2007年8月15日 (水)

予防接種の運用の変化

 「厚生労働省の検討会は10日、複数の疾病を予防するための混合ワクチンについて、対象疾病に罹患した経験がある人も定期接種を受けられるようにすることを決め、省令を改正する。」という記事が共同通信から流れました。今までは例えば、百日咳に罹ったことがあれば三種混合(DPT)ワクチン(ジフテリア、百日ぜき、破傷風)は接種できませんでした。以前は百日咳に罹った子どもには二種混合(DT)ワクチン(ジフテリア、破傷風)を接種できたのですが、数年前に省令が改正され三種混合ワクチンの1期から二種混合ワクチンが削除されてしまいました。
 医学的には罹ったことのある病気のワクチンを接種しても問題はおこりません。さらに免疫が高まります。しかし今までの症例では禁じていました。今回の改正で百日咳に罹った子は三種混合ができなかったという現場の問題がひとつ解決されました。
 予防接種のあつかいについては、4~5年まえから厚労省の見解がよくかわりました。
 まずは異なる種類の予防接種の接種間隔の問題でした。例えば三種混合などの不活化ワクチンを接種した後は1週間あけるというのが決まりです。以前は水曜日に接種したら次の週の水曜日に接種していました。しかしこれに厚労省がクレームを付けました。法律的に1週間とは次の週の木曜日であると言い出したのです。そして次の週の同じ曜日の接種を禁じました。医学的には1週間あける必要はありません。間隔の基準は役所の決まりごとです。一般人の感覚では1週間は次の週の同じ曜日です。これを役所に認めてもらうのに数年かかりました。現在は省令で6日空けるとなりました。これなら次の週の同じ曜日に接種できます。現場の指導も元のようにやりやすくなりました。
 次の問題が三種混合の1期の接種間隔でした。1期の初回接種は3回しますが、以前はこの間隔に制限は設けていませんでした。極端にいえば1年あいても違反ではありません。しかしこれを8週間以内に行わないと公費の接種としないと厚労省が言い出しました。冬などは風邪をひいたりして接種間隔が8週間以上あくこともあります。全国の自治体の中にはこの省令を実直に守って8週間から外れたら公費の接種と認めなかったところもあるようです。しかし自治体の中にはこの省令があまりにも現場を無視しているとして眼をつぶったところもあるでしょう。これも後で病気等のやむを得ない場合は8週間以上も認めるとして、運用の実質は元に戻りました。
 なぜ現場を混乱させるだけの省令をここ数年出し続けたのか。そしてそれが最近になって現場の運用に支障のでにくい、元の形に近いものに戻ったのか。これは私の推測ですが、厚労省の予防接種の担当官が代わったからでしょう。現場を無視して法律の解釈ばかりにこだわる人からそうでない人に代わったのかもしれません。「木を見て森を見ず」が上にいると現場は困ります。

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2006年12月27日 (水)

細菌性髄膜炎、日本もワクチン承認へ

 24日の朝日新聞に「厚生労働省は、重症率が高い乳幼児の病気、細菌性髄膜炎の主原因であるインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン(商品名アクトヒブ)を承認する方針を固めた。26日の専門家による会議をへて、1月下旬にも承認される見通し。」という記事が載りました。http://www.asahi.com/health/news/TKY200612230290.html
 多くの小児科医や関係者が待ち望んでいたHibワクチンがようやく承認されそうです。
 今年の4月29日のブログでも紹介しましたが、読売新聞にHibワクチンの記事がありました。
読売新聞の記事のアドレスは以下の通りです。
髄膜炎ワクチン(上)先進国で唯一 未承認
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20060417ik01.htm
髄膜炎ワクチン(中)抗生物質が効かない菌も
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20060418ik01.htm
髄膜炎ワクチン(下)承認へ迅速審査が急務
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20060419ik01.htm
髄膜炎から乳幼児守れ、ワクチン導入を学会訴え
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20060325ik03.htm
 5歳未満の乳幼児1万人に1人程度がHibによる細菌性髄膜炎にかかると推定され、このうち5%が死亡し、25%に聴覚障害、てんかんなどの後遺症が残るといわれています。病気の初期の段階での診断と抗生物質による予防はほぼ不可能です。そのため欧米では早くからHiBワクチンが導入され効果を上げてきました。米国ではワクチン導入後にはHibによる髄膜炎は皆無になりました。Hibは髄膜炎だけではなく重篤な肺炎や突然の呼吸停止を引き起こす喉頭炎など様々なそして生死にかかわる病気の原因菌です。
 Hibワクチンは世界で100カ国以上で接種されており、98年には 世界保健機関(WHO)が乳児への定期接種を推奨する声明を出しましたが、日本だけが未承認でした。来年からようやく日本の子ども達にも接種の道がひらけました。
 しかし当面は、公費補助ではなく任意(自費)による接種となります。計4回の接種が必要で、費用が約3万円程度かかります。また1歳までに最初の3回を済ませるので、三種混合やポリオの接種年齢と重なりワクチン接種に出向く回数が増えてしまいます(海外では三種混合+Hib+不活化ポリオ+B型肝炎の6種類をまとめたワクチンを1回で接種する方法を取っている国もあります)。このためすぐには普及しないでしょうが、Hibワクチンの必要性を保護者の方々へ話して接種と認識を広め、早く定期接種になるようにしたいものです。

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2006年10月 9日 (月)

法と科学の狭間で

 9月に熊本で3歳の日本脳炎患者が報告されました。救命はできましたが後遺症は避けられないようです(日本脳炎に罹ると3分の1は死亡し、3分の1は後遺症が残ります)。ワクチンは未接種でした。これが昨年からのワクチンを積極的に勧めない厚労省の方針の結果とは言いませんが、1980年代に韓国では日本脳炎ワクチン接種を緩めた結果、患者発生が約10倍に急増したことがありました。
 厚労省は8月31日付けの事務連絡で「日本脳炎ワクチンの説明書」を発表しました。
 http://www.med.or.jp/kansen/18ch3_104.pdf
その中に記された内容は
「70万から200万回に1回程度ADEM(急性散在性脳脊髄炎)が発生すると考えられています。なお、平成元年度から平成17年度までに日本脳炎ワクチンを接種した後に死亡された方の中で、ワクチンとの因果関係があるとして健康被害救済制度の認定を受けた方は4名です。」
「予防接種後にみられたADEMの患者さんで、予防接種法に基づく健康被害救済制度の認定を受けた方は、平成元年度から平成17年5月までで14名です。日本脳炎ワクチンの積極的勧奨差し控えについて平成17年5月31日、厚生労働省は都道府県に対し、定期予防接種として日本脳炎ワクチンの積極的な勧奨を差し控えるよう勧告しました。現行のワクチンの使用と重症のADEMとの因果関係があるとの判断が下されたことにより、より慎重を期するためこのような措置がとられました。」
以上の文章を読めば多くの保護者は、日本脳炎ワクチンは怖いワクチンで接種すればADEMという病気になったり死んだりするかもしれないと不安を覚えるでしょう。これでは国は接種をするなといっているようなものです。
 しかしWHO(世界保健機構)のワクチン安全性に関する世界助言委員会(the Global Advisory Committee on Vaccine Safety)は以下の報告を出しています。
 http://www.who.int/wer/2006/wer8134_35/en/index.html
「マウス脳ワクチン(従来の日本での日本脳炎ワクチン)接種後のADEMに関しては、5万-100万接種で1例の報告があるが確定的な研究報告はない。日本ではADEMの事例報告以後接種見合わせをしているが、ワクチン安全性に関する世界助言委員会の最近の結論は、「マウス脳ワクチン接種でADEM発症リスクが増加する明確な証拠は得られておらず従来のマウス脳ワクチン接種奨励の勧告を変更する理由はない」
 ここで注意しておかなければならないのは、WHOの報告は科学的な検証によるもので、厚労省の説明は法律的、行政的な考え方によるということです。厚労省がいうADEMとワクチンの因果関係には科学的根拠はありません。予防接種をした後で問題があった事例の健康被害救済を判定する委員会が決めたものです。行政的には救済をすることは意味があります。また過去の予防接種禍の裁判で国が敗訴したことからそうしなければならなくなりました。予防接種を受けた後で問題がおこればそれは予防接種による、「疑わしきは救済する」原則を裁判所が用いたためです。
 科学的な論証とは別の次元で、日本には予防接種に反対する人々もいます、また国には行政としての立場もあります。大人が自分の立場で考えを言うのはかまいませんが、病気に罹って苦しむのは子どもたちです。大切なのは子どもたちを病気から守る責任を大人が自覚することだと私は思います。

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2006年8月11日 (金)

麻しん風しん混合ワクチン2期

来春に小学校入学予定の子どもは麻しん風しん混合ワクチンの2期を接種します。これは今年から始まったことで、就学1年前以内に接種します。夏休みに入ってから接種される方が増えてきました。そこでよく質問されるのが、「今までは麻しんと風しんのワクチンは1回でよかったのにどうして今年から2回接種するようになったのですか。」という内容です。これに対しては、欧米では以前から2回接種が行われており、日本もようやく欧米なみになったのです。これが世界の標準的なやりかたです。とお答えしています。一般の保護者にはいきなり2回接種ですといわれても理由が分からないのは当然のことと思います。

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2006年7月28日 (金)

日本脳炎ワクチン 1

厚労省が日本脳炎ワクチンの接種を積極的に勧めなくなって1年が過ぎました。しかし事態の進展はありません。期待された新しいタイプのワクチンもまだ3から5年は実用化できなくなりました。そこで日本小児科学会は「このままでよいのか」として厚労省に質問書・要望書を出しました。詳しくは
http://www.jpeds.or.jp/saisin.html#102

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2006年5月22日 (月)

パッチでワクチン接種

5月22日の日本経済新聞に国立感染症研究所が皮膚にパッチを貼ってワクチンを接種する方法を開発しているという記事がありました。破傷風ワクチンの成分を含んだパッチをマウスの皮膚に長時間貼ったところ「抗体」ができて、そのマウスに破傷風の毒素を注射しても発症しなかったそうです。人間への応用はまだです。人の皮膚は厚く吸収が難しく課題も多いようです。しかし将来はワクチンは注射ではなくホクナリンテープのようなシールやパッチを皮膚に貼るだけでよいという時代が来るのでしょうか。

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