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2008年6月22日 (日)

燃え尽き

5月27日夕方6時からのNHKラジオ第一放送の夕方ニュースで、アスク・ヒューマン・ケア研修相談センター所長の水澤都加佐さんの燃え尽きの話がありました。そのなかでたいへん印象的な言葉がありました。
「仕事というのはあくまで仕事の対象になる方のためにすることなので、自分を満たすためにすることではありません、間違っても仕事の対象になった方からの感謝や賞賛や評価で自分を満たそうとしないこと、言い換えれば自分を満たすことを仕事を離れた場所で常に取り組んでいることはとても重要なことです。」
この言葉は意味深いと思います。

アスク・ヒューマン・ケア研修相談センター所長の水澤都加佐さん

以下に番組の速記録を書いておきます。Qは司会者の問い。Aは水澤さんの話です。

最近、医療・福祉・教育などの分野で、人を援助する仕事に就いている人達の間で、燃え尽きという状態になることが問題となっています。
燃え尽き burn outo症候群というのは、長い間援助活動を行ううちに精神的な活動を過度に要求されたために心身が消耗し感情が枯れてしまう状態をさします。
仕事で燃え尽きないためにはどうしたらいいのか
アスク・ヒューマン・ケア研修相談センター所長でソーシャルワーカーの水澤都加佐(みずさわ・つかさ)さんにお話を伺います。
Q:燃え尽きの背景にはどういうことがあるか
A:燃えつきを含めたメンタルヘルスの問題が非常に多い、
自殺者が多い、中途で退職する方、休職する方が非常に多い、こういうことがいろいろな職場で問題になっている
メンタルヘルス対策に関しての講演・セミナーの要望が多い
Q:どういう分野の要望が多いか
A:専門職種集団、保健師、介護福祉士、社会福祉士、ソーシャルワーカ、あるいは職場では、市役所、区役所、包括支援センター、などから呼ばれることが多い。
そして一般企業もこういう問題に関心を持っている。
Q:共通した背景はあるのでしょうか
A:休職者(3ヶ月以上休んでいる)のほとんど(70から80%)がメンタルヘルスの問題です。体の病気で休んでいる人は圧倒的に少ない
Q:老後の不安があることも背景としてあるのか
A:いろんな不安、職場での成果主義、リストラ、職場そのものにストレスがあると答えている方が多い。
Q:そんな中で、人を援助する立場にある人は、もっと困っている人の援助をしなければならない状態にある訳ですね。
A:援助の対象になる方そのものが人間であります。これが援助専門職の大きな特徴といえる
Q:燃えつきといえるのは、はりきって仕事をしている人が、ある時、突然意欲がなくなったという理解でよいか
A:徐々に徐々に進行して、最後は仕事につけなくなってしまう場合もあるが、進行性の問題と考えていいと思います。
Q:どういったタイプの人が燃え尽きの状態に追い込まれるか
A:まじめで、仕事熱心で、義務感・責任感・使命感の非常に強い方、仕事の手を抜けない方々です。そのこと自体は悪いことではないが、問題は休めないこと 寝ても覚めても仕事に集中している。仕事こそ生きがい、自分がしなければいけない、こういう思いつめた気持ちで仕事に集中していくタイプの方に多い。
Q:年齢でも何か特徴があるか
A:援助職を選ぶこと自体が、こどものころからそういう仕事に就きたいと思っている方が多いのが特徴です。
Q:若い方、べテランになるとそのへんはルーティンワークでどんどん仕事をこなしていくのかなと思うがそういう方にもあるのか
A:10年以上のベテランでも燃え尽きることがあるが、多いのは1年から3年の方に集中している。10年以上で燃え尽きる方は、たとえば転勤した新しい職場で燃え尽きたり、昇進をして管理職になって燃え尽きる方が大変多い。
Q:職場のシステムが問題になることもあるのか 労働条件とか 仕事の量とか
A:管理職が部下をどう育成してくのか、どう日常的にかかわっていくのか、働いている方々の安全をどう配慮しているのか、ということも関係してくる。
Q:燃えつきがどういう過程をたどってすすんでいくのか、最初はイライラするとかのかたちであらわれることが多いと聞くが、どういうかたちであらわれるのか
A:一番目立つのは、仕事熱心で一生懸命やる方、穏健な方に多い。燃え尽きる最初の症状は、非常にイライラして怒りっぽいというところかスタートする。非常に些細なことで腹が立ったり、自分の仕事の中身に確信が持てなくなる。さらに進むと、権威的になる、いままでの優しさ、お客様を対等に扱っていた方が、イライラを背景に権威的に接触する。あるいは休みがちになる。援助の対象になる方々に、怒りをもってしまう。他所にいってほしいと思ったりする。休みがちになる。特に月曜日に休みたいが特徴的。月曜日に休めば火曜日が月曜日になるので、火曜日の朝行くのがいやになる。さすがに水曜日までは休めないので、週の真ん中は出勤をするが金曜日までは持たない。こういうものも目立ってくる。
Q:そしてさらに進むとどうふうな状態になるか
A:さらに進むと、ストレス性の身体疾患が目立ってくる。頭痛、肩こり、背中が痛い、起きられない、眠れない、早く眼が覚める、身体精神感情にまで影響してくる。
Q:そしてさらに進むとどういう状態になるか
A:さらに進むと、仕事を止めてくなる、転勤をしたくなる、他の職種に替わりたくなる、ということがでてくる。
Q:順を追っていくと 次の症状は
A:実はそのへんで苦しいのでSOSを発信すればよいのですが、なかなかSOSを発信できない方が特徴です。苦しさを今まで以上に仕事で頑張ることで乗り切ろうとしたり、お酒に逃げる、ギャンブルに逃げることも多い。
Q:そしてついには倒れてしまう 燃え尽きてしまうという過程をたどることが多い 体に症状が出てくるときが大事だというが この時に本人にとっては助けを求めるチャンス 職場の上司にとっては援助をするチャンスということになるのでしょうか
A:この辺で、ちょっと疲れた参ったと言えばいいが、そうすれば周りも一生懸命働いていることは十分承知しているので、みなさんがそらそうだろうという気持ちで診てくれるが、燃え尽きる方はもっと頑張らねばということで、また周りの対応も間違うことが多い。もっとしっかりやれ、君だったらできる、みんな頑張っているじゃないか、こういう誤ったサポートをすることも非常に多い。
Q:メンタルヘルスの問題としてこの段階できちんととらえたほうがよい
A:その通り。この段階を見落とさない、早く元気になって職場復帰してほしいということが、この段階で大事なことだと思います。
Q:今の話を聞きながら イライラする 月曜日には辛い私にもあてはまるかな
A:援助職でなくても企業に働いている方でも同じことです。
Q:燃え尽きにはいろいろな要因があるが どうしておこってしまうのか。先ほどはその人の性格的な部分もあるということでしたが 外的要因は
A:一番大きいのは仕事のやりすぎ、仕事にのめりこんでエネルギーの補給をしない、これは誰でも燃え尽きる。そして休みをとらない、とれない、とりたくない、職場を空けたくない、こういう特徴がある。 
Q:その人がもともと持っている考え方も影響するのか
A:影響すると思います。働くことは悪いことではないが、周りから評価をされたい、どこかで期待をしている。特に援助対象になる方々から感謝をされたり、評価をされたり、賞賛をされることで、自分の存在意義を確認する傾向は結構ある。
Q:燃えつきからの回復はどういったところから
A:一にも二にもセルフケアを一生懸命やる。セルフケアとは自分の面倒をみる自分の世話をするということ。援助職になぜ燃えつきが多いかということと関係してくる。援助専門職はいつも人の世話をしている。実は家に帰っても配偶者やこども達の面倒を見ている。自分の面倒を見ることが得意ではない。
セルフケアというのは、飛行機で酸素マスクがおりてきたら、酸欠にならないように酸素マスクをまず自分ではめられる方は自分ではめてから自分ではめられない方にはめてさしあげる。これがセルフケアの語源と聞いたことがある (これが酸素マスクの正しいはめかた)。まず援助職が酸欠にならないことこそ援助業務を続ける上ではかかせないこと。
Q:自分をケアする 精神的な疲労からの回復も重要になってくる そのためにはどうしたらよいか
A:肉体労働は体は疲れるが寝ればなおる。対人関係の仕事は精神が疲れる、感情労働の側面があるので、感情的な疲弊が深い。かなり積極的なセルフケアをして自分をリラックスさせる。遊んでエネルギーを蓄積しなければ、燃え尽きるのは時間の問題です。
Q:いろいろくよくよ考えてあの時ああしておけばよかった と考えて精神的にますます疲労してくることもあると思うが その場合はどのような考え方をすればよいか
A:よりよき仕事を目指すことが必要なので、それまでおこなった仕事を反省したり、振り返ることはもちろん重要だが、大切なことは私たちはそのつどそのつど一番いいことを選択してやってきているので、それがよかったか悪かったかということは後からわかることなので、反省はすべきですが、それによって自分の誤りに気付いたら、ただ訂正をしていけばいいわけで、あまり自分を責めたり、自己否定をしないような生き方がとても大事だと思います。
Q:そのときできるだけのことをしたんだというふうに自分でも納得する
A:そういうことです。
Q:これから燃え尽きという状態になることを予防するには どういうことに配慮したらよいのか
A:自分の好きで選んだ仕事ですが、仕事というのはあくまで仕事の対象になる方のためにすることなので、自分を満たすためにすることではありません、間違っても仕事の対象になった方からの感謝や賞賛や評価で自分を満たそうとしないこと、言い換えれば自分を満たすことを仕事を離れた場所で常に取り組んでいることはとても重要なことです。
Q:対人援助職をしているとまず自分が完璧にならなければならないと思いがちになるが そういうふうに考えなくてもいいわけですね
A:いい仕事をすることは必要ですが、人間そのものが完全には作られてはいませんから、一生懸命やっても完全なことができないことはありえます、最善をつくすということですね。それと燃え尽きないためには、ぜひとも様々な境界線を守っていくが大事です。たとえば時間の境界線を守るとか責任の境界線を守るとか、あるいはお金の境界線を守るとか。様々な境界線がありますが援助者として守っていくことがないとこれも燃え尽き一直線になる。
Q:相談するにしても無制限にするのではなくどこかに線をひく
A:たとえば勤務時間が5時半までなら、7時半にいらっしゃい8時半にお会いしましょうということはなるべく避ける
例外はありますが時間の境界線は援助者にとってはとても大切なことになる
Q:最後に人を援助する専門職として必要なことは、職場ではどのようなことに気をつけたらよいのでしょうか
A:まずスーパーバイズを受けるということ、自分の仕事の進め方が本当に適切かどうかということ、別の専門化家から援助をうけることが大事です。上司も係っていくということ。上司は働いている方に安全を配慮することが重要です。また初期の段階を早くつかんで適切なかかわりを持ち続けていくことが上司としての不可欠な要素だと思います。
Q:仕事で燃え尽きないためにといテーマでお話を伺いました

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