« 2009年3月 | トップページ | 2009年5月 »

2009年4月30日 (木)

豚インフルエンザ

突然、メキシコから出てきた豚インフルエンザにWHOや政府は対策に追われています。これは新型インフルエンザで世界的大流行(パンデミック)になって死者が多数出るのか。メディアも一斉に報道を始めました。
 客観的に十分に事態を取材をしてるか、また事象を深く勉強しているか。このような時こそ、各メディアのレベルがわかる良い機会です。まずニュースを伝えるニュースキャスター、アンカーマンが自分の意見を言う番組は信用度は低いと判断します。欧米のアンカーマンは決して自分の意見を言いません、粛々と事実を伝えていきます。自分の意見の代わりに専門家の意見を伝えます。素人である個人の意見を挟むことは、ある意味、情報操作と思われても仕方がありません。
 また、情報の信頼性の順位は、第一位が専門家の意見、第二位は世界機関の発表、今回はWHOの発表です。第三位が政府の発表といわれています。

 ところで今回の事態を鋭く予言した論文が、今年の1月に日本小児科学会誌の掲載されました。タイトルは「新型インフルエンザの誤解と対策の問題点」、執筆者は神奈川県警友会けいゆう病院小児科の菅谷憲夫先生です。日本消化学会雑誌 113巻 1号 31から35(2009年)
 この論文では、新型インフルエンザは近い将来必ず出現し全国民100%が発病するので、爆発的に発生する患者の診療体制の確立が最優先課題だとしています。しかし日本の対策は感染拡大防止に重点がおかれており、診療体制の整備・確立が遅れているとしています。
H5N1の流行の可能性は低い
 次の新型インフルエンザがH5N1(強毒性の鳥インフルエンザ)と確定したかのようにされていますが、専門家の間では、H5N1が新型インフルエンザとして流行する可能性については否定的な意見がでていること。H9、H7、H2などが次の新型インフルエンザの候補となる可能性が高いと言っています。
新型インフルエンザには全国民が罹患発病する
 新型インフルエンザの流行は第一波、第二波と続きます。新型インフルエンザが出現すれば、半年以内に25から50%、数年以内には全国民が罹り発病します。
新型インフルエンザの死亡は細菌性肺炎が原因
 強毒性のH5N1ではインフルエンザウイルス自体の毒性で死亡しますが、弱毒性のインフルエンザでは二次感染、特に呼吸器の細菌性肺炎の重症化で死亡します。
発熱外来は意味がない
 日本では発熱外来の設置を厚労省が強く指導しています。しかし欧米の対策では発熱外来という発想はありません。膨大な患者を少数の発熱外来で診察するのは常識的に考えても不可能です。欧米に発熱外来の発想がないのは、発熱外来の受診までに、家庭、学校、職場、交通機関など周囲に感染をおこす機会が十分にあり、外来だけ隔離しても感染拡大防止としての意味がないからです。
 発熱外来はSARSの対策との混同です。SARSは周囲に感染を開始するまで数日から1週間かかり、患者発生数も格段に少ないから発熱外来も意味があります。
医療関係者の感染防止の問題点
 日本の対策では新型インフルエンザを診察する医療関係者は、防護服、ゴーグル、N-95マスク、ゴム手袋の着用を支持しています。これは新型インフルエンザとH5N1インフルエンザ対策との混同です。しかし欧米の対策ではサージカルマスクの着用以外は特別な感染防止は実施しません。
新型インフルエンザワクチンの問題
 日本のワクチンは小児には接種できません。
 毎年接種しているインフルエンザワクチンはウイルスにエーテルを加えて分解してワクチン成分とするスプリットワクチンです。しかし日本の新型インフルエンザワクチンはウイルスにエーテルを加えることなくそのままでつくる全粒子ワクチンです。全粒子ワクチンは発熱等の全身性の副反応が強く出るので、欧米では12歳以下には接種禁忌となっています。

 以上、この論文では新型インフルエンザの誤解と対策の問題点が述べられいます。
 今、現実に新型インフルエンザが出現しました。それは強毒性のH5N1ではなく弱毒性のH1N1でした。H2ではありませんでしたが、弱毒性という論文の予想は当たりました。
 政府は水際作成に力を入れていますが、ウイルスの国内への侵入は現実的は阻止できないでしょう。
 ところで厚労省のいう発熱外来ではなく、仙台市では地域の各診療所が発熱外来となって患者の診断をおこなう体制を作りました。現実的な評価すべき対策と思います。また今回の新型インフルエンザワクチンが全粒子タイプのワクチンとなるかはまだ明らかではありません。
 インフルエンザの死亡は細菌性肺炎です。原因菌は肺炎球菌が最も多いでしょう。高齢者には肺炎球菌ワクチンがあります。流行前の今のうちに接種を勧めるべきです。それだけでも多くの高齢者が救われると思います。
 しかしこのワクチンは小児には効果がありません。小児の肺炎球菌ワクチンは別にあります。海外の80カ国以上では接種されているワクチンです。しかし日本では小児科医、小児科学会、患者団体からの再三の早期の認可要請にもかかわらず、未だに国は小児の肺炎球菌ワクチンの使用を認めていません。今回の新型インフルエンザの流行で、肺炎球菌性肺炎の併発で多くの小児が重症化したり死亡したりしたら、その時国は、肺炎球菌ワクチンの認可をいたずらに遅らせた責任を強く迫られることでしょう。

| | コメント (0)

« 2009年3月 | トップページ | 2009年5月 »