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2009年7月31日 (金)

7月の雑感・ワクチン編

 日本脳炎ワクチンが6月から新しくなりました。国のワクチン検定が追いつかなかったため、ワクチンの供給量が当初は大変少なく、接種を希望される子どもたちとその保護者の方々にはご迷惑をおかけしました。7月下旬になって、供給量が十分になり、ようやく予約されてもお待たせすることなく接種ができるようになりました。これは国の検定が進んだというよりは、日本脳炎ワクチンの接種に対する地域の温度差のせいでした。もともと日本脳炎は沖縄・九州に多かった病気で、北に行くほど少なくなり、北海道にはない病気といわれていました。また最近は国内の患者発生も10人もいないくらいで、それに加えてワクチンの副反応に対するゴタゴタでますます接種を希望する人は少なくなりました。その結果、接種の少ない地域のワクチンが九州に回ってきたわけです。患者発生が極端に少ないのに、日本脳炎ワクチンの接種をこのまま続けるのか、小児科医の間でも意見が分かれています。しかし日本脳炎ウイルスが絶滅したわけではありません。実は日本脳炎はウイルスを持った蚊に刺されても必ず発病する病気ではありません。そこでワクチンをまだ接種していない子どもの血液を調べると、実は日本脳炎ウイルスに罹って抗体ができている子どもがいます。また脳炎までならなくても髄膜炎になっている子どももいます。理由はわかりませんが、たまたま脳炎までならなかっただけです。今の日本でも感染のリスクはあるわけです。私は接種を勧める医者です。
 ヒブワクチンは接種を希望される方が多くいらっしゃるのに、これも供給量が大変少なく、一つの診療所には毎月3人分のワクチンしか供給されません。私のクリニックでは予約されても接種できるのは半年以上先になります。これは日本のワクチンの採用基準が厳しいため、作っているフランスの製薬会社での生産量が増やせないからです。ヒブワクチンが自費ワクチンではなく公的な定期接種のワクチンになれば、日本での使用量も増加が見込めるので会社も生産工場を拡大できるのですが、今は難しいようです。
 これまで何回となく日本の予防接種政策の遅れを書いてきました。B型肝炎ワクチンは定期接種にならない、ヒブワクチンは十分にない、肺炎球菌ワクチン、不活化ポリオ、ロタウイルスワクチン、子宮頸癌ワクチンは認可されていない。世界から20年遅れている日本のワクチン行政なのに、新型インフルエンザだけは特別扱いで進めるのは理解できません。ワクチン政策の素人の政治家が国民に対するパフォーマンスのためにおこなっているとしか思えません。政権が変わったらワクチン政策も少しは変わってほしいものです。

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2009年7月30日 (木)

7月の雑感・疾患編

 梅雨はまだ明けませんが、手足口病などの夏かぜは流行しています。手足口病はエンテロウイルスが原因です。いわゆる手足口病ウイルスというウイルスは存在しません。エンテロウイルスが感染しても必ず手足口病になるわけではありません。症状が熱だけだったり、足の発疹だけだったり、中には症状はほとんどなくウイルスだけを排出している患者さんもいます。手足口病とは独立した病名ではなく、エンテロウイルス感染の症状を言っているだけと考えたほうが理屈には合っています。またウイルスに感染したら患者さんは約1ヶ月間はウイルスを排出します。他の子ども達に病気をうつす訳です。以前は発疹が出ている間は保育園・幼稚園は登園禁止にしていましたが、発疹が消えても感染力があること、症状がほとんどなくてもウイルスを排出している人もいるため、今は発疹のみで登園禁止にはならなくなりました。もちろん熱があったり、元気がないときはお休みをします。
 最近はメディアもほとんど取り上げなくなりましたが、新型インフルエンザの患者数が増加しています。国内の最初の症例から約2ヶ月で蔓延期になりました。これから約2年間にほとんどの国民が感染するでしょう。世界中で日本政府だけがとった水際対策、発熱外来などは、人力と予算の無駄遣いに終わったことが証明されただけでした。弱毒型インフルエンザに対して、SARSや強毒型インフルエンザの対策で対処した日本政府の対応は世界の物笑いの種にしかなりませんでした。国の方針転換で7月下旬から発熱外来はなくなりました。一般診療所でも新型インフルエンザを診ることになりました。そして全数調査も中止になりました。簡易検査でA型の陽性判定がでたら、今までは公的機関の精密検査で季節性か新型かを診断ていましたが、今後は個別の患者さんの精密検査はしなくなります。集団発生のときだけ検査をすることになりました。発熱で診療所を受診して、簡易検査でA型陽性になっても、医師の答えは「もしかしたら新型かもしれないね」くらいになります。患者さんも「そうですか」と冷静に受け止めてもらえるとありがたいのですが。しばらくは混乱するかもしれません。新型インフルエンザは恐怖のウイルスでは決してないわけです。手洗いによる予防をおこない、もしも罹ってしまったら抗インフルエンザ薬等で治療して、ウイルスが体の中から消えるまでは集団生活には戻らずに自宅で安静にするとういう基本を守ればよいわけです。それとワクチンには過大な期待は持たないほうがよいと思います。もともとインフルエンザワクチンの予防効果は低いわけで、それは今度の新型インフルエンザのワクチンも同じでしょう。それに急いで作ったワクチンでしかも通常なら何年もかけておこなう臨床試験も簡単に終わらせて認可するのでしょうから、安全性もいかがなものかと思われます。

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