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2010年2月28日 (日)

ジェネリック薬

 ひところ「お医者さんの薬代がジェネリック医薬品を使うと安くなります。」というテレビ広告が有名俳優を使ってよく流されていました。
 一つの薬の開発には莫大な費用(特に臨床試験のコストが巨大です)がかかります。そのため薬(先発薬)を開発した製薬会社には通常20年間は薬の特許権があり、他の製薬会社は同じ薬を勝手に製造・販売してはいけないことになっています。しかし特許が切れた後は他社は同じ内容の薬を製造・販売できるようになります。それが後発薬、ジェネリック薬です。ジェネリック薬には開発費や臨床試験の費用が少なくてすむため、薬の価格を低く抑えることができます。昨今はどこの国も医療費が毎年高騰しており、国の政策としてジェネリック薬を使うことを指導しています。
 先進国の中でも最も大きな財政赤字をかかえる日本では、医療費抑制のためにもジェネッリク薬の処方量が増えることは望ましいことと誰もが思っているでしょう。
 ところでジェネリック薬は最初の製薬会社が開発した先発薬とまったく同じものなのでしょうか。答えは否です。先発薬とジェネリック薬の主成分は同じです。しかし薬は主成分だけで出来ているわけではありません。製造方法や基材や添加剤は先発薬と異なることがあり、ジェネリック薬の中でもジェネリック薬の製薬会社毎に薬の内容が微妙に異なることがあります。先発薬とジェネリック薬はまったく同じ薬ではありません。そのため先発薬とジェネリック薬では実際に患者さんへ投薬した後の効果が異なるものもあります。 ジェネリック薬に対しては先発薬との「生物学的同等性試験」とうい試験を行い、効果が同じと判断されたものが発売されています。しかし「生物学的同等性試験」とはジェネリック医薬品と先発薬を同じ健康成人に期間を置いて交互に服用させて、その人の血液中の薬物の濃度の推移が同一であることを確認する試験です。この試験で 生物学的同等性が確認できれば、有効性と安全性が先発薬と同等であると国は判断するわけです。先発薬の試験に比べれば余にも簡単な試験で、このような試験でジェネリック薬の販売を許可するということは、国のジェネリック薬推進という政策を反映したものと思わざるをえません。
 また小児科では先発薬とジェネリック薬では薬の味がまったく異なることが問題になります。子どもは薬の味が悪いと飲んでくれません。ジェネリック薬の処方を考えるときは、その前に複数のジェネリック薬を実際に味見をしてみないととても処方ができません。
 欧米に比べて日本はジェネリック薬の処方量が少ないという理由で、厚労省も2年に一度の診療報酬改定の度に、ジェネリック薬の処方をしないと診療報酬が上がらないような(病院、診療所、調剤薬局の利益が上がらない)ような改定をしてきました。この春の改定では調剤薬局の全処方量の何割にジェネリック薬を使ったかで診療報酬にさらに差が出るような改定になっています。なぜ国はこのように圧力をかけてくるのか。医療費抑制のためだけでしょうか。世の中はそのような大儀だけで動いているはずがありません。国会議員の中にはジェネリック製薬会社と関係の深い議員もいるわけです。もちろん財務省も厚労省へ強い圧力をかけています。
 ジェネリック薬を使うことで薬局での支払が安くなることは患者さんにとってはよいことでしょう。しかしジェネリック薬ばかりになると先発薬を開発する製薬会社は売り上げが減少し新たな新薬の開発ができなくなります。日本の製薬会社の力が弱まればすぐに欧米の巨大製薬会社に飲み込まれてしまいます。欧米では製薬会社の合併・吸収が進み、北米大陸、ヨーロッパ大陸、イギリスに各1ないし2社の体制になってきています。日本の製薬会社も今後新薬の開発が滞れば欧米の会社に飲み込まれ、日本の民族系の製薬会社は消滅することになるでしょう。そうなれば欧米の製薬会社は日本に対して医薬品を高額に売りつけてくるでしょう。
 私はジェネリック薬の導入に反対とまではいいません、しかし安かろうだけが強調されているようなのが本当に良いのかも考えなくてはいけません。またジェネリック薬があたかも先発薬とまったく同じ薬で同じ効果があるように思わせるPRにも問題があると思います。
 先進国の中でも低い日本の総医療費なのに、さらに抑制しようとする国の施策のなかで、ジェネリック薬の奨励はどこまで国民の立場に立っているのでしょうか。ジェネリック薬の普及率や医療費抑制の数値目標ばかりが優先しているように思えてなりません。

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