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2012年8月31日 (金)

不活化ポリオワクチン

 9月からポリオワクチンが不活化ワクチンになりました。このワクチン切り替えがニュースでもよく取り上げられていますが、これは異例のことと思います。それはここ数年の冷静感を欠いたメディアのせいでしょうか。
 不活化になれば毒性と言われる、約400万人に1人の生ポリオワクチンによる麻痺はなくなります。しかし、不活化ワクチンは生ワクチンに比べたらポリオウイルスに対する免疫力が劣ることは報道されませんでした。ポリオウイルスはお腹の腸に感染するウイルスです。感染した患者さんの100人から1000人に1人の割合で、ポリオウイルスが腸から体内に入り神経細胞を傷害してポリオ麻痺がおこります。
 生ワクチンは飲むワクチンで、腸に直接入り腸の免疫を作り、その後血液の免疫も作ります。しかし不活化ワクチンは注射なので、血液の免疫は作りますが、腸の免疫はつくりません。その結果不活化ワクチンだけ受けた子は、ポリオウイルスに感染したら、腸への感染を許してしまいます。血液の免疫があるのでポリオ麻痺にはなりませんが、ウイルス感染は防ぐことはできません。
 ここに問題があります。外国からポリオ感染者が来て、国内の不活化ワクチン接種済みの子どもが感染したとき、発病はしませんが、その子は腸にポリオウイルスを抱えて他の子どもに感染させる可能性があります。もし感染させられた子がワクチン接種前だったら、その子は0.1から0.01の確率でポリオ麻痺になります。
 昭和30年台にすでに不活化ポリオワクチンはありました。しかし全国で5600人と言われた爆発的な流行は阻止できませんでした。流行を止めたのは腸での免疫が作れる生ワクチンでした。2012年、ベトナムは不活化ポリオワクチンを接種していましたが、ポリオ患者の発生がベトナム南部であり広がりました。ベトナム政府が執った方法は国民に生ポリオワクチンを飲ませることでした。そうしてようやく流行を止めることができました。これから先、日本でもベトナムと同じことが起きないとは限りません、その時はどうするのでしょうか。日本の生ポリオワクチンの備蓄はあと2年分だけという話もあります。
 もう一つ、日本の下水や河川にはポリオウイルスがいます。これは春と秋の生ポリオを飲んだ子の排せつ物からのウイルスです。多くは毒性を持たないワクチンウイルスです。しかし少数ですが生ワクチンのポリオウイルスは腸内で毒性を回復します。毒性をもったポリオウイルスが日本の下水にいることはわかっています。しかしこれらのウイルスがいつになったら日本の下水や河川から消えるのかはわかっていません。2001年から生ワクチンを止めたアメリカも米国内で追跡調査をしていますが、いまだに河川からポリオウイルスは消えていません。数十年は残るのではとも言われています。
 最後に、生ワクチンの免疫効果はほぼ一生続くと考えてよいと思います。しかし不活化ワクチンの効果は続きません。海外では約10年に1度の追加接種をおこなっている国もあります。生ワクチンの備蓄と不活化ワクチンの追加接種については厚労省内部では検討中のようです。
 約50年前に日本の子ども達を救った生ポリオワクチンも、数年前からはメディアのバッシングであたかも悪魔のワクチンのように言われました。戦時の英雄も平和になれば処刑されるのは歴史でよくあること。生ポリオワクチンの再登場を求める事態が来ないことを祈るばかりです。

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