« 2009年1月 | トップページ | 2009年3月 »

2009年2月28日 (土)

こどもを花粉症にしない9か条

「こどもを花粉症にしない9か条」という記事が医療介護CBニュースで2月23日に配信されました。
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/20729.html
YAHOO! Japanニュースでも流れました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090223-00000004-cbn-soci

 2月23日に横浜市の理研横浜研究所で報道関係者を対象に開かれた「製薬協プレスツアー」(主催=日本製薬工業協会)で、理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターの谷口克センター長が「スギ花粉症ワクチン開発」と題して講演されたようです。この講演の中で、将来子どもが花粉症で苦しまないようにするためにはどうすればよいかという話があり、「花粉症にならないための9か条」を紹介されたようです。
 その9か条とは以下の通りです。
・生後早期にBCGを接種させる
・幼児期からヨーグルトなど乳酸菌飲食物を摂取させる
・小児期にはなるべく抗生物質を使わない
・猫、犬を家の中で飼育する
・早期に託児所などに預け、細菌感染の機会を増やす
・適度に不衛生な環境を維持する
・狭い家で、子だくさんの状態で育てる
・農家で育てる
・手や顔を洗う回数を少なくする

 私はこの講演を実際に聞いてはいないので、谷口氏の真意は測りかねますが、この項目はいわゆる衛生仮説です。衛生仮説という用語は、1989年の英国の論文にはじめて登場しました。「乳幼児期までの感染,非衛生的環境が,その後のアレルギー疾患の発症を低下させる」という説です。新生児から乳幼児の免疫のモデルに、アレルギーに働く免疫と、感染防御に働く免疫のバランスを考えるモデルがあります。乳児が細菌に感染しやすい非衛生的な環境で育つと感染防御に働く免疫が強くなって、アレルギーに働く免疫が弱くなり、アレルギーになりにくくなります。逆に衛生的な環境で育つと感染防御に働く免疫が弱くなって、アレルギーに働く免疫が強くなり、アレルギーになりやすくなります。免疫学的にも衛生仮説を証明できるデータがでましたが。最近は矛盾するデータも出てきて必ずしも定説にはなっていません。
 しか個別の項目については、考えるべきもの、注意すべきことがあります。
 結核のワクチンであるBCGの接種は、成人の花粉症対策として有効とのデータはあります。
 また小児期には抗生物質はできるだけ使わないということも大事です。しかし早期に託児所に預ければ必ず感染症にかかります。ウイルス性の風邪なら自分の力で治すこともできます。しかしまれには細菌性の肺炎球菌による菌血症、髄膜炎、肺炎やインフルエンザ桿菌による髄膜炎、喉頭蓋炎、肺炎などの重症の細菌感染症になります。そこまで重症でなくても肺炎球菌やインフルエンザ桿菌の中耳炎にはよくなります。そのたびに抗生物質を使わざるをえない状況になります。だから託児所に預けて細菌感染の機会を増やして抗生物質を使わないとは矛盾です。
 また、谷口氏は「生後6か月以内に麻疹、抗酸菌などの感染症にかかるとアトピーになりにくい」とも言っているようです。これは大変危険な誤解を招く報道です。現在でもワクチンを接種するよりは、麻しんなどの伝染病は患者さんからもらって罹ったほうが免疫が強くついてよいと思い込んでいる人が多くいます。一般の人は麻しんがどれだけ怖い病気か忘れています。麻しんは発病したら現代医学では治せません。約1000人に1人は死亡します。また治っても10万人に1人は数年後に脳症を発症して最後は亡くなります。おたふくかぜも1000人に1人は一生治らない難聴になります。ちなみに抗酸菌の代表は結核菌です。6か月以内に結核に感染したら重症化して結核性髄膜炎などを発症して死亡します。
 谷口氏もそのことはもちろん承知でいてデータ解析上の話として講演したと思いますが、マスコミが言葉を選ばずに伝えると大きな誤解を招きかねないことになります。

さて、成育医療センター研究所免疫アレルギー研究部のホームページに
http://www.nch.go.jp/imal/default.htm
「アレルギー疾患発症予防に関する12のQ and A」というページがあります。
内容は専門的ですが、専門家に認められた論文のデータに基づいた客観的な内容です。
谷口氏の講演のマスコミ報道よりは、ぜひこちらを読まれることを勧めます。
谷口氏の報道は、ひところ流行の抗菌グッズ信仰への警鐘ととらえたほうがよいかもしれません。

| | コメント (0)

« 2009年1月 | トップページ | 2009年3月 »