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2009年10月31日 (土)

新型インフルエンザ:学校での生徒たちの心の被害

 10月21日のNHKラジオ第一放送、夜10時からのNHKジャーナルで、新型インフルエンザの学校現場での生徒たちの心の被害について伝えていました。
 国内で最初に感染が確認された神戸高校の生徒たちが、最初はメディアの過剰な報道と世間の理解不足から、風評被害に苦しめられながらも、学校や行政の現場の人々の支援で、心の被害から立ち直り、最後には生徒たちが今回の問題を問い直していく過程を番組内で伝えていました。
 興味本位で客観的に事実を報道できない、日本のメディア各社に若い心が傷つけられたのは痛ましく、そのことを反省・謝罪することないメディア各社の姿勢には怒りさえ覚えます。私は神戸高校の報道はやりすぎではないかという思いが当時からありました。NHKにも過剰報道の責任があると思いますが、番組内では明確な反省や謝罪の言葉はありませんでした。
 今回の事件での唯一の希望は、生徒たちが、メディアも含めた日本の社会の危うさや脆さを身をもって体験して、自分の将来の糧にできたことではないでしょうか。
以下は、番組の速記録です。

NHKラジオ第一放送 NHKジャーナル 10月21日 22時26分から22時34分放送
今年5月国内で最初に感染が確認されたのは神戸市の男子高校生でした
この生徒が通う神戸高校は直後から様々な誹謗中傷に見舞われ
そうした風評被害に深く傷ついた生徒も多くいます
取材にあった田中孝宜ディレクターです

ディレクター:
学校では心のケアの一環として
生徒に作文を書いてもらったり生徒が気持ちを発散する場を設けたりしてきました
今回その内容について初めて取材に応じてもらいました
作文には生徒たちの傷ついた心の内が伺えます
「新型インフルエンザとわかり、防護服を着た人たちに囲まれながら病院に入るとき、マスコミのカメラのフラッシュを浴びたのが怖かったです」
「病院では特別の部屋に入れられ、問診もインターフォン越しに聞かれたのがすごく不安でした」
「他の学校の人たちは平気で感染した人の名前教えてってメールしてきて、私が感染した友達がどれだけ苦しんでいたか知っていたのですごく憤りを覚えました」
「感染した子は何も悪くないのに自分をすごく責めていてそんな思いをしている仲間がいることがくやしくて涙が止まりませんでした」
感染した生徒が感じた不安ですとか恐怖、その様子を近くで見ていた友達の記憶が率直に綴られています
生徒のケアに当たった養護教諭の渡辺かおるさんの話です

養護教諭:
「最初、自分が入院したというところで理解する自分自身の現状を理解するまではかなり負担が大きかったと思います
自分が感染したということ自体がショックでやっぱり誰にも言えないという生徒もいました
病院のなかで聞き取りというのも強毒性を意識した聞き取りだったと思いますのでそのあたりでいろいろと辛い思いをした子どもたちもいました」

ディレクター:
こうした精神的な負担ですが感染した生徒だけではなくて他の生徒そして家族や地域住民にまで広がります
再び生徒の作文です
「神戸高校に通っているというだけで変な目で見られたのがたまらなくいやでした」
「私が神戸高校の生徒だというだけで父が会社を休むように言われ悲しくなりました」

番組キャスター男:
最初に感染者が確認された当時は店頭からマスクが消えたりですとか人々が不安を抱えて混乱した状況がありましたよね

ディレクター:
そうですね
実は生徒の中にはそうした過剰反応を生んだのはマスコミの責任ではないかとい思いが強くて作文で一番多かったのはマスコミへの批判でした
「感染した生徒が病院へ運ばれるときまるで容疑者が警察へ運ばれていくように撮影されていました ただでさえ感染して苦しいだろうにあんな形でマスコミに囲まれて本人はもっと傷ついたと思います」
「他の学校でインフルエンザが確認されたとき この学校と神戸高校が交流試合を持っていたとまるで神戸高校が感染源で悪者のように報道されたのに、実際には試合をしたのは神戸高校ではなく別の高校でした」
「騒動を煽るような報道が多くそれを見た人が学校を誹謗中傷し関係ない人までばい菌扱いする 日本の社会のもろさが露呈したと思います」
加熱するマスコミ報道の中で学校には誹謗中傷の電話が相次ぎました
電話の応対に当たった管理保健部長のタケモトフミコさんは
「感染症について正しく理解することの大切さを痛感したといいます」

管理保健部長:
「でも私は今回のことで感染症に対する理解がなかったことを、強毒性が強調されていたのでそれにたいする不安がいろんなことを煽ったのだと思ってて、本当にその人たちだけを攻めれるんじゃなくて私たち自身がもっともっと感染症に対する理解を深めることでそういうことも減っていくのではないかと考えています」

番組キャスター女:
こうした生徒たちの傷ついた心に学校はどういう風に向き合ってきたのでしょうか

ディレクター:
学校ではこの5ヶ月間生徒の心のケアに当たってきました
たとえば生徒たちがお互いに感じたことを語り合ったり、あるいは体験を作文にすることで気持ちを整理してきた
そうした中で次第に生徒たちも今回の経験を前向きに見つめなおすことができるようになってきました
「先生方や神戸市、保健所の方々が生徒のことを第一に考えていてくれて心強さを感じました 自分のせいでと思ったこともありましたが、本当に感謝しています」
「今回の経験は一生忘れることはないと思いますが、ただ辛かったというだけでなく、これを自分のため将来のため人のためになるようにつなげていきたいと思いました」
お聞きのように多くの生徒は落ち着きを取り戻しているんですが、
しかしまだ時々当時の恐怖感が甦ってきてしまうという生徒もいます
養護教諭の渡辺薫さんの話です

養護教諭:
「健康そうにみえる高校生ですけれど、ガラスのように本当に思春期の子どもたちはもろい部分をたくさん持っていますので、やはりまだまだ時間の経過と供に回復はしてますけれど、教職員はじめ地域のみなさんも一緒に高校生の気持ちに寄り添っていただいて見守っていく部分はたくさんあるように思います。このことは今回は弱毒性でありましたけれど、強毒性ということも想定して予行練習ていうか、いかしていかないといけないと思いますので、そういう意味では今回の痛手は大きかったと思うんですけど、今後に向けて生かしていかないといけない部分は大きな課題を与えられたんじゃないかと思います」

ディレクター
今回神戸高校が取材に応じてくれたのは、次もし新たな感染症がおきたとき、第二第三の神戸高校をだしたくないとい思いがあるからでした。
予行演習という言葉がありましたけれど、生徒の作文には私たちがしっかり受けとめなければならないメッセージがこめられていると思います

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