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2015年9月30日 (水)

「子供の風邪に薬はいらない」?

 9月15日の日本経済新聞の1面に「子供の風邪に薬はいらない」という見出しが載りました。医出づる国「削りしろ」を探せという記事の見出しです。確かに、子どもの風邪といわれる病気の大半には特効薬はありません。そのため小児科医の間でも、風邪には抗生物質をはじめとして、不必要と思われる薬はできるだけ処方しないという考えの医師が多くいます。しかしこの記事の見出しには妙な違和感があります。
 インフルエンザだって薬を使わなくても、多くは自分の免疫力でなおります。でも辛い症状は1週間から10日ほど続きます。風邪に薬は必要ないと言っても、熱や咳や鼻水がつらいことはあるわけです。これらの症状を和らげてほしいと患者さんは希望しています。一律に薬はいらないとはならないでしょう。この記事に出ている小児科医も、不必要な抗生物資の処方に警鐘を鳴らしていますが、他の薬については言及していません。この小児科は、子供の風邪に薬はいらないとは、日経の記者には本当は言っていないでしょう。解熱剤や咳の薬などはきっと処方されていると思います。
 この記事にはもうひとつ、「薬剤費年8兆円」という見出しも付いています。確かに医療保険を使った薬剤費は膨大です。しかしその原因は子どもの風邪に処方する薬代のせいでしょうか。この記事の後半三分の二は、ジェネリック医薬品、医療機関のはしご受診、大量の飲み残し薬、ムダな医療の対策などが取り上げられています。中見出しには「子供の風邪に薬はいらない」ではなく、後半の記事の内容のタイトルをつけるべきでした。
 平成25年度の国民医療費は40兆610億円、そのうち薬局調剤医療費は7兆1119億円に達しまた。しかし15歳未満の子どもの医療費とそのうちの6.1%、薬は6.4%程度です。医療費や薬剤費の削減のやり玉に子供の風邪があげられているようで、その意味でも違和感のある記事です。政府は自治体が行っている乳幼児や学童への医療費助成制度に対して補助金を減額すると言っています。また接種費用が実質無料になる定期予防接種の数は開発途上国を含めても日本はまだ劣っているというのにです。
 一体、この記事は何を言いたいのでしょうか。記事を提供した小児科医の意向とは別に、人目を惹くタイトルにして、比較的真面目な日本人の性格を利用して、身近なことから薬代を減らすのは意味あることだと、潜在意識の中に刷り込もうとする何処かの意図が伺えないでしょうか。
 私はまた、「子供」という表記が個人的には好きではありません。「こども」「子ども」「子供」文部科学省では2013年に子供と統一したようですが、「子供」は子どもが大人のお供のようで私は好きではありません。「風邪」という言葉もどうでしょうか。風邪くらいで気安く病院を受診しないようにという言葉のコントロールがみえるようなのは私だけでしょうか。

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