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2013年6月29日 (土)

虫刺され

 夏になると虫刺されが原因で皮膚が赤く腫れたり水疱ができたりすることが増えてきます。よくあるのがチャドクガの幼虫、いわゆる毛虫の毒針毛による皮膚炎です。毛虫に触っていなくても、毛虫のいる木下を通っただけでも飛んできた毒針毛で皮膚のかぶれをおこします。厄介なのは、毒針毛が服に着いたのを知らずに洗濯をすると、他の服に毒針毛がついて広がってしまい、他の服を着たときに皮膚にかぶれを起こしてしまうことです。毒針毛が服についたら、ガムテープなどで貼って取り除くしかありません。チャドクガの毒成分のたんぱく質は熱に弱いので、50℃以上のお湯で洗濯したり、スチームアイロンをかけると良いという話もあります。
 最近は外来種の虫による皮膚炎もあり、福岡市やその周辺ではセアカゴケグモが問題になっています。糸島市でも3月25日に九州大学伊都キャンパス北門(糸島市側)で、セアカゴケグモが確認されました。咬まれたら非常にまれに重篤になることがあります。その時はセアカゴケグモの抗血清を使うことになりますが、抗血清は福岡市には用意されていますが糸島市にはまだないようです。抗血清はまれに使った患者さんに強いアレルギー症状を引き起こしたりすることがあり、また抗血清を使うことは保険診療では認めていません。
 その他に最近問題になっているのが、マダニが媒介するSFTSウイルスによる重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome: SFTS)です。室内にいるダニではなく、森林や草地等の屋外に生息しており、市街地周辺でも見られる、マダニにかまれることでまれになる病気です。マダニはSTFS以外にも、日本紅斑熱、ライム病など多くの感染症も媒介します。ダニにかまれたら、ダニの体部をつまんで引っ張ると口器がちぎれて皮内に残ってしまう事があるため,口器を残さない方法でダニを除去する必要があります。ダニを除去するには、ワセリンをダニに十分に塗ってふやかして取り除くワセリン法と、医療機関で外科用または眼科用の曲型両尖剪刀を用いて取り除く方法があります。ところが世界的な医学書のメルクマニュアルには、

皮膚の免疫反応および疾病伝播の可能性を減じるため,マダニをできるだけ早く除去するべきである。患者にまだダニが付着しているのを認めた場合,口器も全て含めてマダニを皮膚から引き抜く最良の方法は,中型の無鈎先曲鉗子を用いることである。中略、口器部分を皮内に残しても疾病伝播には影響なく,せいぜい刺激が長引く程度である。マダニをマッチで燃やす(患者の皮膚に損傷を与える可能性がある),ワセリンでおおう(効果はない)などの,その他のマダニ除去法は推奨されない。

とあります。
 世の中には多くの種類の皮膚炎を引き起こす虫がいるわけで、外来で診察していても迷う症例が多くあります。以前から虫による皮膚炎の診断と治療で高名であった、兵庫医科大の夏秋優先生がこの春「Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎 」を出版されました。皮膚炎の写真だけでなく、虫の生態の写真も数多く載っていて、先生の造詣の深さを知らしめる解説文も勉強になります。発売直後に売り切れとなり、今では新刊はネットでも手に入りません。名著になると思います。

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