2017年8月30日 (水)

この夏は

 昨年の夏は手足口病が少なかったのですが、今年は例年並みに流行しました。そして手足口病の数週間後に指先から皮がむけたり、爪が剥がれる子どもさんたちをよく診ました。爪が剥がれることを爪甲脱落症といいます。爪甲脱落症の手足口病は2011年に初めて流行しました。
 手足口病の原因となるウイルスは、エンテロウイルスというグループですが、そのグループには、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルスなどがいます。それぞれのウイルスはさらに型分類があって番号が付けられています。
 爪甲脱落症を引き起こすのは、コクサッキーウイルスA6(CVA6)です。手足口病による爪甲脱落症の場合、特別な治療は必要ありません。たとえ爪が剥がれても約1か月で元に戻ります。
 夏はバーベキューで生焼けの肉を食べて細菌性腸炎になる子が増えますが、今年の夏は、ウイルス性胃腸炎を例年より多く診ました。
 そしてインフルエンザを夏の間、8月末まで診ました。例年、インフルエンザは大型連休が終わると診なくなりますが、今年は違いました。
 8月になると例年のようにRSウイルス感染が診られました。月末にはかなりの流行になりました。RSウイルス感染は乳児では肺炎になり入院加療か必要になることもあります。小児では最も注意が必要な感染症の一つです。
 ところで8月に防衛大学校の学生寮に入っていた10代の男子学生が髄膜炎菌による感染症で死亡したと報道がありました。髄膜炎菌に感染しても症状のない人もいますが、いったん発病すると症状は激烈で死に至ることもあります。10代の共同生活で感染するリスクが高いとも言われています。2011年には宮崎県小林市の高校寮内での髄膜炎菌集団感染事例が発生し1人が亡くなりました。私も以前このブログで取り上げたことがあります。髄膜炎菌に対してはワクチンがあります。任意接種、いわゆる自費のワクチンになります。最近二十歳前の青年で髄膜炎菌ワクチンの接種希望者がよくあります。主に警察学校の寮に入る人たちのようです。子どもたちにも髄膜炎菌ワクチンの接種が広まれば良いと思いますが、まだまだ一般の人々への認知度は低く、また価格が高いのがネックになっています。髄膜炎菌ワクチンは特定の医療機関でした接種できません。当院では接種できます。

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2016年8月 2日 (火)

今年の夏は

 この夏は、夏風邪の代表である手足口病とヘルパンギーナが全くと言っていいほど診られません。大流行した昨年の反動でしょうか。そのかわり例年になく胃腸炎、いわゆる嘔吐下痢が多く診られます。夏の終わりから秋の初めに多いRSウイルス感染は、今年は夏の初めから小規模な流行があります。今年の夏の感染症の流行は例年と異なるようです。

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2016年2月28日 (日)

ジカ熱

 ブラジルで患者が多く発生して話題になっているジカ熱は、蚊が媒介する病気です。日本では国内感染の事例はありませんが、海外で感染して国内発症する事例は2013年以降に3例の報告があります。フランス領ポリネシア・ボラボラ島からの帰国例が2例、タイ・サムイ島からの帰国例が1例です。
 2から12日の潜伏期間をへて、発熱、発疹、結膜炎、筋肉痛、関節痛、倦怠感、頭痛などの症状がでます。ジカ熱ウイルスは、日本脳炎、デング熱、ウエスト・ナイル、黄熱と同じフラビウイルス属のウイルスです。フラビウイルスの病気は蚊が媒介するので、基本的にはヒト・ヒト感染はありません。しかしジカ熱は性交渉によるヒト・ヒト感染の報告があります。
 問題になっているのは、ジカ熱と小頭症の関連です。ジカ熱の小規模な流行はこれまでもありました。その時は問題に上がっていませんでしたが、今回のブラジルの大流行がはじまってから、小頭症の新生児の出生が異常に増えてきました。また小頭症の胎児の母体の羊水からジカ熱ウイルスが検出されています。妊婦のジカ熱感染と小頭症の新生児の出生には因果関係が疑われています。
 またジカ熱と、筋肉を動かす運動神経が障害され、重要化すると呼吸不全をきたす、ギラン・バレー症候群との関連も示唆されています。
 ジカ熱が日本で流行する可能性は低いと思われますが、2014年のデング熱の流行を考えれば、可能性がないわけではありません。
 予防法は蚊に刺されない努力をすることになります。皮膚を露出しない。殺虫剤を散布する。虫よけスプレーを塗ることです。ところで日本の虫よけスプレーはDEET(虫よけ剤)濃度が最高でも12%ですが、海外では30%以上の虫よけスプレーが使用されています。それだけの濃い濃度のスプレーを使わないと海外の昆虫には効果がないようです。海外の軍隊も高濃度のスプレーを使っています。
 8月の五輪開催までに感染が終息されるよう願います。

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2014年11月30日 (日)

インフルエンザとビッグデータ

 最近、ビッグデータという言葉が聞かれますが、ビッグデータとは、量的には普通のパソコンや従来のデータベース管理のシステムでは処理できない膨大なデーターを言います。たとえばソーシャルメディアへの書き込みやプロフィール、ウェブ上で配信される音声や動画、ウェブサイトでの購入履歴、ネット上の検索サイトで生成されるアクセスログなども含まれます。最近の解析技術の発達でビッグデータからこれまで予想されなかった新たなパターンやルールを発見できるようになりました。
 11月2日にNHK総合テレビで「NHKスペシャル 医療ビッグデータ患者を救う大革命」が放送されました。その中で、ネットの検索サイトでの「インフルエンザ」の検索件数の増加が、その直後のインフルエンザの流行と一致するという話題がありました。
 今までは感染症の流行の実態は感染症サーベーランス事業でおこなわれており、福岡県では福岡県保健環境研究所が、感染症情報センターに登録された医療機関から、毎週特定の感染症の患者数の報告を受けて集計し、翌週には公表されます。しかしこれは流行の結果を表していて、しかも数日から1週間ほどの遅れがあります。
 検索サイトでの「インフルエンザ」の検索件数の増加は、リアルタイムでこれから先の流行の予測になります。まだまだ検討すべきこともあるでしょうが、医療分野でのビッグデータ実用化の時代になってきたようです。

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2009年6月10日 (水)

板付地区で発生した新型インフルエンザに対する行政の対応について

博多保健所は季節型だと押し通した。
 春日市の夜間救急も積極的におこなってる徳洲会病院では、今回の新型が判明する数日前からA型インフルエンザ陽性の児童を診ていました。しかし保健所からは季節性で対応するように言われていました。
 6月5日、博多区の小児科医が板付小学校の児童4名のインフルエンザA型陽性を診察しました。さらに1クラスで10名近くの欠席者がいることも知りました。4人分の疑似症患者の届け出をしたところ、博多保健所からは、季節型インフルエンザの対応で構わないと言われました。新型かどうかの精密検査はしてくれませんでした。また4人の患者の保護者も博多保健所の発熱相談センターに問い合わせをしましたが、保健所からは季節型インフルエンザと考えられるので発熱外来へ受診する必要はないと言われたようです。

今回の新型を確定診断したのは福岡市ではなく福岡県です。
 福岡市が管轄する博多保健所では精密検査をしてくれないことを聞き知っていた、春日市の小児科医は、6月5日に診察したA型インフルエンザ陽性の患者から採取したウイルス検体を、福岡県の管轄する筑紫保健所に提出しました。その結果、今回の第1例の新型と判明しました。

役人は市民より霞ヶ関をみている。
 福岡市は10日の会見で、精密検査をしなかったのは渡航歴がなかったためで、これは厚労省の指示に従っている。そのため今回の対応には問題はないと言い切りました。記者たちの質問に気色ばった顔で答える市幹部の頭の中では、市民を守るよりも厚労省の言うことに従うのが重要とでも考えているのでしょうか。見ていて不快でした。
 日本の国内感染例の第1号は渡航歴のない大阪の高校生だったのを忘れたのでしょうか。あの時も開業医が渡航歴はないが疑わしいから検査をしてくれと再三言ってやっと検査をして判明しました。
 今時季節性のA型インフルエンザはほとんどいません。これは医療の専門家である医師の常識です。現場の複数の医師が疑わしいと言っているのに、医療素人の自覚のない役人が、医療現場より厚労省のいうことしか聞かないからこんな結果になったのです。

過ちをみとめないところに今後の改善はない。
 福岡市は福岡県の情報公開が不十分だったのが今回の感染拡大につながったと言っています。しかし情報提供があっても、厚労省のマニュアルに当てはまらない今回の検査をしたとは思えません。
 詳細はここでは書けませんが、新型が判明した後の8日になっても、板付以外の博多区のA型陽性患者と、板付地区で新型患者と濃厚接触のある成人のA型陽性患者を診察した各々の小児科医が博多保健所に連絡しても、やはり季節型で対応するように言われました。
 福岡市は初動ミスを認めるべきです。過ちを認めないということは、今後も改善するつもりはないということです。なんと先のない行政でしょうか。悲しい限りです。

 現在、国立感染症研究所の疫学専門チームが福岡市に入って調査を開始しています。どのような調査結果を出すか注視していきたいと思います。

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2008年4月20日 (日)

多種類ウイルス同時検出キット

 呼吸器感染(症状としては咳、鼻汁、熱)をおこす代表的なウイルス12種類を同時に検出する検査キットができて、米国では使用が承認されたそうです。高熱が続いた時には、以前は、熱の高い風邪ですとか、根拠は曖昧なのに、インフルエンザですと言い切っていました。しかし現在はそういうあやふやな診断では患者さんは納得されません。またインフルエンザの治療薬のタミフルは診断キットで陽性の患者さんにしか処方が原則としてできません。日本では外来で迅速検査ができるのは大きく3種のウイルス(インフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス)だけですが、風邪症状や高熱をともなうウイルスは他にもあります。迅速検査の対象となるウイルスの数が増えて、しかも同時にできれば、診断もより確実になり、患者さんの負担も軽くなります。インフルエンザの検査のための綿棒を鼻に入れられるのは痛いのですから、それを何回もする必要がなくなり、痛い検査も1回ですむわけです。
12種のウイルスは、以下の通りです。
インフルエンザA型 H1 (ソ連型)
インフルエンザA型 H3 (香港型)
インフルエンザウイルスA型 (上記以外のA型)
インフルエンザB型
RSウイルスA型
RSウイルスB型
パラインフルエンザ1型
パラインフルエンザ2型
パラインフルエンザ3型
ライノウイルス
アデノウイルス
メタニューモウイルス
 ヨーロッパではこれより7種類多い、19種類のウイルスを同時検出できるキットが承認されたそうです。
これからはますます、「○○ウイルスによる熱です」とか「○○ウイルスによる咳です」という診断を求められるようになるでしょう。

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2006年7月17日 (月)

細菌性腸炎

夏はキャンプなどでバーベキューをする機会も多くなります。気温が高いので食べ物の鮮度と食中毒の原因菌の汚染には注意してください。特に肉類や卵、魚介類は充分に火を通してから食べるようにしてください。毎年夏になると、カンピロバクター、サルモネラ、腸炎ビブリオ、O-157などが原因の感染性胃腸炎が増えてきます。これら細菌性腸炎は腹痛、下痢がきついのが特徴です。多いのがカンピロバクター腸炎です。これは主に鶏肉にいるカンピロバクター菌が原因です。よくある例では不十分な調理をした焼き鳥を食べた後に腹痛、嘔吐、下痢、発熱がおこります。抗生物質を内服すると24時間以内に解熱し、48時間以内に菌が見られなくなります。強い下痢止めの薬は使いません。便とともに菌を体外に出すほうが結果的に早く腸炎がよくなります。整腸剤を内服します。楽しいバーベキューが台無しにならないようにしましょう。

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2006年6月27日 (火)

夏かぜと抗生物質

今年は5月が天候不順だったためか例年より風邪が多いようです。ヘルパンギーナ、手足口病などの夏風邪はのどの所見に特徴があり、その他にもヘルペス性口内炎、突発性発疹、体に発疹が出るエンテロウイルス、そして今流行のアデノウイルスなどものどを診ればある程度は病名が予測できます。これらの病気はいずれもウイルスが病原体です。子どもの風邪は90%はウイルスが病原体です。ウイルス性の病気には抗生物質はまったく効きません。抗生物質はウイルスとは異なる病原体の細菌にしか効果がありません。すなわち今の風邪にはまず抗生物質は効きませんし、私も必要のない抗生物質は処方しません。

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