2009年11月 3日 (火)

正しい体温の測り方

10月31日の東京FM系列の番組「AVANTI」で、日本の医療機器メーカのテルモ体温研究所所長の和田優子さんが「体温」について話をしていました。 
体温を腋の下で測るときの正しい計り方は

①体温計を下から腋に突き刺すような角度で入れること。
②挟んだ方の手のひらを上に向けると脇が締まるのでなお良いこと。
③空いている手で肘をぐっと身体に引き寄せれば完璧。

そうやって計ると0.3~0.4℃くらい違そうです。
 
また電子体温計の「ピピッ」と鳴る音の意味も器機により意味が違うので要注意です。
「ピピッ」が終了の合図の電子体温計と、「ちゃんと計測できています」という合図の電子体温計があります。
前者は「予測式」で、後者は「実測式」と呼ばれます。
体温を正しく測るためには、低い温度の電子体温計の計測部分が腋の下の体温と同じにならなければいけません。この温度を「平衡温」といいます。このとき初めて正しい体温が測定できます。時間的には約10分かかります。平衡温になるまで10分かけて測る体温計が「実測式」です。
しかし忙しい現代人はその10分が待てません。そこで開発されたのが「予測式」の体温計です。これは体温計を腋の下に挟んでから、体温計の計測部分が体温で暖まっていく速度等から体温計内部のマイクロコンピュータが計算して体温を予測値として表示するものです。30秒から90秒ほどで体温を表示します。

日頃の診療の中で子どもの体温がいつも低いとか、今日は体温が35℃台でしたという話がありますが、体温が低く測れたときはもう一度、正しい測り方で測りなおしてみてください。

体温を測るということ(テルモ体温研究所)

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2009年9月10日 (木)

日本脳炎について

ミキハウス子育て総研の雑誌「ハッピーノート秋号」に小西英二先生が日本脳炎についてわかりやすく書かれた記事があります。これはWebでも読めます。
http://www.55192.com/happynote/vol20/happy_note/PMakely.html
46ページです。
内容について補足説明します。
「どうしてかかるの」
日本脳炎のウイルスをもったコガタアカイエカにさされても必ずしも日本脳炎を発病しません。また人から人への感染はありません。あくまでも蚊を媒介にして感染します。
「今でも怖いの」
100人に1から4人はウイルスをうつされているというのは、それだけの数の人がウイルスをもった蚊にさされて日本脳炎に感染しているということです。しかし幸い発病をしていないわけです。一度も日本脳炎ワクチンを接種されていないのに、日本脳炎に対する免疫ができている子どもたちがいるという研究結果があります。これは知らないうちにウイルスを持った蚊に刺されていることを証明しています。
「日本脳炎ウイルスには謎がいっぱい」
なぜ最近は日本脳炎の患者数が減ったのかわかっていません。予防接種の効果とか、養豚場が人の住むところから離れた場所に移動したからという理由ばかりではありません。しかし危険性がなくなった訳ではありません。
この記事は日本脳炎について実にわかりやすく書かれています。ぜひご一読ください。

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2009年8月28日 (金)

子宮頸がんワクチン

 産婦人科の先生から子宮頸がんワクチンについて教えていただきました。
子宮頸がんは35歳に患者数のピークがある、最も若年に発症する癌です。45歳以下の女性では乳がんについで2番目に多い癌です。年間約7000人が発症し、約2500人が死亡しています。子宮頚がんはHPV(Human Papilloma Virus、ヒトパピローマウイルス)というウイルスの感染が発病に深くかかわっていることがわかっています。HPVは性行為によって生殖器に侵入します。不特定多数のパートナーとの性行為経験だけではなく、普通の性行為経験でも、誰でも感染する可能性があります。米国では全女性の4人に3人は一生に少なくとも一度は感染しているといわれています。日本での健康な女性の約25%からウイルスは検出されています。ウイルスの潜伏期間を考えれば、日本も米国と同じくらいの感染率と予想できます。
 子宮頸がんにならないためにはHPVの感染を防ぐことが重要です。HPVに対するワクチンはすでに開発されていて、欧米では公費負担や保険で接種が可能になっています。日本でもようやく国の承認がおりようとしています。
 子宮頸がんは婦人科医が診る疾患ですが、ワクチンの接種は小児科医がかかわることになります。理由はこのワクチンの効果はHPVに感染する前に接種する必要があるからです。そのため性行為経験のある女性に接種しても効果は望めません。性行為経験のない女性、一般的には12歳から13歳(18歳)の女性に接種することになります。小児科医がいつも診ている女子が対象になります。婦人科と小児科の連携で少しでも子宮頸がんを減らしていかなければなりません。

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2009年7月30日 (木)

7月の雑感・疾患編

 梅雨はまだ明けませんが、手足口病などの夏かぜは流行しています。手足口病はエンテロウイルスが原因です。いわゆる手足口病ウイルスというウイルスは存在しません。エンテロウイルスが感染しても必ず手足口病になるわけではありません。症状が熱だけだったり、足の発疹だけだったり、中には症状はほとんどなくウイルスだけを排出している患者さんもいます。手足口病とは独立した病名ではなく、エンテロウイルス感染の症状を言っているだけと考えたほうが理屈には合っています。またウイルスに感染したら患者さんは約1ヶ月間はウイルスを排出します。他の子ども達に病気をうつす訳です。以前は発疹が出ている間は保育園・幼稚園は登園禁止にしていましたが、発疹が消えても感染力があること、症状がほとんどなくてもウイルスを排出している人もいるため、今は発疹のみで登園禁止にはならなくなりました。もちろん熱があったり、元気がないときはお休みをします。
 最近はメディアもほとんど取り上げなくなりましたが、新型インフルエンザの患者数が増加しています。国内の最初の症例から約2ヶ月で蔓延期になりました。これから約2年間にほとんどの国民が感染するでしょう。世界中で日本政府だけがとった水際対策、発熱外来などは、人力と予算の無駄遣いに終わったことが証明されただけでした。弱毒型インフルエンザに対して、SARSや強毒型インフルエンザの対策で対処した日本政府の対応は世界の物笑いの種にしかなりませんでした。国の方針転換で7月下旬から発熱外来はなくなりました。一般診療所でも新型インフルエンザを診ることになりました。そして全数調査も中止になりました。簡易検査でA型の陽性判定がでたら、今までは公的機関の精密検査で季節性か新型かを診断ていましたが、今後は個別の患者さんの精密検査はしなくなります。集団発生のときだけ検査をすることになりました。発熱で診療所を受診して、簡易検査でA型陽性になっても、医師の答えは「もしかしたら新型かもしれないね」くらいになります。患者さんも「そうですか」と冷静に受け止めてもらえるとありがたいのですが。しばらくは混乱するかもしれません。新型インフルエンザは恐怖のウイルスでは決してないわけです。手洗いによる予防をおこない、もしも罹ってしまったら抗インフルエンザ薬等で治療して、ウイルスが体の中から消えるまでは集団生活には戻らずに自宅で安静にするとういう基本を守ればよいわけです。それとワクチンには過大な期待は持たないほうがよいと思います。もともとインフルエンザワクチンの予防効果は低いわけで、それは今度の新型インフルエンザのワクチンも同じでしょう。それに急いで作ったワクチンでしかも通常なら何年もかけておこなう臨床試験も簡単に終わらせて認可するのでしょうから、安全性もいかがなものかと思われます。

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2009年4月30日 (木)

豚インフルエンザ

突然、メキシコから出てきた豚インフルエンザにWHOや政府は対策に追われています。これは新型インフルエンザで世界的大流行(パンデミック)になって死者が多数出るのか。メディアも一斉に報道を始めました。
 客観的に十分に事態を取材をしてるか、また事象を深く勉強しているか。このような時こそ、各メディアのレベルがわかる良い機会です。まずニュースを伝えるニュースキャスター、アンカーマンが自分の意見を言う番組は信用度は低いと判断します。欧米のアンカーマンは決して自分の意見を言いません、粛々と事実を伝えていきます。自分の意見の代わりに専門家の意見を伝えます。素人である個人の意見を挟むことは、ある意味、情報操作と思われても仕方がありません。
 また、情報の信頼性の順位は、第一位が専門家の意見、第二位は世界機関の発表、今回はWHOの発表です。第三位が政府の発表といわれています。

 ところで今回の事態を鋭く予言した論文が、今年の1月に日本小児科学会誌の掲載されました。タイトルは「新型インフルエンザの誤解と対策の問題点」、執筆者は神奈川県警友会けいゆう病院小児科の菅谷憲夫先生です。日本消化学会雑誌 113巻 1号 31から35(2009年)
 この論文では、新型インフルエンザは近い将来必ず出現し全国民100%が発病するので、爆発的に発生する患者の診療体制の確立が最優先課題だとしています。しかし日本の対策は感染拡大防止に重点がおかれており、診療体制の整備・確立が遅れているとしています。
H5N1の流行の可能性は低い
 次の新型インフルエンザがH5N1(強毒性の鳥インフルエンザ)と確定したかのようにされていますが、専門家の間では、H5N1が新型インフルエンザとして流行する可能性については否定的な意見がでていること。H9、H7、H2などが次の新型インフルエンザの候補となる可能性が高いと言っています。
新型インフルエンザには全国民が罹患発病する
 新型インフルエンザの流行は第一波、第二波と続きます。新型インフルエンザが出現すれば、半年以内に25から50%、数年以内には全国民が罹り発病します。
新型インフルエンザの死亡は細菌性肺炎が原因
 強毒性のH5N1ではインフルエンザウイルス自体の毒性で死亡しますが、弱毒性のインフルエンザでは二次感染、特に呼吸器の細菌性肺炎の重症化で死亡します。
発熱外来は意味がない
 日本では発熱外来の設置を厚労省が強く指導しています。しかし欧米の対策では発熱外来という発想はありません。膨大な患者を少数の発熱外来で診察するのは常識的に考えても不可能です。欧米に発熱外来の発想がないのは、発熱外来の受診までに、家庭、学校、職場、交通機関など周囲に感染をおこす機会が十分にあり、外来だけ隔離しても感染拡大防止としての意味がないからです。
 発熱外来はSARSの対策との混同です。SARSは周囲に感染を開始するまで数日から1週間かかり、患者発生数も格段に少ないから発熱外来も意味があります。
医療関係者の感染防止の問題点
 日本の対策では新型インフルエンザを診察する医療関係者は、防護服、ゴーグル、N-95マスク、ゴム手袋の着用を支持しています。これは新型インフルエンザとH5N1インフルエンザ対策との混同です。しかし欧米の対策ではサージカルマスクの着用以外は特別な感染防止は実施しません。
新型インフルエンザワクチンの問題
 日本のワクチンは小児には接種できません。
 毎年接種しているインフルエンザワクチンはウイルスにエーテルを加えて分解してワクチン成分とするスプリットワクチンです。しかし日本の新型インフルエンザワクチンはウイルスにエーテルを加えることなくそのままでつくる全粒子ワクチンです。全粒子ワクチンは発熱等の全身性の副反応が強く出るので、欧米では12歳以下には接種禁忌となっています。

 以上、この論文では新型インフルエンザの誤解と対策の問題点が述べられいます。
 今、現実に新型インフルエンザが出現しました。それは強毒性のH5N1ではなく弱毒性のH1N1でした。H2ではありませんでしたが、弱毒性という論文の予想は当たりました。
 政府は水際作成に力を入れていますが、ウイルスの国内への侵入は現実的は阻止できないでしょう。
 ところで厚労省のいう発熱外来ではなく、仙台市では地域の各診療所が発熱外来となって患者の診断をおこなう体制を作りました。現実的な評価すべき対策と思います。また今回の新型インフルエンザワクチンが全粒子タイプのワクチンとなるかはまだ明らかではありません。
 インフルエンザの死亡は細菌性肺炎です。原因菌は肺炎球菌が最も多いでしょう。高齢者には肺炎球菌ワクチンがあります。流行前の今のうちに接種を勧めるべきです。それだけでも多くの高齢者が救われると思います。
 しかしこのワクチンは小児には効果がありません。小児の肺炎球菌ワクチンは別にあります。海外の80カ国以上では接種されているワクチンです。しかし日本では小児科医、小児科学会、患者団体からの再三の早期の認可要請にもかかわらず、未だに国は小児の肺炎球菌ワクチンの使用を認めていません。今回の新型インフルエンザの流行で、肺炎球菌性肺炎の併発で多くの小児が重症化したり死亡したりしたら、その時国は、肺炎球菌ワクチンの認可をいたずらに遅らせた責任を強く迫られることでしょう。

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2009年1月31日 (土)

今年もインフルエンザで考えさせられる今日この頃

 今年はインフルエンザの流行が例年より早く、1月末の今がピークのように思えます。今年のAソ連型はタミフルが効かない耐性ウイルスです。診療の現場でも昨年まではタミフルを内服してもらえば2日以内に熱は下がっていたのに、今年はA型の患者さんの中にはタミフルを内服してもらっても、内服しない場合と同じ自然経過のような熱の動きをする患者さんが多く診られます。タミフルに耐性のウイルスの存在を実感させられます。そのため今のところはAソ連型にも効果のあるリレンザの専用吸入器を使える年長児にはできるだけリレンザを処方しています。
 インフルエンザは健康な小児ならタミフルなどの治療薬を使わなくても自分の力で治せる病気だと強調する意見があります。確かに途中の経過はきつくても最後は自分で治せる病気です。中には治療薬なしで熱もすぐに下がって元気になる子どもも多くいます。しかし全例が軽く済むわけではありません。
 以前、インフルエンザの迅速診断キットがなかった頃は高熱でぐったりしている重症感のある患者さんだけをインフルエンザと診断していました。ところが診断キットが使えるようになって、インフルエンザには軽症から重症までいろいろな病態があることがわかってきました。熱のないインフルエンザの患者さんもをけっこういます。軽い症例も含めて多くのインフルエンザを診断できるようになったので、治療薬は使わなくても治るという考え方が強調されるようになったのでしょうか。私はインフルエンザは決して軽視してはいけないと考えます。
 昔はインフルエンザで老人だけでなく子どもも若者も亡くなっていました。私は今年、インフルエンザから細菌性の肺炎を併発した幼児例をすでに複数経験しました。入院されたお子さんもいらっしゃいました。いずれもタミフルは内服していませんでした。抗生物質が使えない時代ならそのまま命を落としていたかもしれません。現代でも老人では肺炎を併発したら命にかかわります。今では多くの病気が治せたり、治療で軽く済むようになって、また診断技術の発達で病気の概念が変わってきたりしたため、病気本来の怖さを多くの人が忘れているのではないかとついつい思ってしまう今日この頃です。

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2008年12月31日 (水)

この1年を振り返って

 今年のはじめは昨年3月のようなインフルエンザの短期の大流行は無く過ぎました。
 糸島地区では4月からBCGの個別接種が始まりました。子どもたちにとっては接種の機会が増えたことはよかったと思います。しかしBCGのワクチンは紫外線に大変弱いため、接種する部屋には直射日光が入らないようにしなければなりません。また針の打ち方にも独特の技能を必要とします。接種後も接種部位が乾くまで院内で経過を診なければなりません。接種する側からいうと手間のかかるワクチンです。そのため私のクリニックでは1日に2人しか予約枠が作れずにご迷惑をかけたかもしれません。
 今年は夏にRSウイルスの大流行がありました。かぜの一種ですが高熱が続き咳がひどくなり気管支炎や肺炎を引き起こしやすいウイルスです。特に乳児では症状が重篤になりやすく、1割から2割が入院になります。いつもは年末の寒い時期に流行するウイルスですが今年は夏に猛威をふるいました。保育園や幼稚園に通っている兄や姉から感染した乳児が多く診られました。入院まで至る児は親御さんの看病の努力もあり何とか最小限にできたかと思います。余談ですがRSウイルスの検査は外来では保険請求ができません。そのため小児科医は患者様に対しては無料で検査をしています。
 年末になってようやくインフルエンザ桿菌タイプb型のワクチン(Hibワクチン)、商品名アクトヒブが発売になりました。昨年末のこのブログでは製造元のフランスの製薬会社は日本向けに特別仕様のワクチンは作らないだろうと書きました。ところが日本仕様の工場まで作って生産を始めたそうです。しかし日本の過剰なまでの制度管理を求める基準のため生産量が極端に少なく、当初はワクチンの供給不足が心配されました。そのため日本の販売会社はクリニック1軒あたり3名までとする制約をしました。しかしその後は希望者全員にワクチンはいきわたるようになりました。私のクリニックでも希望者全員に1月から接種ができます。Hibによる髄膜炎や口頭蓋炎で重度の後遺症や亡くなった子どもたちの経験は私にもあります。決して稀な病気ではありません。海外では20年前から接種されているワクチンなのに、導入が遅れた日本ではその間に多くの子どもたちがHibのために亡くなったと思われます。それを思うと無念です。
 今日は2008年最後の「本日の独り言」です。みなさん良い年をお迎えください。

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2008年7月27日 (日)

アラジーポット

 日本経済新聞の日曜日版には「患者の目」という欄があります。先月から4週にわたってこの欄に、アラジーポット専務理事の栗山真理子さんの連載がありました。栗山さんはご自身がアトピー性皮膚炎と食物アレルギーのあった長男と、気管支喘息と食物アレルギーのあった次男の2人お子さんを育てられました。お子さんたちのアレルギーで悩まれた末に国立病院を紹介されました。そこでは医師の診療方針や治療法を盲目的に受け入れるのではなく、親が子どもの病気や薬について勉強することの大事さや、発作の予防法や対処法について知ることの大事さを教えられ、栗山さん自身「子どもが苦しまないためにできることがある」ことを知りとてもうれしかったと書かれています。
 さらに栗山さんはおっしゃいます。気管支喘息は治療法も変わり、健康な人と同じ生活ができる疾患となりました。それでも「発作が起きたら夜中でもおいで」という医師を「良い先生」と思って通い続ける人や、いまだに少しぐらいの発作は仕方がない、と考える人がいる。ぜひ「現在の治療」を知ってほしいと思う。
 ここで栗山さんがおっしゃいたいのは、夜中に診察してくれる先生が悪いというのではなく、現在の気管支喘息の治療は夜中に病院へ駆け込まないようにコントロールすることが当然で、そのような治療もできずに、安易に良い医者ぶって発作がおきたら夜中もおいでという医者は治療レベルが低く間違っていることを患者も知らなければならないということです。
 私も気管支喘息のお子さんたちを診ていますが、どうしても発作の予防がうまくいかず、夜中に急患センターに駆け込ませてしまうことがあります。これではまだまだ気管支喘息を診る医師としては失格かもしれません。栗山さんの言葉を戒めにしてさらに診療に努めたいと思います。
アラジーポット http://www.allergypot.net/

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2008年5月23日 (金)

手足口病

 夏になると手足口病が多く診られます。手のひら、足の裏、口の中に発疹と水疱ができることが特徴で、発熱を伴うこともあります。原因はウイルスですから抗生物質はききません。休んでいれば数日で治る風邪です。
 最近、この手足口病が中国で流行して死亡例もでています。中国では昨年は手足口病に8万人が罹り17人が死亡しました。今年は既に26人が死亡しています。中国でこのように手足口病が流行するのは、手洗いなどの基本的な衛生意識の低くさが一因と考えられています。中国政府は、手足口病を法定伝染病に指定して唯一の予防対策である衛生意識の向上を図っています。これまで中国についての報道はチベット問題から聖火リレー妨害、四川大地震に占められて、手足口病の報道はありません。しかしこれは幸いなことかもしれません。不安を煽る報道はないほうがありがたいです。
 手足口病の原因となるウイルスは一つではありません。主な病因ウイルスは、エンテロウイルスであるコクサッキ-A16、あるいはエンテロウイルス71 ですが、その他のエンテロウイルスの仲間も手足口病という症状をおこします。そのなかで、エンテロウイルス71というウイルスがまれに髄膜炎、脳炎をおこすことがあります。日本でも、約10年前に手足口病の経過中に死亡あるいは重篤な神経症状を合併した症例が複数の医療機関で経験されました。
 手足口病は基本的には軽症の病気です。重症合併症はきわめて稀なことであり、手足口病になったすべての患者さんに厳重な警戒を呼びかける必要はありません。しかし、初期の症状の変化には注意すべきで、とくに、元気がなく、頭痛・嘔吐、高熱を伴う、などが見られた場合は慎重に対処する必要があります。
 また手足口病は登校・登園禁止の病気ではありません。この件については、1993年に小児科学会が見解を発表しています。手足口病のウイルスは、喉からは1から2週間、便からは3から5週間排泄されます。発症後のウイルス排泄期間が長く、実質的に登校停止で感染を予防することは困難です。そのため発疹だけのこどもを登園禁止を強いる必要はありません。いまだに手足の発疹が出ている間は登園禁止にしている幼稚園・保育園がありますが考え直していただきたいと思います。ましてや登園許可証を要求するなど非現実的です。

手足口病についての詳しい情報は、国立感染症研究所 感染症情報センターのサイトをご覧ください。
手足口病とは?
http://idsc.nih.go.jp/disease/hfmd/about.html
東アジア地域で分離されるエンテロウイルス71型の分子疫学
http://idsc.nih.go.jp/iasr/25/295/dj2952.html

手足口病」の登校(園)停止に関する見解 (日本小児科学会雑誌 97:1875-1876,1993)
手足口病はエンテロウイルスの感染であり、コクサッキーウイルスA16型、エンテロウイルス71型による報告がほとんどである。コクサッキーウイルスA4、5、6、10型の報告もある。口腔内の粘膜疹(アフタ様)と手のひら、足の裏、膝、臀部の米粒大の水疱が特徴である。特記すぺきは中枢神経系合併症で、髄膜炎が主であるが、きわめてまれに弛緩性麻痺をおこす。ウイルスは口腔内、便中に排泄され、飛沫感染、経口感染をおこす。不顕性感染が多い。潜伏期間は3-6日でウイルスの排泄期間は長く、咽頭からl一2週間、便から3-5週間排泄される。本症の場合は、発症後のウイルス排泄期間が長く、実質的に登校停止で感染を予防することは困難である。また全体的にみて不顕性感染も多く症状も軽微のため、本症をもって他のエンテロウイルスと分けた特別の扱いは不要である。したがって本症の発疹期にある患児でも、他への感染のみを理由にして登校(園)を停止する積極的意味はないと考える。ただし、本症には合併も見られることがあり、個々の症例の最終判断は主治医が決めることになる。以上の考えに基づいて地域の学校医(または医師会)で見解を統一しておくことが望ましい。

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2008年1月28日 (月)

C型インフルエンザ

 インフルンザはA型の香港型とソ連型それにB型が毎年冬に流行します。ところでインフルエンザにはC型があります。今までC型インフルンザは罹っても軽症と言われてきました。しかし最近の研究では「発熱(38.5℃以上、2日間以上)、咳、鼻汁を主訴としていた。A型インフルエンザと症状が類似し、鑑別が難しい」ことがわかってきました。C型インフルエンザの診断は患者さんからウイルスを採取して分析するしかありません。A型、B型のような迅速診断キットはありません。一般外来での確定診断は難しいのが現状です。インフルエンザの流行する時期に、インフルエンザのように高熱と倦怠感があるのに、迅速検査を行っても陰性反応しかでない症例があります。もしかしたらC型インフルエンザを診ているのかもしれません。

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2008年1月 7日 (月)

あけましておめでとうございます

 この冬は昨年ほどの暖冬ではありませんが、昼間は寒さも和らいでいるようです。まだ冬休みで病気の子どもも少ないようです。

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2007年12月28日 (金)

この1年を振り返って

 暖冬のため2007年は静かに年があけました。ところが3月になるとインフルエンザが爆発的に流行し一冬分のインフルエンザを一月で診ることになりました。そのさなかに厚労省が突然、タミフルの10代での使用を事実上禁止する通達をだしました。科学的裏付けや統計的データもないままに、厚労省がマスコミ報道に押し切られたかたちの通達に思えました。現場は患者さんへの説明に混乱しました。この年末に厚労省の調査会が、全国で17歳以下の患者約約1万人の調査で、タミフルを服用しない患者群が、服用した患者群より約2倍の頻度で異常行動が起こるという統計調査の暫定的結果を発表しました。飛び降りなど生命にかかわる異常行動でも発生率に大きな差はありませんでしたが、まだ解析の余地があるということで因果関係の判定は先送りとなりました。この発表を報道したマスコミはわずかでした。
 春は首都圏の大学生を中心にはしかが流行しました。今の時代に先進国ではしかが流行するなど世界の常識では考えられないことです。カナダへ修学旅行に行った高校生がはしかを発病したため隔離され、同行の高校生にはしかワクチンが強制的に接種されてしまいました。カナダの保健当局ははしかの発生にバイオテロ並みの危機感を覚えたようです。日本国内ではパニック状態になり、はしかワクチンが不足し、定期接種しなければならない幼児にできなくなりました。ここ数年、春には、関東ではしかの発生が続いているので来春も同じようなことになるでしょう。しかも来春から中高生にもはしかワクチンの定期接種が始まります。またワクチン不足がおこると心配されます。
 秋には日本脳炎ワクチンが日本からなくなってしまいました。製薬会社は新型の日本脳炎ワクチンを製造するために旧型ワクチンの生産ラインを壊していました。ところが新型ワクチンの認可が下りなくなったため、旧型の在庫が底をつき、新型も供給できなくなってしまいました。新型ワクチン認可がでなかったのは、治験の結果、接種した部位の腫れが、旧型より強かったためでした。治験はやり直しとなりました。ワクチンの接種が受けれずに免疫をもたない子どもたちが数年、数十年先には、今春のはしかの大学生のように、日本脳炎の患者になってしまう不安が残ります。
 あまり知られていませんが、実は二種混合ワクチンも一時供給不足になりました。
 1月に、日本の小児科医が切実に望んでいたインフルエンザ桿菌タイプb型(Hib)ワクチンの認可がでました。世界に遅れること10年、ようやくこれで髄膜炎、口頭蓋炎などの生命に係る病気からこども達を救えると喜んだのもつかの間でした。Hibワクチンはフランスの製薬大手サノフィ・アベンティスから輸入するのですが、ワクチンに微量の沈殿物があるという理由で輸入がストップされています。サノフィは問題ないとしていますし、実際世界で使われているワクチンですが、厚労省はダメだといっているようです。サノフィも日本のためだけに製造行程を変えるつもりはないようです。そのため日本では当分の間使えそうもありません。その間にも年間数十人のこどもたちの命がHibにより奪われ、その何倍ものこどもたちがHibの後遺症に苦しむことになってしまうのに!
 1998年、世界保健機関(WHO)がHibワクチンの乳児への定期接種を推奨する声明を出したことから、Hibワクチンは現在では世界100カ国以上で使用されるようになり、世界的に見ればHib感染症はまれな疾患となっています。
 こどもの重症細菌感染症のほとんどはHibまたは肺炎球菌が原因です。世界のほとんどの国はこの二つのワクチンを接種して劇的な効果をあげています。日本だけが接種できずに毎年多くのこどもたちがこれらの菌により亡くなったり後遺症に苦しんだりしています。今年、私は肺炎球菌ワクチンの治験に係ることができました。肺炎球菌ワクチンの早期の認可に少しでも貢献できたかと思います。
 今年はタミフルとワクチンに振り回された1年でした。そして現場では患者さんや保護者への説明に多くの時間をさきました。日本の薬事行政は迅速に問題対応のできるシステム変わってほしいものです。来年には問題が少しでも解決することを切に願います。
 今日は2007年最後の「本日の独り言」です。みなさん良い年をお迎えください。

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2007年9月20日 (木)

こどもの片頭痛

 激しい頭痛で悩まされる片頭痛はこどもにもあります。日本頭痛学会の「慢性頭痛の診療ガイドライン」にも「小児の頭痛」の項目があり、そのなかに小児の片頭痛の記載があります。最近の論文からこどもの片頭痛の有病率は約7%、クリニックでは小児の頭痛患者のうち約50%は片頭痛であると書いてあります。ムカムカや嘔吐をともなう、ズキンズキンとする拍動性の頭痛で、さらには頭痛で日常の動作ができない、こような頭痛が5回以上あればこどもの片頭痛と診断します。
 ところでこどもには、突然の嘔吐を繰り返す、周期性嘔吐症という病気がありますが、これは将来、片頭痛へ移行するようです。また、お腹に特別に病気がないのに、突発的に強い腹痛をくりかえすのは、腹痛片頭痛として分類しています。
 9月18日に前原市の大塚神経内科の先生の頭痛の講演を聴きました。先生も4%位の頻度でこどもにも片頭痛があるといわれていました。こどもの片頭痛は両側性の締め付けるような痛みが多く、ほとんどの例で両親のどちらかに片頭痛があります。
 朝起こることが多く、不登校の半数以上に片頭痛があるといわれます。頭痛の訴えのこどもに、「頭は大丈夫」といってしまってはいけません。その子の訴えをよく聴き「片頭痛でないか」考えてみることが大事です。
 最近の研究で、片頭痛は脳血管の炎症の結果だとわかってきました。頭痛にたいして鎮痛剤で対処しては、痛みをわずかに抑えるだけで、血管の炎症は抑えることはできません。何回も血管の炎症が繰り返されると、血管がもろくなってきます。片頭痛の患者は脳血管障害(脳梗塞など)のリスクが高いという研究報告が次々と発表されています。特に前兆を伴う片頭痛はリスクが高くなります。片頭痛の治療には炎症物質を抑える、トリプタン製剤を使わなければいけません。このことは今後広く知ってもらう必要があります。しかしこどもにはトリプタン製剤の使用は認められていません。今後の問題です。

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2007年8月23日 (木)

「けが」をしたら

 「けが」をしたら、まず消毒、そして傷口をガーゼでおさえる。そしてこの処置を「付け替え」といって毎日繰りかえす。それが今までの「けが」への対処法でした。
 このやり方は間違いだとする考えがあります。そもそも「けが」をして皮膚が傷ついたら、皮膚自体に再生能力があるわけで、そこに消毒をすると再生しようとしている皮膚の組織を傷めるというものです。さらにガーゼで傷口をおさえるとガーゼが傷口の水分や皮膚の再生に必要な成分を吸収して傷口を乾燥させます。そのことがさらに皮膚の再生を阻害します。さらに「付け替え」をすると、ガーゼの網目が傷に食い込み,ガーゼを剥がす時に出血します。そのため治りかけた傷をさらに悪化させてしまいます。
 新しい「けが」の治療は、最初に傷口を水道水でしっかり洗います。日本の水道水には細菌はいませんから、医療用の無菌の生理食塩水を使う必要はありません。傷口に小さな砂が入っていたら、歯ブラシを使ってしっかり洗い落とします。砂はしっかり落としておかないと後で「しみ」のようになります。そして傷口にうるおいを与えて皮膚自体の再生能力を高めるために湿潤環境を提供して創治癒を促進する創傷被覆材をつかいます。
 この新しい考え方を裏付けるように、街のドラッグストアでも、けがのうるおい治療用にカットバンを作っているジョンソンアンドジョンソン社が「キズパワーパッド」を売り出しています。
 この「新しい創傷治療」「さらば消毒とガーゼ」を提唱しているのは夏井睦氏らです。詳しいことは夏井氏のホームページをご覧ください。http://www.wound-treatment.jp/

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2007年5月24日 (木)

はしか(麻疹)

 最近は麻疹をみなくなりました。若い小児科医は見たことがないでしょう。麻疹は過去の病気になりかけていたのに、この春から関東で流行しています。(実は昨年も関東では麻疹の発生はありましたが流行にはなりませんでした。)
 麻疹はどんな病気でしょうか。麻疹は感染力の強い病気です。患者さんの咳などで出た麻疹ウイルスは部屋の中に約2時間くらいは漂っています。だから患者さんがいなくなっても感染することがあります。これを空気感染といいますが、空気感染する病気は麻疹、水痘、結核などわずかです。
 麻疹はまず高い熱がでます。熱が出たばかりの時期の診断は困難です。口の中の粘膜に小さな白いブツブツ(コプリック斑)があれば麻疹を疑います。約3日たつと全身に赤いブツブツがでます。高い熱は約1週間続き、咳がひどくなり、からだが衰弱します。まれに息苦しくなる肺炎、意識がなくなる脳炎をおこして命を落とすことがあります。麻疹はウイルスの病気ですから抗生物質は効果がありません。麻疹ウイルスを殺す薬はありません。直接的な治療法がないのです。ただし前もって予防接種をしていれば95%の確率で麻疹にならずに済みます。麻疹は昔は「命定め」といわれ、こどもにとってはきつい病気でした。 麻疹にならないための唯一の方法は予防接種です。WHOは麻疹を地球上から撲滅しようと各国に働きかけています。欧米では90年頃から麻疹の予防接種を2回するようになり、その結果麻疹の発生は皆無になりました。2回接種が始まったきっかけは今回の日本と同じように80年代の終わりに米国の大学生の間で麻疹が流行したためでした。
 ワクチンの接種率が95%以上になると流行はなくなります。最近の幼児の接種率は95%を超えていますが、今回患者数が多かった高校大学生の年齢は90%を切っているいるようです。これはこの年齢がMMR(麻しん・風しん・おたふくかぜ混合)ワクチンのトラブルの時代に当たるためです。当時MMRワクチン接種後に髄膜炎の副反応が多く出たため、MMRワクチンが中止になり、麻しん単独のワクチン接種も控えた保護者がいらしたからです。
 ワクチンの接種率が落ちたため病気が流行したことは過去にもありました。百日咳ワクチンが70年代に副作用が問題になり75年に一時中止になりました。その直後から百日咳の患者数が急増し百日咳脳症で死亡する乳児も急増しました。81年に新三種混合ワクチンが再開された後から患者数もようやく減少しました。
 さてこれで考えさせられるのが日本脳炎ワクチン差し控えの件です。一昨年から日本脳炎ワクチンの差し控えが続いています。毎年100万人近い日本脳炎ワクチンの未接種者がでています。昨年は未接種の3歳児の日本脳炎が報告されました。新たな患者発生を防ぐためにも早急な対応が必要です。

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2007年4月15日 (日)

喘息と「鼻かぜウイルス」

 春先には喘息の患者さんが増えます。でもなぜ春先には喘息発作が多くなるのでしょうか。今までは季節の変わり目で気温差が大きいからと言われたりしていました。しかし最近の研究ではこの時期に多い「鼻かぜウイルス」が原因のひとつだということがわかってきました。熱はなくただ鼻汁だけを引き起こす「鼻かぜウイルス」は喘息のないヒトには鼻汁をださせるだけです。しかし喘息のあるヒト、いわゆる気道過敏性のあるヒトには、このウイルスが喘息発作を引き起こす誘因になると考えられ始めました。喘息は秋にも発作が多くなります。今までは喘息の原因のひとつであるダニが秋には死んで死骸が多くなるからだといわれてきました。しかしこれも秋の「鼻かぜウイルス」が誘因になると考えられ始めました。気道過敏性と、アレルギーの原因となるダニの糞や死骸の増加、それに「鼻かぜウイルスが」喘息発作の誘因というのが最近の研究結果です。そしてもうひとつ春先なら黄砂も忘れてはいけません。

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2007年4月 6日 (金)

インフルエンザウイルス

 ようやく収束に向かってきたインフルエンザですが、今年は流行の始まりが遅かったため、A香港型、Aソ連型、B型の3型がほぼ同時に流行し、2回3回とインフルエンザに罹った子どもたちもいました。インフルエンザで多くのヒトが辛い思いをしているなかで、タミフルと異常行動の偏ったマスコミ報道や厚生労働省の朝令暮改の声明は、子どもや保護者を不安にさせ医療現場を混乱させただけでした。
 私は年に数回、急患センターに出ますが、昨年まではインフルエンザは早く検査をしてタミフルを処方してほしいという保護者の方が多かったのですが、今年は「タミフルを飲みますかそれとも飲まずに経過をみますか」と聞いただけで「テレビであれだけ問題になっているのにまだタミフルを飲ませるつもりか」と憤慨される保護者もいました。幸い私のクリニックでは保護者のみなさんは冷静に話を聞いてくれました。そして不安をあおるだけのテレビ報道に疑問を持たれているかたも多かったようです。
 ヒトに感染するインフルエンザウイルスには特徴があって、気管支や肺などの気道の細胞にしか感染しません。なぜならインフルエンザウイルスが増殖するためにはヒトの気道の細胞がつくるたんぱく質分解酵素が不可欠だからです。しかし気道の細胞にしか感染しないのにどうして異常行動、熱性けいれん、脳炎などの神経症状がでるのでしょうか。インフルエンザ脳症では脳の腫れ、いわゆる脳浮腫が著明です。最近の研究でこの脳浮腫が脂肪代謝の異常と関係があり、インフルエンザによる高熱で代謝を司るある酵素の働きが極端に低下して、その結果として脳浮腫になるということが明らかになりました。そしてその熱で働きが低下する酵素の遺伝子変異も明らかになりました。この遺伝子変異をもつ子どもは脳症になりやすいわけです。最初からこの遺伝子変異を調べてわかっていれば予防もできるわけです。もちろんインフルエンザ脳症がこの酵素の異常だけで起こるわけではなく、他の代謝異常も関係していると考えられています。
 このことからもインフルエンザの症状悪化には個人の遺伝子レベルでの違いが関係していることが予想できます。ゆえに一律にインフルエンザは休んでいれば治るとは言ってはいけません。
 最後に、タミフルを飲んだ後の異常行動ばかりを調べても、タミフルとの因果関係は解明できないでしょう。もともとインフルエンザ自体が異常行動を引き起こすからです。タミフルを飲まないヒトの異常行動を併せて調べれば少しは因果関係を論じることができるでしょう。しかしそれは症状からみた推論の域を出ません。やはり最後は薬理学、生化学、免疫学そして遺伝子レベルでの基礎研究の結果を待つしかないと思います。それには異常行動をおこした患者さん自体の遺伝子のレベルまでの研究が必要になります。患者さんの研究に対する協力があって初めて真実は明らかになります。

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2007年2月14日 (水)

タミフルがインフルエンザを広める?

 インフルエンザが急に増えてきました。タミフルを内服すると2日以内に熱が下がります。しかしタミフルはインフルエンザウイルスを直接殺す薬ではありません。ウイルスが増えるのを抑えているだけです。熱が下がってもウイルスは体の中にたくさんいます。解熱後すぐに登園すると他の人にうつしてしまいます。熱が下がっても3日は家で安静にしてください。タミフルは個人の症状を軽くしてくれますが、解熱後治ったと勘違いしてすぐに登園、登校、出勤する人がいる限りインフルエンザはどんどん広まります。(2006年1月15日 の再掲)
  これについては、2006年2月1日に放送されたNHKの「ためしてガッテン」でも指摘されています。
http://www3.nhk.or.jp/gatten/archive/2006q1/20060201.html

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2007年2月 5日 (月)

インフルエンザと異常言動・行動

 インフルエンザが流行し始めました。昨年はタミフルを内服した後に異常行動がみられたという報告があり、タミフルの副作用ではないかと騒がれましたが、その後、日本と米国から因果関係は証明できないという報告がでました。
 今年1月の小児科学会雑誌に市立牧方市民病院小児科の原啓太先生らの「インフルエンザの経過中に異常言動・行動を呈した症例の検討」という論文が掲載されています。

http://www.jpeds.or.jp/journal/111-01.html#111010038

それによるとインフルエンザの患者の1.7%に熱せん妄に一致する異常言動・行動がみられたそうです。
異常言動・行動の内容は、
①異常な発言・奇声:虫がいないのに「虫がいる」と言ったりする。いわゆる幻視などです。
②異常な行動:何かを払いのける仕草などです。
③異常な情動:強い怯え、意味なく笑うなどです。
 これらの症状は、発熱後24時間以内に出現することが多く、高熱のときにおこりやすいので異常行動の前後に熱性けいれんが多くみられるそうです。また夜間睡眠中におこりやすいようです。
 異常言動・行動の持続時間は30分以内がほとんどで、その後は意識もはっきりしているのでインフルエンザ脳症とは違います。異常行動は夜間睡眠時に起こりやすいので、子どもを一人で寝かさないようにすることも重要と言っています。。
 この論文でも指摘されていますが、これらの異常言動・行動はタミフルの内服とは直接の関係はありません。せん妄をきたす薬物としては薬学的には抗コリン作用を有する薬物(抗うつ薬、抗精神薬)が有名です。身近な薬では市販の風邪薬の中にも含まれる抗ヒスタミン薬、いわゆる鼻水の薬も抗コリン作用があります。私は異常言動・行動を引き起こす可能性は、タミフルよりは抗ヒスタミン薬のほうがはるかに高いと考えています。

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2007年1月16日 (火)

胃腸炎

 冬は嘔吐下痢症が多い季節です。嘔吐下痢症はウイルス性胃腸炎です。ウイルスが原因ですから対症療法で経過をみます。ところで腹痛、下痢が主な症状である胃腸炎には細菌が原因のこともあります。細菌性胃腸炎は夏に多い病気です。焼肉、焼き鳥を食べた後に腹痛の強い下痢が始まったら、冬でも細菌性胃腸炎を疑います。細菌性の場合は抗生物質を内服したほうが早くよくなります。下痢の原因がウイルス性か細菌性かの見極めには十分な問診が必要です。

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2007年1月 4日 (木)

あけましておめでとうございます

今日から新年の診療を始めました。この冬は例年にない暖冬で、またインフルエンザの流行もなく、病気の子どもも少ないようです。クリニックには静かな年明けでした。

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2006年12月31日 (日)

テオドールの話題

 テオフィリン(テオドール等)は喘息の治療薬として20年以上の歴史があり、日本では80%以上の喘息患者に使用されています。最近は喘息予防の新しい作用機序も見つかり再評価されている薬です。しかし薬の血中濃度が高くなると気分が悪くなったり、頭痛がしたり、ひどい時はけいれんを引き起こすことが以前から指摘されていました。これを”テオフィリン関連けいれん”ということがあります。そのため特に小児に対して処方するときには細心の注意をして薬の量を決めています。最近、テオフィリンの使用中に神経学的な合併症の認められる症例が特に非専門施設を中心に報告されました。テオフィリンはけいれんを引き起こすから使用すべきでないとの意見がでて、そのことをマスコミが大きく報道しました。その結果こどもの喘息治療の現場で混乱がでてきました。そこで「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン」を作っている日本小児アレルギー学会が喘息の薬の適正使用ガイドライン及びその根拠を2006年3月に発表しました(これは厚生労働省の研究になります)。
 その中で2歳未満の乳幼児について、喘息を発症しないようにコントロールするための薬としてテオフィリンを投与する際に考慮することとして、
・テオフィリンは喘息発作が週1回以上ある患者に考慮する追加治療のひとつである(このレベルの主な治療はステロイド吸入です)
・ 6 カ月未満の児は原則として投与しない
・ 6カ月以上でも、てんかんや熱性けいれんなどのけいれん性疾患がある児には投与しない
・ けいれん性疾患の家族歴を有する児への投与は注意が必要である
・ 発熱出現時には、一時減量あるいは中止するのかをあらかじめ指導しておくことが望ましい
・ テオフィリンの血中濃度を上げる薬との併用に十分注意する
などです。
 テオフィリン関連けいれんは5歳以下に発症することが多いといわれています。2歳から5歳までは小児喘息の治療に精通した医師の下での投与が望ましいとされています。専門家も乳幼児へのテオフィリンの投与を禁止しているわけではありません。けいれん等の副反応がおきないように治療に精通した医師が投与することは問題ありません。
 テオフィリンは喘息の長期管理薬として有用です。吸入ステロイドでコントロールが困難なとき、ステロイドの増量よりはテオフィリンの併用が効果が高いとする研究もあります。テオフィリン服用中の小児のけいれん出現率は内服していない児におけるけいれんの出現率と差がないとする研究結果もあります。
 私は一部の意見で良薬を闇に葬ってはいけないと考えます。テオフィリン関連けいれんについては今後の研究結果を待って判断する必要があると思います。
 今日は2006年最後の「本日の独り言」です。みなさん良い年をお迎えください。

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2006年12月13日 (水)

ウイルス性胃腸炎

ノロウイルス感染による胃腸炎の患者数が例年になく早いペースで増加していると報道されています。いわゆる嘔吐下痢症で毎年冬に多くみられます。ウイルス性胃腸炎はノロウイルスだけでなくロタウイルス、アデノウイルス等でもおこります。小児ではロタウイルス胃腸炎が重篤になりがちでしたが、米国ではロタウイルスワクチンが実用化されています。ロタウイルスやアデノウイルスは一般クリニックでも便を用いた迅速検査で診断することができます。しかしノロウイルスは検査機関で調べないとわかりませんし検査に対する保険の適応はありません。厚生労働省が「ノロウイルスに関するQ&A」を公開しています。

http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/dl/040204-1.pdf

流行の状況は感染症情報センターのホームページをご覧ください。

http://idsc.nih.go.jp/idwr/pdf-j.html

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2006年12月 9日 (土)

インフルエンザワクチン

この冬はインフルエンザワクチンを接種する人が昨年に比べて少なくなっています。昨年は鳥インフルエンザがマスコミを騒がせていたので人々のインフルエンザへの関心が高かったようですが、今年はマスコミも静かです。また暖冬でインフルエンザなどまだ人々の意識に上らないのでしょう。メーカーの話では出荷数が昨年比7割強だそうです。私のクリニックでも接種数は昨年比9割弱です。今からでも間に合います。インフルエンザワクチンの接種を考えてください。

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2006年11月23日 (木)

嘔吐下痢症の治療

 冬の代表的な病気である、吐いて下痢をするウイルス性胃腸炎、いわゆる「嘔吐下痢症」が増えてきました。原因となるウイルスは複数ありますから何回でも罹ります。嘔吐や下痢の程度も様々です。一般的には夜中から朝まで数回吐いて、その後に下痢が数日続きます。嘔吐下痢になると最も心配されるのが脱水症です。吐いて下痢をするから体の水分が逃げてしまうように思われますが、実は失われているのは水だけではなく塩分(ナトリウムなどの電解質)も失われています。特に胃液にはナトリウムが多いので頻回の嘔吐は体の血液中のナトリウム濃度を下げて体調を大変悪くします。そこで嘔吐下痢のときは水分だけではなく電解質の補給が重要になります。
 日本では嘔吐下痢で元気がなくなると点滴を受けることがあります。しかし欧米では点滴は原則しません。電解質(特にナトリウム)とブドウ糖の経口補水液を飲んで治します。経口補水液はスポーツ飲料とは違います。主な違いは電解質濃度(ナトリウムの濃さ)です。スポーツ飲料はナトリウム濃度が低く糖分が多く砂糖水のようなもので脱水の治療には使えません。子どもの胃腸炎に電解質濃度の低いスポーツ飲料を飲ませすぎたせいで体の電解質バランスをこわしてしまい重症化した例がいくつもあります。死亡例もありました。
 嘔吐が続いているときには無理に飲ませてはいけません。無理に飲ませると更なる嘔吐を誘発するだけです。一度胃を休ませることが重要です。嘔吐が少し落ち着いたら経口補水液を少しづつの量を、くり返しゆっくり時間をかけて飲ませてください。手に入りやすい経口補水液は大塚製薬のOS-1です。しかしこれは「病者用食品」であるためコンビにやドラッグストアでは売っていません。調剤薬局で購入してください。

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2006年11月12日 (日)

病気と季節

 寒くなってきました。冬はウイルス性胃腸炎、いわゆる嘔吐下痢症の季節です。先々週から流行し始めました。ところが時を同じくして真夏の風邪である手足口病も一部地域で流行し始めました。昨年からインフルエンザが夏にもみられるようになり、どうも病気の季節感がなくなりつつあるようです。これは人の生活環境の変化か、ウイルスの適応の変化かわかりません。しかし東南アジアでは以前から真夏にもインフルエンザがありました。ウイルスの適応力が強いのでしょうか。

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2006年10月18日 (水)

気管支が弱い?

 RSウイルスが今年も流行し始めました。風邪ウイルスの一つですが、乳幼児、特に6ヵ月未満の赤ちゃんが罹ると高熱、咳が強くなり、ゼーゼー喘鳴がでて気管支炎や肺炎になります。入院になることもあります。インフルエンザのタミフルのような特効薬がないので治療に難渋するウイルスです。ところでRSウイルス感染や喘息で気管支炎になるとゼーゼーという呼吸音がする喘鳴がでてきます。風邪をひいてゼーゼーいうと保護者の方から「この子は気管支が弱いのですか」とよく聞かれます。私は「気管支が弱いのではなくウイルス感染やハウスダストに過敏に反応しやすくなっているのです。」と答えています。医学的には気管支の過敏性の亢進と言います。私は「弱い」という言葉は使いたくありません。弱いと言ったらその子が気管支に障害を持っているようにも聞こえるからです。

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2006年9月27日 (水)

喘息に注意

 今年は残暑がなく急に朝寒くなってきたためか喘息発作が多く診られます。子どもの喘息は多くがダニアレルギーが原因です。生きているダニではなくダニの死骸と糞がアレルギーの原因になります。夏に増えたダニは寒くなる秋にいっせいに死んでいきます。すると死骸が多くなり喘息発作が多くなります。また急な気温の変化や台風による気圧の低下、さらには運動会の練習疲れも一因になるでしょう。最初の喘息発作はある日突然やってきます。ゼーゼーいう咳をして息苦しそうなときはすぐに受診してください。

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