHibまたは肺炎球菌が原因です。世界のほとんどの国はこの二つのワクチンを接種して劇的な効果をあげています。日本だけが接種できずに毎年多くのこどもたちがこれらの菌により亡くなったり後遺症に苦しんだりしています。今年、私は肺炎球菌ワクチンの治験に係ることができました。肺炎球菌ワクチンの早期の認可に少しでも貢献できたかと思います。
 今年はタミフルとワクチンに振り回された1年でした。そして現場では患者さんや保護者への説明に多くの時間をさきました。日本の薬事行政は迅速に問題対応のできるシステム変わってほしいものです。来年には問題が少しでも解決することを切に願います。
 今日は2007年最後の「本日の独り言」です。みなさん良い年をお迎えください。

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2007年9月20日 (木)

こどもの片頭痛

 激しい頭痛で悩まされる片頭痛はこどもにもあります。日本頭痛学会の「慢性頭痛の診療ガイドライン」にも「小児の頭痛」の項目があり、そのなかに小児の片頭痛の記載があります。最近の論文からこどもの片頭痛の有病率は約7%、クリニックでは小児の頭痛患者のうち約50%は片頭痛であると書いてあります。ムカムカや嘔吐をともなう、ズキンズキンとする拍動性の頭痛で、さらには頭痛で日常の動作ができない、こような頭痛が5回以上あればこどもの片頭痛と診断します。
 ところでこどもには、突然の嘔吐を繰り返す、周期性嘔吐症という病気がありますが、これは将来、片頭痛へ移行するようです。また、お腹に特別に病気がないのに、突発的に強い腹痛をくりかえすのは、腹痛片頭痛として分類しています。
 9月18日に前原市の大塚神経内科の先生の頭痛の講演を聴きました。先生も4%位の頻度でこどもにも片頭痛があるといわれていました。こどもの片頭痛は両側性の締め付けるような痛みが多く、ほとんどの例で両親のどちらかに片頭痛があります。
 朝起こることが多く、不登校の半数以上に片頭痛があるといわれます。頭痛の訴えのこどもに、「頭は大丈夫」といってしまってはいけません。その子の訴えをよく聴き「片頭痛でないか」考えてみることが大事です。
 最近の研究で、片頭痛は脳血管の炎症の結果だとわかってきました。頭痛にたいして鎮痛剤で対処しては、痛みをわずかに抑えるだけで、血管の炎症は抑えることはできません。何回も血管の炎症が繰り返されると、血管がもろくなってきます。片頭痛の患者は脳血管障害(脳梗塞など)のリスクが高いという研究報告が次々と発表されています。特に前兆を伴う片頭痛はリスクが高くなります。片頭痛の治療には炎症物質を抑える、トリプタン製剤を使わなければいけません。このことは今後広く知ってもらう必要があります。しかしこどもにはトリプタン製剤の使用は認められていません。今後の問題です。

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2007年8月23日 (木)

「けが」をしたら

 「けが」をしたら、まず消毒、そして傷口をガーゼでおさえる。そしてこの処置を「付け替え」といって毎日繰りかえす。それが今までの「けが」への対処法でした。
 このやり方は間違いだとする考えがあります。そもそも「けが」をして皮膚が傷ついたら、皮膚自体に再生能力があるわけで、そこに消毒をすると再生しようとしている皮膚の組織を傷めるというものです。さらにガーゼで傷口をおさえるとガーゼが傷口の水分や皮膚の再生に必要な成分を吸収して傷口を乾燥させます。そのことがさらに皮膚の再生を阻害します。さらに「付け替え」をすると、ガーゼの網目が傷に食い込み,ガーゼを剥がす時に出血します。そのため治りかけた傷をさらに悪化させてしまいます。
 新しい「けが」の治療は、最初に傷口を水道水でしっかり洗います。日本の水道水には細菌はいませんから、医療用の無菌の生理食塩水を使う必要はありません。傷口に小さな砂が入っていたら、歯ブラシを使ってしっかり洗い落とします。砂はしっかり落としておかないと後で「しみ」のようになります。そして傷口にうるおいを与えて皮膚自体の再生能力を高めるために湿潤環境を提供して創治癒を促進する創傷被覆材をつかいます。
 この新しい考え方を裏付けるように、街のドラッグストアでも、けがのうるおい治療用にカットバンを作っているジョンソンアンドジョンソン社が「キズパワーパッド」を売り出しています。
 この「新しい創傷治療」「さらば消毒とガーゼ」を提唱しているのは夏井睦氏らです。詳しいことは夏井氏のホームページをご覧ください。http://www.wound-treatment.jp/

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2007年5月24日 (木)

はしか(麻疹)

 最近は麻疹をみなくなりました。若い小児科医は見たことがないでしょう。麻疹は過去の病気になりかけていたのに、この春から関東で流行しています。(実は昨年も関東では麻疹の発生はありましたが流行にはなりませんでした。)
 麻疹はどんな病気でしょうか。麻疹は感染力の強い病気です。患者さんの咳などで出た麻疹ウイルスは部屋の中に約2時間くらいは漂っています。だから患者さんがいなくなっても感染することがあります。これを空気感染といいますが、空気感染する病気は麻疹、水痘、結核などわずかです。
 麻疹はまず高い熱がでます。熱が出たばかりの時期の診断は困難です。口の中の粘膜に小さな白いブツブツ(コプリック斑)があれば麻疹を疑います。約3日たつと全身に赤いブツブツがでます。高い熱は約1週間続き、咳がひどくなり、からだが衰弱します。まれに息苦しくなる肺炎、意識がなくなる脳炎をおこして命を落とすことがあります。麻疹はウイルスの病気ですから抗生物質は効果がありません。麻疹ウイルスを殺す薬はありません。直接的な治療法がないのです。ただし前もって予防接種をしていれば95%の確率で麻疹にならずに済みます。麻疹は昔は「命定め」といわれ、こどもにとってはきつい病気でした。 麻疹にならないための唯一の方法は予防接種です。WHOは麻疹を地球上から撲滅しようと各国に働きかけています。欧米では90年頃から麻疹の予防接種を2回するようになり、その結果麻疹の発生は皆無になりました。2回接種が始まったきっかけは今回の日本と同じように80年代の終わりに米国の大学生の間で麻疹が流行したためでした。
 ワクチンの接種率が95%以上になると流行はなくなります。最近の幼児の接種率は95%を超えていますが、今回患者数が多かった高校大学生の年齢は90%を切っているいるようです。これはこの年齢がMMR(麻しん・風しん・おたふくかぜ混合)ワクチンのトラブルの時代に当たるためです。当時MMRワクチン接種後に髄膜炎の副反応が多く出たため、MMRワクチンが中止になり、麻しん単独のワクチン接種も控えた保護者がいらしたからです。
 ワクチンの接種率が落ちたため病気が流行したことは過去にもありました。百日咳ワクチンが70年代に副作用が問題になり75年に一時中止になりました。その直後から百日咳の患者数が急増し百日咳脳症で死亡する乳児も急増しました。81年に新三種混合ワクチンが再開された後から患者数もようやく減少しました。
 さてこれで考えさせられるのが日本脳炎ワクチン差し控えの件です。一昨年から日本脳炎ワクチンの差し控えが続いています。毎年100万人近い日本脳炎ワクチンの未接種者がでています。昨年は未接種の3歳児の日本脳炎が報告されました。新たな患者発生を防ぐためにも早急な対応が必要です。

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2007年4月15日 (日)

喘息と「鼻かぜウイルス」

 春先には喘息の患者さんが増えます。でもなぜ春先には喘息発作が多くなるのでしょうか。今までは季節の変わり目で気温差が大きいからと言われたりしていました。しかし最近の研究ではこの時期に多い「鼻かぜウイルス」が原因のひとつだということがわかってきました。熱はなくただ鼻汁だけを引き起こす「鼻かぜウイルス」は喘息のないヒトには鼻汁をださせるだけです。しかし喘息のあるヒト、いわゆる気道過敏性のあるヒトには、このウイルスが喘息発作を引き起こす誘因になると考えられ始めました。喘息は秋にも発作が多くなります。今までは喘息の原因のひとつであるダニが秋には死んで死骸が多くなるからだといわれてきました。しかしこれも秋の「鼻かぜウイルス」が誘因になると考えられ始めました。気道過敏性と、アレルギーの原因となるダニの糞や死骸の増加、それに「鼻かぜウイルスが」喘息発作の誘因というのが最近の研究結果です。そしてもうひとつ春先なら黄砂も忘れてはいけません。

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2007年4月 6日 (金)

インフルエンザウイルス

 ようやく収束に向かってきたインフルエンザですが、今年は流行の始まりが遅かったため、A香港型、Aソ連型、B型の3型がほぼ同時に流行し、2回3回とインフルエンザに罹った子どもたちもいました。インフルエンザで多くのヒトが辛い思いをしているなかで、タミフルと異常行動の偏ったマスコミ報道や厚生労働省の朝令暮改の声明は、子どもや保護者を不安にさせ医療現場を混乱させただけでした。
 私は年に数回、急患センターに出ますが、昨年まではインフルエンザは早く検査をしてタミフルを処方してほしいという保護者の方が多かったのですが、今年は「タミフルを飲みますかそれとも飲まずに経過をみますか」と聞いただけで「テレビであれだけ問題になっているのにまだタミフルを飲ませるつもりか」と憤慨される保護者もいました。幸い私のクリニックでは保護者のみなさんは冷静に話を聞いてくれました。そして不安をあおるだけのテレビ報道に疑問を持たれているかたも多かったようです。
 ヒトに感染するインフルエンザウイルスには特徴があって、気管支や肺などの気道の細胞にしか感染しません。なぜならインフルエンザウイルスが増殖するためにはヒトの気道の細胞がつくるたんぱく質分解酵素が不可欠だからです。しかし気道の細胞にしか感染しないのにどうして異常行動、熱性けいれん、脳炎などの神経症状がでるのでしょうか。インフルエンザ脳症では脳の腫れ、いわゆる脳浮腫が著明です。最近の研究でこの脳浮腫が脂肪代謝の異常と関係があり、インフルエンザによる高熱で代謝を司るある酵素の働きが極端に低下して、その結果として脳浮腫になるということが明らかになりました。そしてその熱で働きが低下する酵素の遺伝子変異も明らかになりました。この遺伝子変異をもつ子どもは脳症になりやすいわけです。最初からこの遺伝子変異を調べてわかっていれば予防もできるわけです。もちろんインフルエンザ脳症がこの酵素の異常だけで起こるわけではなく、他の代謝異常も関係していると考えられています。
 このことからもインフルエンザの症状悪化には個人の遺伝子レベルでの違いが関係していることが予想できます。ゆえに一律にインフルエンザは休んでいれば治るとは言ってはいけません。
 最後に、タミフルを飲んだ後の異常行動ばかりを調べても、タミフルとの因果関係は解明できないでしょう。もともとインフルエンザ自体が異常行動を引き起こすからです。タミフルを飲まないヒトの異常行動を併せて調べれば少しは因果関係を論じることができるでしょう。しかしそれは症状からみた推論の域を出ません。やはり最後は薬理学、生化学、免疫学そして遺伝子レベルでの基礎研究の結果を待つしかないと思います。それには異常行動をおこした患者さん自体の遺伝子のレベルまでの研究が必要になります。患者さんの研究に対する協力があって初めて真実は明らかになります。

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2007年2月14日 (水)

タミフルがインフルエンザを広める?

 インフルエンザが急に増えてきました。タミフルを内服すると2日以内に熱が下がります。しかしタミフルはインフルエンザウイルスを直接殺す薬ではありません。ウイルスが増えるのを抑えているだけです。熱が下がってもウイルスは体の中にたくさんいます。解熱後すぐに登園すると他の人にうつしてしまいます。熱が下がっても3日は家で安静にしてください。タミフルは個人の症状を軽くしてくれますが、解熱後治ったと勘違いしてすぐに登園、登校、出勤する人がいる限りインフルエンザはどんどん広まります。(2006年1月15日 の再掲)
  これについては、2006年2月1日に放送されたNHKの「ためしてガッテン」でも指摘されています。
http://www3.nhk.or.jp/gatten/archive/2006q1/20060201.html

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2007年2月 5日 (月)

インフルエンザと異常言動・行動

 インフルエンザが流行し始めました。昨年はタミフルを内服した後に異常行動がみられたという報告があり、タミフルの副作用ではないかと騒がれましたが、その後、日本と米国から因果関係は証明できないという報告がでました。
 今年1月の小児科学会雑誌に市立牧方市民病院小児科の原啓太先生らの「インフルエンザの経過中に異常言動・行動を呈した症例の検討」という論文が掲載されています。

http://www.jpeds.or.jp/journal/111-01.html#111010038

それによるとインフルエンザの患者の1.7%に熱せん妄に一致する異常言動・行動がみられたそうです。
異常言動・行動の内容は、
①異常な発言・奇声:虫がいないのに「虫がいる」と言ったりする。いわゆる幻視などです。
②異常な行動:何かを払いのける仕草などです。
③異常な情動:強い怯え、意味なく笑うなどです。
 これらの症状は、発熱後24時間以内に出現することが多く、高熱のときにおこりやすいので異常行動の前後に熱性けいれんが多くみられるそうです。また夜間睡眠中におこりやすいようです。
 異常言動・行動の持続時間は30分以内がほとんどで、その後は意識もはっきりしているのでインフルエンザ脳症とは違います。異常行動は夜間睡眠時に起こりやすいので、子どもを一人で寝かさないようにすることも重要と言っています。。
 この論文でも指摘されていますが、これらの異常言動・行動はタミフルの内服とは直接の関係はありません。せん妄をきたす薬物としては薬学的には抗コリン作用を有する薬物(抗うつ薬、抗精神薬)が有名です。身近な薬では市販の風邪薬の中にも含まれる抗ヒスタミン薬、いわゆる鼻水の薬も抗コリン作用があります。私は異常言動・行動を引き起こす可能性は、タミフルよりは抗ヒスタミン薬のほうがはるかに高いと考えています。

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2007年1月16日 (火)

胃腸炎

 冬は嘔吐下痢症が多い季節です。嘔吐下痢症はウイルス性胃腸炎です。ウイルスが原因ですから対症療法で経過をみます。ところで腹痛、下痢が主な症状である胃腸炎には細菌が原因のこともあります。細菌性胃腸炎は夏に多い病気です。焼肉、焼き鳥を食べた後に腹痛の強い下痢が始まったら、冬でも細菌性胃腸炎を疑います。細菌性の場合は抗生物質を内服したほうが早くよくなります。下痢の原因がウイルス性か細菌性かの見極めには十分な問診が必要です。

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2007年1月 4日 (木)

あけましておめでとうございます

今日から新年の診療を始めました。この冬は例年にない暖冬で、またインフルエンザの流行もなく、病気の子どもも少ないようです。クリニックには静かな年明けでした。

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2006年12月31日 (日)

テオドールの話題

 テオフィリン(テオドール等)は喘息の治療薬として20年以上の歴史があり、日本では80%以上の喘息患者に使用されています。最近は喘息予防の新しい作用機序も見つかり再評価されている薬です。しかし薬の血中濃度が高くなると気分が悪くなったり、頭痛がしたり、ひどい時はけいれんを引き起こすことが以前から指摘されていました。これを”テオフィリン関連けいれん”ということがあります。そのため特に小児に対して処方するときには細心の注意をして薬の量を決めています。最近、テオフィリンの使用中に神経学的な合併症の認められる症例が特に非専門施設を中心に報告されました。テオフィリンはけいれんを引き起こすから使用すべきでないとの意見がでて、そのことをマスコミが大きく報道しました。その結果こどもの喘息治療の現場で混乱がでてきました。そこで「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン」を作っている日本小児アレルギー学会が喘息の薬の適正使用ガイドライン及びその根拠を2006年3月に発表しました(これは厚生労働省の研究になります)。
 その中で2歳未満の乳幼児について、喘息を発症しないようにコントロールするための薬としてテオフィリンを投与する際に考慮することとして、
・テオフィリンは喘息発作が週1回以上ある患者に考慮する追加治療のひとつである(このレベルの主な治療はステロイド吸入です)
・ 6 カ月未満の児は原則として投与しない
・ 6カ月以上でも、てんかんや熱性けいれんなどのけいれん性疾患がある児には投与しない
・ けいれん性疾患の家族歴を有する児への投与は注意が必要である
・ 発熱出現時には、一時減量あるいは中止するのかをあらかじめ指導しておくことが望ましい
・ テオフィリンの血中濃度を上げる薬との併用に十分注意する
などです。
 テオフィリン関連けいれんは5歳以下に発症することが多いといわれています。2歳から5歳までは小児喘息の治療に精通した医師の下での投与が望ましいとされています。専門家も乳幼児へのテオフィリンの投与を禁止しているわけではありません。けいれん等の副反応がおきないように治療に精通した医師が投与することは問題ありません。
 テオフィリンは喘息の長期管理薬として有用です。吸入ステロイドでコントロールが困難なとき、ステロイドの増量よりはテオフィリンの併用が効果が高いとする研究もあります。テオフィリン服用中の小児のけいれん出現率は内服していない児におけるけいれんの出現率と差がないとする研究結果もあります。
 私は一部の意見で良薬を闇に葬ってはいけないと考えます。テオフィリン関連けいれんについては今後の研究結果を待って判断する必要があると思います。
 今日は2006年最後の「本日の独り言」です。みなさん良い年をお迎えください。

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2006年12月13日 (水)

ウイルス性胃腸炎

ノロウイルス感染による胃腸炎の患者数が例年になく早いペースで増加していると報道されています。いわゆる嘔吐下痢症で毎年冬に多くみられます。ウイルス性胃腸炎はノロウイルスだけでなくロタウイルス、アデノウイルス等でもおこります。小児ではロタウイルス胃腸炎が重篤になりがちでしたが、米国ではロタウイルスワクチンが実用化されています。ロタウイルスやアデノウイルスは一般クリニックでも便を用いた迅速検査で診断することができます。しかしノロウイルスは検査機関で調べないとわかりませんし検査に対する保険の適応はありません。厚生労働省が「ノロウイルスに関するQ&A」を公開しています。

http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/dl/040204-1.pdf

流行の状況は感染症情報センターのホームページをご覧ください。

http://idsc.nih.go.jp/idwr/pdf-j.html

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2006年12月 9日 (土)

インフルエンザワクチン

この冬はインフルエンザワクチンを接種する人が昨年に比べて少なくなっています。昨年は鳥インフルエンザがマスコミを騒がせていたので人々のインフルエンザへの関心が高かったようですが、今年はマスコミも静かです。また暖冬でインフルエンザなどまだ人々の意識に上らないのでしょう。メーカーの話では出荷数が昨年比7割強だそうです。私のクリニックでも接種数は昨年比9割弱です。今からでも間に合います。インフルエンザワクチンの接種を考えてください。

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2006年11月23日 (木)

嘔吐下痢症の治療

 冬の代表的な病気である、吐いて下痢をするウイルス性胃腸炎、いわゆる「嘔吐下痢症」が増えてきました。原因となるウイルスは複数ありますから何回でも罹ります。嘔吐や下痢の程度も様々です。一般的には夜中から朝まで数回吐いて、その後に下痢が数日続きます。嘔吐下痢になると最も心配されるのが脱水症です。吐いて下痢をするから体の水分が逃げてしまうように思われますが、実は失われているのは水だけではなく塩分(ナトリウムなどの電解質)も失われています。特に胃液にはナトリウムが多いので頻回の嘔吐は体の血液中のナトリウム濃度を下げて体調を大変悪くします。そこで嘔吐下痢のときは水分だけではなく電解質の補給が重要になります。
 日本では嘔吐下痢で元気がなくなると点滴を受けることがあります。しかし欧米では点滴は原則しません。電解質(特にナトリウム)とブドウ糖の経口補水液を飲んで治します。経口補水液はスポーツ飲料とは違います。主な違いは電解質濃度(ナトリウムの濃さ)です。スポーツ飲料はナトリウム濃度が低く糖分が多く砂糖水のようなもので脱水の治療には使えません。子どもの胃腸炎に電解質濃度の低いスポーツ飲料を飲ませすぎたせいで体の電解質バランスをこわしてしまい重症化した例がいくつもあります。死亡例もありました。
 嘔吐が続いているときには無理に飲ませてはいけません。無理に飲ませると更なる嘔吐を誘発するだけです。一度胃を休ませることが重要です。嘔吐が少し落ち着いたら経口補水液を少しづつの量を、くり返しゆっくり時間をかけて飲ませてください。手に入りやすい経口補水液は大塚製薬のOS-1です。しかしこれは「病者用食品」であるためコンビにやドラッグストアでは売っていません。調剤薬局で購入してください。

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2006年11月12日 (日)

病気と季節

 寒くなってきました。冬はウイルス性胃腸炎、いわゆる嘔吐下痢症の季節です。先々週から流行し始めました。ところが時を同じくして真夏の風邪である手足口病も一部地域で流行し始めました。昨年からインフルエンザが夏にもみられるようになり、どうも病気の季節感がなくなりつつあるようです。これは人の生活環境の変化か、ウイルスの適応の変化かわかりません。しかし東南アジアでは以前から真夏にもインフルエンザがありました。ウイルスの適応力が強いのでしょうか。

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2006年10月18日 (水)

気管支が弱い?

 RSウイルスが今年も流行し始めました。風邪ウイルスの一つですが、乳幼児、特に6ヵ月未満の赤ちゃんが罹ると高熱、咳が強くなり、ゼーゼー喘鳴がでて気管支炎や肺炎になります。入院になることもあります。インフルエンザのタミフルのような特効薬がないので治療に難渋するウイルスです。ところでRSウイルス感染や喘息で気管支炎になるとゼーゼーという呼吸音がする喘鳴がでてきます。風邪をひいてゼーゼーいうと保護者の方から「この子は気管支が弱いのですか」とよく聞かれます。私は「気管支が弱いのではなくウイルス感染やハウスダストに過敏に反応しやすくなっているのです。」と答えています。医学的には気管支の過敏性の亢進と言います。私は「弱い」という言葉は使いたくありません。弱いと言ったらその子が気管支に障害を持っているようにも聞こえるからです。

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2006年9月27日 (水)

喘息に注意

 今年は残暑がなく急に朝寒くなってきたためか喘息発作が多く診られます。子どもの喘息は多くがダニアレルギーが原因です。生きているダニではなくダニの死骸と糞がアレルギーの原因になります。夏に増えたダニは寒くなる秋にいっせいに死んでいきます。すると死骸が多くなり喘息発作が多くなります。また急な気温の変化や台風による気圧の低下、さらには運動会の練習疲れも一因になるでしょう。最初の喘息発作はある日突然やってきます。ゼーゼーいう咳をして息苦しそうなときはすぐに受診してください。

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