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2011年1月30日 (日)

新しい技術

1月27日18時からの、NHKラジオ「私も一言!夕方ニュース」から、
がんを直撃する薬配送システムについて、東京大学 片岡一則教授の話がありました。
抗がん剤は薬剤耐性で何度か使うと効き目がなくなります。また副作用の問題もあります。
片岡教授は、薬を包み込む10万分の1ミリの大きさのナノカプセルを開発して、がん細胞だけに薬を送り込むシステムをつくりました。
このシステムは抗がん剤の副作用と薬剤抵抗性を解決できるのではないかといっています。
このシステムは例えれば、ナノスケールのトロイの木馬をつかって薬をがん細胞に送り込むようなものです。ナノのトロイの木馬に中に薬を入れるわけです。
血液中に入れると、普通は異物としてつかまりますが、それを捕まらずに血管の中を動いて、がんの処で血管の隙間からがんの組織に出て行って、がん細胞の中に入り込んで、制癌剤が効く細胞の核の近くまで行って初めて薬が放出されます。

カプセルの大きさは30から40ナノメータです。ウイルスが30から100ナノメータなので、サイズ的にはウイルスのサイズです。

カプセルは人工的に作ります。高分子の分野の自己組織化を使います。例えば、我々の体の中にある分子モータとかウイルスのタンパク質も自己組織化してできています。

そこでタンパク質ではなく合成の高分子を化学的に設計して、それを水の中に入れると自己組織化で自然に構造を作って、それが集まって30から40ナノメータのナノカプセルができるます。水に馴染みやすい部分と水を弾いてしまう馴染みにくい部分が一本の棒の両端にあって、馴染む部分が外側にきて、馴染まない部分が内側にきて、その馴染まない部分に抗がん剤になどの薬をくっつけると、ちょうど馴染む部分が包むような丸いカプセルになって、中には抗がん剤が入っているものができます。そして血液中を通ていても壊れずに、保たれてがん細胞までに到達します。

がん細胞は、カプセルを自分と違うものとして消化するので、胃袋と同じで酸性な状態になります。
このカプセルは普通の状態では壊れないが、酸性になると壊れるように仕掛けがしてあるので、がん細胞の中に入って核の近くに行って酸性になると、カプセルが壊れて中から抗がん剤が出てきて、すぐに核に到達してがん細胞をやっつけるわけです。

また抗がん剤がカプセルに入っているとがん細胞は薬と認識できません。

ところで、カプセルは血管を通り抜けてどうしてがん組織だけに行くのでしょうか。どうして目的地がわかるのでしょうか。
血管には内側に内貼りの細胞があります。普通はこの内貼りの細胞はぎっしりと生えているので物が通れません。
ところががんの血管はこの内貼りが緩んでいます。ですから普通ならば通れないようなサイズのものでもがんの血管は通ることができます。
そのため30ナノメータのカプセルでも通過することができるわけです。
また通常の健康な場所はカプセルは通っていけないので副作用もおきにくくなります。また、全身の血管を回っているので転移しているがんにも到達することができます。そして見えない転移も見つけてくれるます。

またカプセルは永久に血管の中をまわるのではありません。ゆっくりと壊れていき、その過程で肝臓に吸収されていくのでほとんど毒性を出さずにそのまま排泄されます。

この研究は今年の1月のアメリカの雑誌サイエンスのtaransrational medicineに掲載されました。その中で、カプセルががん細胞までいって薬を放出する過程が証拠として画像化して証明されました。

このシステムはいつごろ人体に応用できるのでしょか。いくつか種類の違う抗がん剤をいれたナノカプセルは開発されていて、4つは臨床試験が始まっています。臨床試験の第一段階と第二段階までいっていて、この後第三段階までいってそのあと薬として承認されます。ざっと3年から5年はかかります。

このシステムは、新しい薬を作ったのではなくて、今まで使っている薬をナノカプセルに収めて体の中に送り込むことで効果が出すようにしたものです。その結果、本来の薬の効き目も変わります。今までは開発段階で毒性の問題で開発が止まった薬も、将来はこのカプセルに入れれば、その薬が使えるようになるでしょう。そうなると新しい薬でも使えるようになり、薬の本来の性質をよりうまく使えるようになります。
またがんの薬以外の応用では、循環器の分野、将来は脳の血管を通っていくカプセルを考えられています。それができるとアルツハイマー病とかパーキンソン病とか中枢性の病気にもこのデリバリーシステムが応用できるますが、これはまだ基礎研究の段階です。

片岡教授は、体に馴染みやすい高分子の研究からこのナノカプセルも実現しました。体に馴染む人工臓器とか人工血管に使える材料を開発したいというところから研究をスタートしていて、それがこのナノカプセルも体に入れても異物、つまり自分と違うものではないというように体が馴染んでくれるものを作ることができました。

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2011年1月 4日 (火)

明けましておめでとうございます

 今日から診療をはじめました。年末から診られ始めたインフルエンザの患者さんが増えてきました。流行が始まるでしょう。体調には十分に気をつけてください。インフルエンザは熱が下がっても2日以上休んでから登園・登校してください。特にタミフルを飲むと早く解熱しますが、それは治ったわけではありません。タミフルを飲んでもインフルエンザウイルスはまだ出ています。他の人に感染する可能性があります。しっかり休むことを心がけてください。

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