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2013年8月29日 (木)

出生前診断 その1

 少し前のことになりますが、5月30日のNHKラジオ第一放送の「私も一言!夕方ニュース」で「出生前検査しゅっしょうぜんけんさ」が取り上げられていました。
 出生前検査は障害を持って生まれた人への差別につながるとかよく問題にされますが、実はこの検査が、どこの病院や診療所でも行われる診療のなかの検査ではなく、限られた施設の臨床研究であること。出生前の染色体異常の研究ではなく、カウンセリングの資料集めの研究であること、結果は確率で出ること、妊娠早期にすべて対処できず、結果によってはハイリスクの羊水検査や妊娠中絶までなされること、カウンセリングはできても医療ケアはできないことなど、問題の多い研究であることを認識させられました。
 放送内容をまとめようとしましたが、より専門家の思いをわかっていただくために速記録の形式にしました。長文になりましたので、2か月にわたってアップします。

5月30日(木)18時 NHKラジオ第一放送の「私も一言!夕方ニュース」夕方特集 私も一言! 「出生前検査 その課題は?」
お話は、 橳島(なでいま)次郎さん(東京財団研究員)と松原洋子さん(立命館大学大学院教授)先端総合学術研究科、です。

 妊婦の血液を採取して分析するだけで、胎児にダウン症などの染色体の病気があるかどうかを判定できる、新しい「出生前検査」が先月から始まっています。対象となるのは、超音波検査などでおなかの赤ちゃんに染色体の病気のおそれがあると分かった場合のほか、いわゆる高齢出産となる妊婦です。検査は、専門のカウンセリング態勢が整っているとして認定された医療機関に限られ、全国21の施設が定められています。開始から1か月で、検査を受けた妊婦は、全国で441人に上ります。年齢は30歳から47歳で、8割が初めての出産を予定している妊婦でした。
 これまでは、国内では、お腹の赤ちゃんに病気などがあるかどうか調べるのに、羊水検査と、胎盤の組織を取り出して細胞の検査をする絨毛検査、妊婦の血液を採取して調べる母体血清マーカー検査があります。 しかし、妊婦のお腹に針を刺すため、羊水検査で0.3%、絨毛検査で、1%ほど、流産の危険性があるなど、母体への負担も小さくありません。
 新しい検査は母体に負担をかけずに行えますが、この検査だけでは診断を確定することはできません。検査で結果が陽性だった場合、改めて羊水検査を受ける必要があります。
 出産する女性の4人にひとりが35歳以上となっていることもあり、 この検査に注目が集まっていますが、妊婦に対する説明は足りているのか、妊婦やその家族をどうサポートしていくかが今後の課題です。
生む、生まないという重い選択を強いられる妊婦に説明は果たして足りているのか、どちらの選択をするにしても、その選択をする妊婦とその家族をどうサポートしていくが今後の課題となります。

(司会)
出生前検査はどのような検査で、妊娠した女性は受けたほうが良い検査なのでしょうか。
(橳島)
 新しい検査なので、専門医は診療ではなく臨床研究というかたちで慎重にすすめましょうとい合意のもとに始めました。臨床研究というのは限られた人たちにやって、その結果でその先に取り掛かるかを判断する、まだ誰もが受けるべき受けられるものではありません。
(松原)
 研究なので学問的手続きを厳密にするための制限があります。審査を経て研究参加を認定された病院で行われるものになっており、現在は全国で21施設でおこなわれます。
 いわゆるハイリスクグループ向けに作られている検査で、出産時に35歳以上、または検査の対象になった疾患のお子さんをかつて妊娠されたかた、他の検査でこの疾患の可能性があると診断されたかかた、
に限定されています。検査の予約の時点で、妊娠10週から15週とされています。
 研究の目的が、検査を適切に運用するための遺伝カウンセリングの資料を作るということです。研究に参加される妊婦さんの立場は、患者さんではなく、研究資料の作成の協力者の形になります。
 研究とはいえ初診料のほかに自己負担金として検査費用約21万円がかかります。また参加する場合にはかかりつけの医師の紹介状が必要になります。

(司会)
検査の手順について教えてください。
(松原)
 遺伝カウンセリングの研究なので、検査の前にカウンセリングがあります。検査をするつもりで参加されているでしょうが、このカウンセリングが重要と考えられています。検査を一旦してしまうと、その結果が胎児の中絶などの思い選択に係ることになるので それも勘案しながらあらかじめカウンセリングを受けることになります。カウンセリングを受けて考えた上で、その検査を決めた人のみが検査の対象になります。

(司会)
何がわかって、何がわからないのでしょうか。
(松原) 
検査の対象の疾患が限られています。18トリソミー、13トリソミー、ダウン症といわれる21トリソミーのみの3種類の染色体の疾患だけです。普通の人よりも染色体の数が多くて何らかの障害が出るという疾患です。検査の結果ですが。妊婦の血液検査で胎児のDNAを調べます。陽性、陰性の結果が出ますが、これが確率で出るので、陽性と出ても胎児がその疾患をもっているというわけではありません。確定診断のためには、後で羊水検査で胎児の状況を確認することになります。

(司会)
開始してから出てきた課題はなんでしょうか。
(橳島)
 臨床研究としておこなわれるものだという枠がはめられました。目的が検査自体が本当にいいものか悪いものかを確かめるというのではなくて、カウンセリングの資料にするという、普通の研究ではあまり科学的とはいえないような感じであります。慎重に進める枠を作ったのは、この検査がアメリカの検査会社が開発した検査で、日本でもやろうと言ってアメリカの会社が売り込みをかけてきました。それがパーと変な風に広がってはいけないので、それに歯止めをかけたかったのが一番の理由と思われます。始まりがそうであっても、これだけせっかく数百人の方を対象に研究に参加してもらう訳なので、これから先そのデータを蓄積していくのは非常に貴重な結果になります。この研究で何がわかるか、何の判断の基準にするか、ポイントを明らかにするべきだと思います。

(司会)
 検査の関心が高い、関係者からは導入前の予想を上回る数で新たな検査に対する妊婦のニーズが高いのがわかったという声もありました。この動きはどうみてますか。
(橳島)
 最初は報道の量が多かったので、この先もそういう風に推移するかというのは見守る必要がある。先ほどポイントを明らかにするべきだといったポイントというのは、説明にもあったように、羊水検査というのは母体と胎児に負担とリスクをかけるものです。この検査の最大の売りは、不必要な羊水検査の数を減らそう、羊水検査をせずに済むのであればそれはせずに済めばいいけど、でも不安だから確かめたい 区分けになることができるという触れ込みでやっています。何百例もやってみて、本当にそういう区分けができるのかということが必要です。たとえば、陰性になったら極めて低いがゼロではないという言われ方をされて、じゃあやっぱり不安だから羊水検査をやるみたいな人が多ければ、何のためにやるんだということになるので、そういう結果がこの臨床研究ででれば、ちょっと考えたほうがいいということになります。

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