« 2015年7月 | トップページ | 2015年9月 »

2015年8月31日 (月)

変わるインフルエンザワクチン

 今年度からインフルエンザワクチンの内容が少し変わります。昨年度までは、1つの注射の中に3つのワクチンが入っている3価ワクチンでした。A型が香港型とカリフォルニア型(2009年に流行した新型インフルエンザ)の2種類、B型が1種類でした。今年度からB型が2種類入り、4価ワクチンになりました。B型インフルエンザには山形系とビクトリア系という二つの系統があります。昨年度まではどちらか1つをワクチンの中に入れてきましたが、最近はB型インフルエンザは2つの系統の混合流行が続いていることと、WHOが2013年に4価ワクチンを推奨したこと、米国が一昨年度から4価ワクチンとなり、世界の動向が4価ワクチンへ移行しているため、日本でも4価ワクチンになりました。
 昨年度までは4価にできない理由が別にありました。日本では生物学的製剤基準でワクチンに入れることができるウイルス総蛋白量の上限値が規定されていたのですが、3価ワクチンですでにこのウイルス総蛋白量がいっぱいでした。そこで厚労省は4価ワクチンを導入するために基準値を上方修正したため、日本でも4価ワクチンができることになりました。今までは、蛋白量が多いと副反応が出やすくなるから規制があったと理解していましたが、基準値を上げるに当たって安全性の証明の調査をどれだけしたのかよくわかりません。
 そもそもB型ワクチンは効果が低いワクチンです。A型は鳥と豚と人に感染する人畜共通感染です。そのためワクチン製造過程でを鶏卵を使って培養しても効率よく培養ができます。しかしB型はヒトにしか感染しません。そのため鶏卵の培養の効率が低くなります。しかもB型の流行は毎年インフルエンザシーズンの最後になるので、ワクチンの効果が時間的に低くなります。このような特性のB型を2価にしてもどれほど効果があるのかと思われます。
 また4価ワクチンになって、ワクチンの卸値が1.5倍に上がりました。これには全国の医療関係者が驚いています。日本にはインフルエンザワクチンを製造する会社が4社ありますが、4社がほぼ同じ価格を提示してきました。独占禁止法に抵触するところはないのか疑問です。その結果、診療所での接種料金を値上げせざるをえなくなりました、不景気が深刻になるばかりの世相ですので、接種料金を1.5倍にはできません。私の診療所では約1.2倍の料金にしました。
 さて、8月30日の毎日新聞に「インフルワクチン:乳児・中学生に予防効果なし 慶大チーム調査」という見出しの記事が出ました。これはたいへん誤解を招く見出しです。インフルエンザワクチンは発症を予防できるものではありません。重症化を抑制するワクチンです。ワクチンでは血中の免疫を高めますが、ウイルスは鼻から入ってくるので、鼻の粘膜の免疫を高めないと予防はできません。今のインフルエンザワクチンではこれはできません。またインフルエンザ感染の有無、発熱で受診するしない、ワクチン接種歴の有無の組み合わせは8通りあります。この論文では、発熱して受診して、インフルエンザ感染を証明できた患者の中で、ワクチン接種歴の有無を調べて比較研究しています。ワクチンを接種しても発熱しない人は受診しませんが、この患者グループは調査されません。現実問題として、最初の8通りの組み合わせすべてを調査することはできないので、ワクチンの効果の研究では、有効性を統計学的に評価するには無理があります。この論文は1歳から12歳までは一定の発症防止効果がみられ、A型では全ての年齢で重症化を防ぐ効果がみられたと読むべきと思います。
 インフルエンザワクチンは鼻の免疫力を高める、経鼻噴霧式のワクチンや、鶏卵で培養して作るのではなく、細胞培養で一度に大量生産するワクチンの開発が進んでいます。しかしいずれのタイプも欧米が進んでいて日本は遅れているようです。

| | コメント (0)

« 2015年7月 | トップページ | 2015年9月 »