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2018年6月29日 (金)

薬剤耐性(AMR)対策について

 新聞で以下のような記事をよく見るようになりました。
  風邪に抗生物質は効きません。
  病院に受診して医師が抗生物質を処方しようとしたら患者は抗生物質が本当に必要か確認しましょう。
  患者から抗生物質の処方を安易に求めないようにしましょう。
 また今年4月の診療報酬改定では医師が風邪などのウイルス感染に抗生物質を処方しない場合には加算されるようになりました。医師や患者も抗生物質の安易な処方をしない風潮をつくろうとしているようです。そのことは正しいことなのですがなぜ今なのでしょうか。単に抗生物質の処方を減らして医療費を減らすという思惑だけではなく、どうも世界的な背景があるようです。
 細菌などが抗生物質などの抗菌薬に耐性を持つことを薬剤耐性(AMR Antimicrobial resistance)といいます。抗菌剤を乱用すると薬剤耐性菌が増えてきます。2013年にCDC(アメリカ疾病管理予防センター)とWHO(世界保健機関)が薬剤耐性菌を問題視しました。米国で抗菌薬の切り札とされるカルバペネム系抗生物質に耐性を持つ腸内細菌科の細菌(Carbapenem-Resistant Enterobacteriaceae、CRE)による感染症が増えており、早急な対応が必要であるとしたからです。
 薬剤耐性に起因する死亡者数は2013年には世界で年間70万人あったといわれています。薬剤耐性に何も対策をとらない場合は2050年には1000万人が死亡し、癌による死亡者数を上回ると予想されています。2050年には3人に1人が耐性菌で死ぬと WHOが言っています。製薬会社による新規の抗生剤の開発が減少していることも薬剤耐性菌が増加する原因の一つです。
 日本は抗生剤の処方量は意外なことに決して多くはありませんが、ペニシリン系抗生剤の処方が少なく、セファロスポリン系とマクロライド系が多いのが特徴です。ヨーロッパではペニシリン系が多いようです。耐性菌で問題になるのはセファロスポリン系とマクロライド系です。
 薬剤耐性の対策の2020年までの目標として以下のことが掲げられています。
  経口のセファロスポリン、マクロライド、フルオロキノリンを2013年の50%減らす。
  1日当たりの静注の抗生剤を20%減らす。
  抗生剤はペニシリン系のAMPCやCVA/AMPCが推奨される。
  できるだけ高容量、短期間で使う。
 厚生労働省のホームページの「薬剤耐性(AMR)対策について」をみると以下のようにあります。
抗菌薬の不適切な使用を背景として、薬剤耐性菌が世界的に増加する一方、新たな抗菌薬の開発は減少傾向にあり、国際社会でも大きな課題となっています。
2015 年5月の世界保健総会では、薬剤耐性(AMR)に関するグローバル・アクション・プランが採択され、加盟各国は2年以内に薬剤耐性に関する国家行動計画を策定することを求められました。
これを受け、厚生労働省において、薬剤耐性対策に関する包括的な取組について議論するとともに、「 国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議 」のもとに、「 薬剤耐性に関する検討調整会議 」を設置、関係省庁とも議論及び調整を行い、2016年4月5日、同関係閣僚会議において、我が国として初めてのアクションプランが決定されました。
今後、「適切な薬剤」を 「必要な場合に限り」、 「適切な量と期間」使用することを徹底するための国民運動を展開するなど、 本アクションプランに基づき関係省庁と連携し、 効果的な対策を推進していきます。
 初診時は抗生剤は原則処方しない。抗生剤は経過が思わしくない場合のみ処方するとした英国では、抗生剤の処方量が減りました。
 最近の薬剤耐性対策の急進展には2015 年5月の世界保健総会で採択された、薬剤耐性(AMR)に関するグローバル・アクション・プランが背景にあるようです。薬剤耐性菌と戦うために抗生剤の適正使用が今後強く求められます。

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