2018年1月31日 (水)

インフルエンザ

インフルエンザ
 インフルエンザは例年なら1月中旬から本格的な流行が始まりますが、今シーズンは昨年12月中旬から患者さんが増えだし、1月中旬からは近年にない大流行になりました。糸島地区では患者数のピークは1月15日の週でした。私のクリニックの経験では、今回の流行は2009年の新型インフルエンザより瞬間的には患者数が多いようです。
 なぜ今冬はこんなにも患者数が多くなったのでしょうか。メディアはA型とB型が同時に流行したためだと言っています。しかし私はそれだけではないように思います。これから先の話は正確な統計や検証をしたものではなく、あくまで私が毎日の診療から類推したものだということをお断りしておきます。。
 大流行の第一はワクチンの問題です。今年度は予防効果が期待されて採用したA型の香港型ウイルスの株が、ワクチンの製造過程でうまくできないことがワクチンをつくり始めた後からわかって、香港型ウイルス株の出来は3割しかないことが判明しました。そのため香港型のワクチン株を昨シーズンの株に戻して再生産しなおしたため、ワクチンの製造が大幅に遅れて、結果的にはワクチン不足を招きました。メディアではワクチン接種が始まる10月から11月は不足が大きいが12月以降は改善していったといっていました。しかし臨床の現場では、国民が接種を求める10月11月にワクチンが無かったため、接種率が20から30%は落ちたのではないかと思います。その結果例年に比べてインフルエンザに対する予防の準備ができていませんでした。
 また昨シーズンの香港型のワクチン株の予防効果は低いことが判明していて、1割しかないという報告もあります。今シーズンもA型は以前のソ連型で2009年の新型インフルエンザの型と香港型の2つの型の流行が例年通りあります。今年はワクチンを接種していてもA香港型の予防は期待薄です。
 第二は昨シーズンにB型インフルエンザの患者数が少なかったことです。公式のサーベイランスでは昨年はB型が明らかに少なかったとは言っていません。しかし私の印象では例年B型が流行する2月から3月のB型は昨年は明らかに少なかったように思います。そのためB型に対する免疫が弱くなっていたかもしれません。もしかしたらこれが例年になく早くからB型が流行し始めた理由かもしれません。
 第三には、昨年10月のブログでも書いたように、昨年、私はインフルエンザを夏も秋も診ていました。毎月少なくとも2人の患者さんを診ていました。平均すれば1週間に0.5人弱のインフルエンザの患者さんを診ました。1つの診療所で1週間の患者数が1人以上出たら流行が始まったと考えます。私の診療所でも見つかるくらいの頻度でインフルエンザが1年を通して広く世間に存在していたと思います。
 インフルエンザは例年は5月初めまでの大型連休まで診られます。まだまだ気を付けてください。
 
 さてインフルエンザの診療をしていて、患者さんとの話ででてくるQ&Aについて書いてみました。
Q:熱がないインフルエンザはありますか?
A:あります。しかし熱が無くても、身体がダルイ感じがあり周囲にインフルエンザの患者さんがいたらインフルエンザの可能性があります。
Q:熱が高いのに、喉が赤くないことがありますが。
A:インフルエンザの患者さんの喉は赤くないが多いようです。喉の赤みと熱は関係ありません。
Q:発病24時間たって検査をしたのに陽性反応がでないことがありますか。
A:あります。迅速検査には限界があります。陰性の場合、インフルエンザなのに陰性なのか、症状は似ているが異なる病気なのかの診断は慎重にしないといけません。思い込みの診断は要注意です。
Q:インフルエンザと似た症状の病気にはどのようなのがありますか。
A:乳幼児ならRSウイルス感染です。昨シーズンは小学生のヒトメタニューモウイルス感染でインフルエンザ様の症状の患者さんをよく診ました。高熱と咳が主ならマイコプラズマ感染症も疑います。高熱と倦怠感が主な場合は小学生なら溶連菌は鑑別しなくてはいけません。
Q:1シーズンにA型インフルエンザに2回なりますか。
A:ヒトで流行するA型には2つのグループがあるので1シーズンに2回なることもあります。
Q:A型とB型の同時感染がありますか。
A:あります。インフルエンザという同じ名前でも全く別の種類のウイルスです。
Q:インフルエンザと他の病気の同時感染がありますか。
A:あります。よく経験するのがインフルエンザと溶連菌の同時感染です。この2つの病気は治療薬が異なりますから、注意深い診断が必要です。
Q:タミフルを内服したり、リレンザやイナビルを吸引しても熱が下がらないことがありますか。
A:あります。適切に発病24時間以内に開始しても、特にB型では薬が効かないことがあります。
Q:もうすぐ新しいインフルエンザの薬がでるとききました。
A:塩野義製薬が「ゾフルーザ」という名前の新しいインフルエンザの薬を5月にも発売予定です。薬の作用が今までの抗インフルエンザ薬と異なり、1回の内服で終わります。小児にも適応があるようです。

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2017年12月30日 (土)

この1年を振り返って

 12月17日に横浜市で開催された、日本アレルギー学会主催の総合アレルギー講習会に出席しました。いろいろと講演を聞きましたが、その中で、島根大学医学部皮膚科学教室の千貫祐子先生の「マダニ咬傷と獣肉アレルギー」の話は興味深いものでした。ウシ、ブタ、ヒツジなどの四つ足の哺乳類の肉を食べた後にでるアレルギー症状の一部はマダニが原因だそうです。マダニに噛まれたら血を吸われますが、マダニは刺したときに唾液を注入します。唾液の成分の糖鎖に対してアレルギーが成立した場合、その人が肉を食べるとアレルギー反応を起こし、時にはアナフィラキシー症状を引き起こすことがあります。実は肉の中にはマダニの唾液成分の糖鎖と同じものが豊富にあるためです。この糖鎖は子持ちカレイの魚卵にもあります。子持ちカレイの魚卵を食べてアレルギー症状がでたらこの糖鎖のアレルギーかもしれません。この糖鎖のアレルギーの怖いところは、転移性大腸癌や頭頸部癌の治療薬である「セツマキシブ」にもこの糖鎖があることです。そのためセツマキシブを治療で点滴すると強いアレルギー症状が出現することがあります。実際に症例報告があり、中には死亡に至った例もあるようです。マダニに噛まれるのは野山に入った時が多いと思われますが、ペットのイヌやネコにダニがいることも多いわけです。イヌ・ネコとマダニと肉アレルギーの連鎖には要注意です。
 今年も終わりますが、この1年もまたもやワクチンに振り回されました。MRワクチンの不足は昨年から続いていましたが、日本脳炎ワクチンの不足は厳しいものでした。そして年末にはインフルエンザワクチンの不足が社会問題にもなりました。私のクリニックでも患者様にたいへんご迷惑をおかけしました。毎年、ワクチン不足のリスクに対してどんな対策をとるか頭を痛める日々が続いています。
 12月に入ると、手足口病が流行しました。手足口病は夏風邪の代名詞だったのに、なんと冬に流行しています。昔から教えられてきた病気の季節感がなくなってきているようです。先月も書きましたが、インフルエンザも1年中みられようにもなりましたから。
 ことしもいろいろなことがありましたが、来年が少しでもよい年であることを祈ります。
 みなさま良いお年をお迎えください。

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2017年10月30日 (月)

1年中みられるようになったインフルエンザ

 例年、インフルエンザは5月の大型連休を過ぎるとみられなくなります。しかし今年は違いました。6月も7月もそしてとうとう10月まで毎月インフルエンザの患者さんをみました。もちろん6月から10月までは患者数は多くはなく月に数人でした。しかしこのようなことは初めてです。
 何があったのでしょうか。理由はわかりませんが。一つ言えることはインフルエンザの発生条件には寒くなることや空気が乾燥することは必須ではないということでしょう。沖縄では以前から真夏にインフルエンザが毎年流行していますから。
 私は人の移動が重要かと思います。2009年の新型インフルエンザも発見からあっという間に全世界に広まりました。もしこれが飛行機の異動がない19世紀なら急速なパンデミックは起きなかったはずです。
 夏風邪の手仕口病やヘルパンギーナも真冬でもみます。以前は季節性の感染症もいまでは一年中みられます。病気の旬はなくなり、何時でも様々な病気の診断を考えて診療していく時代になったようです。

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2017年6月30日 (金)

アトピー性皮膚炎と汗

 6月に東京で日本アレルギー学会があり参加してきました。たくさんの研究発表や討論会がありましたが、その中で興味深かったのがアトピー性皮膚炎と汗のシンポジウムでした。
 汗は99%が水ですが残りの1%の中にいろいろな成分が含まれています。電解質、尿素、乳酸だけではなくプロテーアゼ阻害物質や複数の抗菌ペプチドが含まれます。尿素と乳酸は天然保湿因子になります。汗のシステインプロテアーゼ阻害作用はダニ抗原などを失活する効果があります。セリンプロテアーゼ阻害作用はアトピー性皮膚炎の角層バリアの改善に貢献すると考えられています。
 発汗には安静状態で汗が分泌される不感発汗と、温熱負荷で汗が分泌される温熱発汗があります。不感発汗は皮膚の水分保持に、温熱発汗は体温調節に重要な役割を果たしています。アトピー性皮膚炎の患者では発症早期の段階で著明な発汗低下があることがわかりました。
 アトピー性皮膚炎でみられる不感発汗の低下は、汗管、汗孔の閉鎖のため、汗が皮膚の表面に出ることができないためです。その結果、発汗低下となり皮膚の乾燥をもたらします。そしてうっ滞した汗が汗腺器官から漏れ出て組織に異常反応を引き起こします。真皮内に漏れ出た汗は皮膚の炎症・痒みをもたらします。アトピー性皮膚炎は汗うっ滞症候群という全く新しい考えがでてきました。
 それではステロイド外用剤や保湿剤は発汗にどのような影響を与えるのでしょうか。ステロイド剤やワセリンは不感発汗を誘導せず。もっともよく用いられる保湿剤であるヘパリン類似物質は用量依存的に不感発汗を誘導することが明らかになったそうです。しかも同じヘパリン類似物質の保湿剤でも、o/wのクリームタイプのものがw/oのソフトタイプより発汗を誘導するという話でした。
 アトピー性皮膚炎の患者にとっては汗は増悪因子と考えられてきましたが、実は皮膚の改善に役立つ働きもしています。

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2017年3月30日 (木)

インフルエンザの迅速検査

 千葉市の休日夜間診療所いわゆる急患センターでは、2010年以降インフルエンザの流行期には簡易迅速検査を原則行わないそうです。外来患者が非常に多くなり、待ち時間が長くなるからでしょうか、診療の効率化や迅速検査の限界等を考慮しての判断のようです。ただし重症例など医師の判断で例外もあることや、迅速検査を実施しなくても「医師の診察でインフルエンザと診断された場合には、抗ウイルス薬の処方が行われる」との但し書きも付けられているます。
 この背景には、2009年のインフルエンザ流行時に、厚生労働省が「無症状者のインフルエンザ陰性を証明するために医療機関を受診させ、簡易迅速検査などを行う意義はない」と通知を出し、また、「臨床所見や地域の流行状況などから医師が総合的に判断し、薬物療法が必要と判断した際には迅速検査やPCR検査は必須ではなく、診療報酬や調剤報酬上も抗ウイルス薬投与に迅速検査の実施は必須ではない」との見解も示したことあります。(2009年10月16日事務連絡「新型インフルエンザによる外来患者の急速な増加に対する医療体制の確保について」)。
 この千葉市の判断に対して、医師のサイトなどでは賛成意見が多いようです。家族や集団内でインフルエンザの患者が複数いれば、症状からインフルエンザが疑わしければ検査はせずに医師の判断で診断しても良いと考える医師。症状からインフルエンザが強く疑われるのに検査をすれば医療費の無駄と考える医師。そのような考えの医師たちです。
 そもそもインフルエンザはタミフルなどの抗インフルエンザ薬を使わなくても自然に治ると考える医師もいます。欧米ではインフルエンザを疑ってクリニックを受診したら、「インフルエンザくらいでなんで来るの」と言う医師が多いでしょう。
 私は30年以上小児科医をやっていますが、未だにどんなに丁寧に診察しても直観だけでインフルエンザと診断することには不安があります。それは今まで、典型的なインフルエンザの症状でも異なる病気だったり、家族全員がインフルエンザでも一人異なる病気だったり、まるで非典型的な症状なのにインフルエンザだった患者さんを数多くみてきたからだと思います。
 検査のやりすぎな戒めなければいけませんが、医師の主観的判断に頼りすぎる診断も戒めなければならないと思います。

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2017年2月27日 (月)

2月をふり返って

 2月はインフルエンザが流行し、特に福岡県の流行状況は、病院・診療所あたりの患者数が一時は日本一となりました。幸い私のクリニックに近い小学校は学級閉鎖になるほどではなかったので、大流行という感じまではありませんでした。
 現在、糸島地区ではインフルエンザはA型が2種類いますので、今シーズンにA型に二度罹った子どもも珍しくはありません。A型に二回とB型になった子どももいました。3回インフルエンザになったわけです。インフルエンザは型が異なれば違う病気ですから、一冬に何回もなる可能性があります。インフルエンザは5月の連休までは注意しなければいけません。
 例年あることですが、親兄弟がみんなインフルエンザになっても一人違う病気で熱をだすことも珍しくはありません。ひとりひとり確認しないと診断を誤ることがあります。また両親に風邪症状がなく保育園にも通っていない一人っ子の乳児が突然熱を出したら、普通は突発性発疹症を第一に考えますが、この時期はインフルエンザである例を診ます。どこで感染したのかはわかりません。
 また小学生を中心に溶連菌感染が流行しました。溶連菌は喉の痛みが強激しい扁桃炎ですが、小学生ではまるでインフルエンザのような高熱と倦怠感を伴うことがあります。インフルエンザの検査をして、陰性ならば疑う病気の一つです。ただし2月は溶連菌とインフルエンザを同時に感染した子どもを何人も診ました。抗生物質とタミフルを一緒に内服することになりました。
 また高熱と咳がひどい、ヒトメタニューモウイルスも多くみられ、検査をしっかりしないと診断が難しかったと思いました。小学生の患者さんも数人診ましたが、症状はインフルエンザなみに辛そうでした。さらにヒトメタニューモウイルスとRSウイルスの同時感染した子どももいました。
 例年、春先からは胃腸炎(嘔吐下痢症)のなかで最も重症なロタウイルス胃腸炎が診られます。今年も3日間点滴が必要になったロタウイルス胃腸炎を何人か診ましたが、年を追うごとに症状が重いロタウイルス胃腸炎は少なくなってきています。ワクチンの有効性は明らかなようです。

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2017年1月29日 (日)

なぜ卵アレルギーになるの?

 卵を食べると顔や体が赤くなっり、蕁麻疹が出たりするのは卵のアレルギーです。これは消化の力が弱い赤ちゃんの時に卵の成分を食べてしまって、アレルギー反応の準備ができでしまい、次に食べたときに蕁麻疹が出るという訳ではありません。最近の学説は、初めに目に見えないくらい小さな卵のたんぱく質が、湿疹で荒れた赤ちゃんの皮膚の中に入り込み、そこで体の免疫細胞が反応して、アレルギーの準備ができます。次に卵を食べたときに蕁麻疹がでると言われています。
 でもどうして皮膚に卵の成分が入り込むのでしょうか。お母さんが卵を食べた後に母乳を与えたりして、その時赤ちゃんの口の周りが荒れていたらそこから入るのでしょうか。それならミルクの赤ちゃんが卵アレルギーになるのは説明できません。
 実はキッチンで卵料理を作ったら、部屋中に目に見えないくらいの小さな卵のたんぱく質がばらまかれます。それが赤ちゃんの皮膚の荒れた部分に入り込んでアレルギー反応のもとになる訳です。
 先月、横浜で日本アレルギー学会の主催する、総合アレルギー講習会に参加してきましたが、そこで専門家から、家の中のハウスダストなどを調べると、実は卵のたんぱく質がかなり多く見つかるという話がありました。場所によってはダニの成分より多く見つかることもあるそうです。
 家の中は卵のたんぱく質がたくさんあり、赤ちゃんはアレルギーの危険性にさらされているようです。卵のタンパク質は卵料理を一切しない限り家の中からなくすことはできません。そのため卵アレルギーをはじめ食物アレルギーの予防にはスキンケアが重要になります。食物アレルギーは肌荒れからです。

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2015年11月29日 (日)

豆乳アレルギーの検査

 豆乳を飲むと蕁麻疹などのアレルギー症状が出る人がいます。これは豆乳アレルギーですが、豆乳は大豆からつくるからといって、「大豆」のアレルギー検査をしても陰性のことがほとんどです。それは大豆を作っている数多くのたんぱく質のなかで、豆乳アレルギーの原因となるたんぱく質と、一般の大豆アレルギー検査で調べるたんぱく質が異なるからです。ところで来年2月から豆乳アレルギーのたんぱく質の検査が、一般のクリニックでもできるようになります。
 通常の大豆アレルギーは、大豆製品の摂取で発病します。乳幼児の多く、蕁麻疹などの皮膚症状や、喘息などの呼吸器症状、嘔吐や下痢などの消化器症状が主です。
 豆乳アレルギーは成人に多く、花粉症と関連しています。ハンノキやシラカンバの花粉症との免疫の交叉反応で発病します。豆乳アレルギーを引き起こすたんぱく質が、ハンノキやシラカンバの花粉症を引き起こすたんぱく質と類似しているためです。症状としては口腔症状が多いようです。
 鶏卵や乳などの食物を作るたんぱく質は数多くあります。卵白のアレルギーの検査項目の「卵白」だけがアレルギーを引き起こすわけではありません。卵白アレルギーでは「オボムコイド」も一緒に調べます。オボムコイドは卵白のたんぱく質の一つで、加熱されても変性しにくいたんぱく質です。そのためオボムコイド陽性の卵白アレルギーでは固ゆで卵の摂食も要注意となります。乳アレルギーでは「ミルク」だけではなく、「カゼイン」「βラクトグロブリン」なども併せて調べます。小麦アレルギーなら「小麦」だけではなく、「グルテン」「ω5グリアジン」も調べます。ピーナッツアレルギーでは、「ピーナッツ」だけではなく「Ara h 2」も調べます。それぞれの項目でアレルギーの症状が異なることがあります。今回、大豆アレルギーでも「大豆」だけではなく、豆乳アレルギーに関連が強い、「Gly m 4」の検査ができるようになりました。

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2015年10月31日 (土)

ダニアレルギーの舌下免疫療法

 スギ花粉症に対する、アレルギー免疫療法が始まって1年が過ぎました。適応が12歳以上の薬ですので、小児では治療をする人はまだ多くはありません。来春は治療開始から2シーズン目のスギ花粉の飛散時期になるので、治療効果が出てくる患者さんも増えてくるのが予想されます。
 さて今年の12月から、ダニアレルギーの舌下免疫療法の薬が使えるようになる予定です。小児の呼吸器系のアレルギーは圧倒的にダニが原因ですから、期待できるのではないでしょうか。しかしこの薬も12歳以上が適応になります。12歳未満については治験を行っているようですから、将来的には使えるようになるでしょう。

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2015年9月30日 (水)

「子供の風邪に薬はいらない」?

 9月15日の日本経済新聞の1面に「子供の風邪に薬はいらない」という見出しが載りました。医出づる国「削りしろ」を探せという記事の見出しです。確かに、子どもの風邪といわれる病気の大半には特効薬はありません。そのため小児科医の間でも、風邪には抗生物質をはじめとして、不必要と思われる薬はできるだけ処方しないという考えの医師が多くいます。しかしこの記事の見出しには妙な違和感があります。
 インフルエンザだって薬を使わなくても、多くは自分の免疫力でなおります。でも辛い症状は1週間から10日ほど続きます。風邪に薬は必要ないと言っても、熱や咳や鼻水がつらいことはあるわけです。これらの症状を和らげてほしいと患者さんは希望しています。一律に薬はいらないとはならないでしょう。この記事に出ている小児科医も、不必要な抗生物資の処方に警鐘を鳴らしていますが、他の薬については言及していません。この小児科は、子供の風邪に薬はいらないとは、日経の記者には本当は言っていないでしょう。解熱剤や咳の薬などはきっと処方されていると思います。
 この記事にはもうひとつ、「薬剤費年8兆円」という見出しも付いています。確かに医療保険を使った薬剤費は膨大です。しかしその原因は子どもの風邪に処方する薬代のせいでしょうか。この記事の後半三分の二は、ジェネリック医薬品、医療機関のはしご受診、大量の飲み残し薬、ムダな医療の対策などが取り上げられています。中見出しには「子供の風邪に薬はいらない」ではなく、後半の記事の内容のタイトルをつけるべきでした。
 平成25年度の国民医療費は40兆610億円、そのうち薬局調剤医療費は7兆1119億円に達しまた。しかし15歳未満の子どもの医療費とそのうちの6.1%、薬は6.4%程度です。医療費や薬剤費の削減のやり玉に子供の風邪があげられているようで、その意味でも違和感のある記事です。政府は自治体が行っている乳幼児や学童への医療費助成制度に対して補助金を減額すると言っています。また接種費用が実質無料になる定期予防接種の数は開発途上国を含めても日本はまだ劣っているというのにです。
 一体、この記事は何を言いたいのでしょうか。記事を提供した小児科医の意向とは別に、人目を惹くタイトルにして、比較的真面目な日本人の性格を利用して、身近なことから薬代を減らすのは意味あることだと、潜在意識の中に刷り込もうとする何処かの意図が伺えないでしょうか。
 私はまた、「子供」という表記が個人的には好きではありません。「こども」「子ども」「子供」文部科学省では2013年に子供と統一したようですが、「子供」は子どもが大人のお供のようで私は好きではありません。「風邪」という言葉もどうでしょうか。風邪くらいで気安く病院を受診しないようにという言葉のコントロールがみえるようなのは私だけでしょうか。

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