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2016年9月29日 (木)

健康格差

 世界は行き過ぎた資本主義の悪影響でどこの国も格差社会が深刻な問題になっています。富める人と貧しい人では食生活、運動、社会とのかかわりに差が生じてきます。その結果、経済的な格差が健康にも影響を及ぼしてしまう、健康格差の問題が生まれてきています。
 9月19日のNHKスペシャルで「♯健康格差 あなたに忍び寄る危機」が放映されました。その中でWHOは、健康格差が世界的にも広がっている。健康格差を生み出す要因は、所得、雇用形態、地域、家族構成と言っています。
 日本の調査でも、65歳以上28,162人を4年間追跡で、低所得の人の死亡率は高所得の人のおよそ3倍あるという結果が出ています。また低所得者は高所得者に比べて、疾患の相対的リスクが、精神疾患 3.4倍 肥満 1.53倍 脳卒中 1.5倍 骨粗しょう症 1.43倍あるそうです。
 番組では若者の2型糖尿病が増えている話がありました。糖尿病の合併症の一つである網膜症の割合が非正規雇用が正社員の1.5倍あるそうです。非正規雇用の健康診断の受けづらさ、雇用の不安定さもありますが、限られたお金の中で生活すると食費を削ったり 炭水化物中心で カルシウムとかビタミンが足りなくなったりすることが原因の一つです。所得が200万円未満の人は600万円以上人に比べて野菜摂取量が2割減るそうです。
 所得格差よる健康格差で特に低所得の人が病気や介護になる割合が増えてきます。番組ではそれが「自己責任」か「社会の問題」かという議論になっていました。非正規、高齢者独居で自炊ができず、コンビニ弁当になってきたときに生活が崩れていきます。これは本人だけの責任なのでしょうか。命の格差は自己責任だけでは解決できないほど社会に根差している問題になってきています。
 作家の平野啓一郎氏が言った言葉は示唆に富んでいました。
「自分の健康の意識が高くても生活改善したいと思っていても 本当にくたびれて健康に時間を使いたいのに使えない状況まで追い込まれて そのなかでいろんな病気を発症していることに対して、それは自業自得だから社会が見捨てるという考えなのか、やはりそれは社会的な問題として改善する余地があると考えるのか。」
 千葉大学の近藤克則教授は、健康格差が誤解されていると警鐘を鳴らしています。
「一部の貧しい人とか、一部の弱い人たちの問題であって「われわれには関係なくてよかった」ととらえる人がよくいる。しかし社会保障関係の費用が将来 時限爆弾となる。今は気づいている人はいないが、将来、火を噴くのではないか危惧している。」
 所得が低くて健康に関心をもつ余裕がない人々にも改善してもらうためには、教育的な指導や呼びかけではうまくいきません。
 イギリスでは国民の塩分摂取料を減らすために、メーカーの協力による「ゆっくり塩分を下げよう」という政策で、最初の年は2%の減塩から初めて7年かけて20%減塩をおこないました。ゆっくり減塩すれば消費者は味の変化に気づきません。その結果、脳卒中(40%減)と虚血性心疾患(42%減)による死亡率が2003年から2011年の8年間に4割減りました。その結果、年間2000億円の医療費が削減できたそうです。
 東京の足立区は区民の平均年収が335万円と23区の中で最下位です(港区は1023万円)。そして糖尿病の治療件数が23区の中で最も多く、健康寿命が23区の平均より2歳短いそうです。足立区もいろいろと取り組みましたが、うまくいきませんでした。そこで健康への意識が低くてもいつのまにか健康になれる作戦をはじめました。それが糖尿病をはじめとした生活習慣病を予防するために、「野菜から食べる」「野菜を3食しっかり食べる」「野菜をよく噛んで食べる」取り組み、あだち ベジタベライフ -そうだ、野菜を食べよう- です。飲食店へ協力をお願いして、お通しにまず野菜をだす。肉に櫛と野菜の櫛を一緒に頼んだ客には必ず野菜を先にだすなど、知らない間に野菜から食べる仕掛けなど地道に始めました。その結果、重い糖尿病患者の割合を減らすことができました。
 番組では終盤に高齢者における健康格差の話になり、要介護の割合は低所得の人に2倍多く、その原因は外に出ないためで、所得が低いほど家に閉じこもり、身体機能低下し気力も低下するといわれています。どういうふうに身体機能 認知機能を保つべきかが課題となりますが、一番有効なのは社会参加で、社会とつながっていること、社会参加と交流は健康を保つ要因として注目されています。
 地域の人々が信頼しあい困ったときには助け合う関係が築かれていること、人のつながりが生む力をソーシャルキャピタルといいます。ソーシャルキャピタルが高い地域では健康状態が良いと感じる割合が多く、人と接しているとなにげない形で体を動かし、食事などを気遣ってもらえ、近所の医療機関の情報が得られます。つながりの力が健康格差縮小のカギとなるといっています。
 所得格差が健康格差を生んでいる現実があります。これを自己責任とするのではなく、社会の問題としてとらえ、単なる呼びかけ教育や、押し付けではなく、健康の意識の低い人も知らず知らずのうちに受け入れる政策と、社会とのつながりの再構築で解決していく努力が必要です。
 
 9月19日、長谷川豊氏が自身のブログで、http://blog.livedoor.jp/hasegawa_yutaka/archives/48479701.html
「医者の言うことを何年も無視し続けて自業自得で人工透析になった患者の費用まで全額国負担でなければいけないのか?今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!」
と言ったところ大きな非難があがり、氏は自身が出演しているすべてのメディアの番組から降板してしまいました。長谷川豊氏に限らず、国会議員の中にも自己責任論者はいますし、医師の中にもいます。
 私は自己責任は弱者のいじめにつながるのではと思います。しかもそのような声が表に出てくることが多くなったようです。最近の障がい者や寝たきり高齢者への事件もその表れのようにみえます。社会の中で共に生きていくということはどういうことなのか、皆がもう一度考えてほしいと思います。

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