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2013年11月30日 (土)

やなせたかしさんとアンパンマン

11月8日のNHKラジオ第一放送の「私も一言!夕方ニュース」で「漫画家・やなせたかしさん “アンパンマン”に込めた思い」がありました。
アンパンマンの絵本を出版しているフレーベル館・アンパンマン室長の天野誠氏さんと、やなせさんが編集長をしていた月刊誌「詩とメルヘン」で働いていたノンフィクション作家の梯久美子さんのお話でした。

やなせさんはいろいろな仕事をされましたが、昭和36年に作詞した「手のひらを太陽に」は広く親しまれました。
同じくやなせさんが作詞した、アンパンマンの主題歌「アンパンマンのマーチ」は、2011年東日本大震災の後、東北の被災地でラジオで繰り返しリクエストされ、その魅力が見直されました。
「アンパンマンマーチ」の歌詞では、

 そうだ!嬉しいんだ生きる喜び
 たとえ胸の傷が痛んでも

誰にでも傷はある、それでも生きることは嬉しんだ、喜びなんだと肯定しています。やなせさんが考えになっていた哲学がストレートに表れているようです。この歌詞が被災された多くの人々の心に響いたのでしょう。

「手のひらを太陽に」では、一番の歌詞は

 ぼくらはみんな生きている
 生きているからかなしんだ

いきなり悲しんだで、二番になって

 生きているから うれしいんだ

となっています。これはなぜなのか。悲喜交々というますが、悲しいことがあるから喜びもあるんだということでしょう。

アンパンマンは正義の味方ですが、悪者を殺すわけではなく、自分顔を食べさせることでひもじい人を助けるのがまず第一だと思っています。この正義の考え方には、やなせさんの戦争体験が影響していると言われています。

やなせたかしさんの言葉がありました。

 戦争というのは絶対にやっちゃいけないということは骨身にしみて思いました
 戦争とはいつもいろいろと理屈をつける
 正義のためにやるんだ
 向こうが非常に悪いから、正義のためにやるんだと言うけれどね
 正義に戦争なんてものはない
 間違いなんです
 とにかく計画的殺人なんで、これはやっちゃいけない
 それは現在でも強く思っています

やなせさんは、昭和16年、21歳で招集され、野戦重砲兵として中国の戦場に送られました。軍隊では重い大砲を運んでの行軍や過酷な飢えも体験しました。弟は人間魚雷回天に搭乗する海軍特攻隊員として戦場にいく途中で戦死しました。

戦争の経験はアンパンマンの正義にはどのように影響していたのでしょうか。
天野さん
 正義の戦争はない。正義とはなんなんだろうとやなせさんはいつも言っていた。
 自分が中国でつらかったのは飢えだった。飢えがあると夜も眠れない。
 痛みなどは多少は我慢ができるが、飢えるのはどうしても我慢ができない。
 それをアンパンマンに託したようです。

正義はひっくり返るとあったがそれはどういうことなのでしょうか。
天野さん
 最初に正義というのは普遍性がなければいけない
 戦争というものは勝ったものが正義になってしまう
 勝てば官軍になってしまう
 そういったものは本当に正義なのか

  
  正義が逆転することはありえないでしょう
  勝った国が正義で、負けた国が悪だ
  それが逆転するということは、それは正義ではない
  それは作品のなかにひとつの骨としてきちっと組み込まれている

 先生の言っているヒーローというものは
 アンパンマンは世界最弱のヒーローといっていたが
 たとえばコミックの勧善懲悪なんかをみていると
 建物は破壊するは人々は逃げ惑うは
 でも悪に勝ったらそれが正義かというと
 あんなに散らかしちゃって破壊しちゃってあとはどうするのかというのはよく言っていた
 それは正義じゃあないだろう
 つまり正義というのは本当に困っている人を助けるこどが正義だ
 それには自分が犠牲にならなければいけない
 自己犠牲のヒーローというのがアンパンマンとしてできあがっている

アンパンマン自分の顔をポット差し出して、
見た目はかっこ悪くなるが、それが自己犠牲で、それが正義なんだよ。
梯さん
 しかも食べさせた顔を自分ではなおせない。ジャムおじさんがいてなおしてもらう。
 だから弱いヒーローで、
 誰かに助けてもらわないと、自分の力だけでは立ち直れないというメッセージもあります。

人はお互い様ということも含まれている

悪者扱いされるバイキンマンも必ずしも敵ではない。
天野さん
 バイキンマンは時としてアンパンマンの味方をしたりするようなちょっとかわいいところもある。
 やなせ先生がバイキンマンを作ったのは、完全にばい菌は殺したら駄目だよ、人間にはばい菌は必要なんだ。
 ばい菌は完全に殺してしまうと人間もダメになってしまうから、
 痛めつけるけど、必ず復活させてさせてあげないといけない。
 勧善懲悪ではない。
 一緒に生きていくような感じ。
 
必ず最後にバイバイキーンと言って必ず次の回に登場します。決して死にません。

詩の世界から見て、やなせさんは何を伝えたかったのでしょうか。
梯さん
 たくさんの仕事をしているが、その根底には詩人であるやなせ先生がいて、
 抒情というものを大切にしていた。
 抒情とは何かというと、いろいろ辛いこととか醜いものもあるけれども、
 美しいものを信じていこう精神が通底していたような気がします。
 いろいろ大変なこともあるけれども、
 きれいなものを信じる心を忘れないということだったと思います。

アンパンマンの絵本は私のクリニックにもたくさんあり、子ども達にも人気です。
アンパンマンを通して、子ども達にやなせさんのメッセージが伝わるでしょう。
やなせたかしさんのご冥福をお祈りします。

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