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2008年5月23日 (金)

手足口病

 夏になると手足口病が多く診られます。手のひら、足の裏、口の中に発疹と水疱ができることが特徴で、発熱を伴うこともあります。原因はウイルスですから抗生物質はききません。休んでいれば数日で治る風邪です。
 最近、この手足口病が中国で流行して死亡例もでています。中国では昨年は手足口病に8万人が罹り17人が死亡しました。今年は既に26人が死亡しています。中国でこのように手足口病が流行するのは、手洗いなどの基本的な衛生意識の低くさが一因と考えられています。中国政府は、手足口病を法定伝染病に指定して唯一の予防対策である衛生意識の向上を図っています。これまで中国についての報道はチベット問題から聖火リレー妨害、四川大地震に占められて、手足口病の報道はありません。しかしこれは幸いなことかもしれません。不安を煽る報道はないほうがありがたいです。
 手足口病の原因となるウイルスは一つではありません。主な病因ウイルスは、エンテロウイルスであるコクサッキ-A16、あるいはエンテロウイルス71 ですが、その他のエンテロウイルスの仲間も手足口病という症状をおこします。そのなかで、エンテロウイルス71というウイルスがまれに髄膜炎、脳炎をおこすことがあります。日本でも、約10年前に手足口病の経過中に死亡あるいは重篤な神経症状を合併した症例が複数の医療機関で経験されました。
 手足口病は基本的には軽症の病気です。重症合併症はきわめて稀なことであり、手足口病になったすべての患者さんに厳重な警戒を呼びかける必要はありません。しかし、初期の症状の変化には注意すべきで、とくに、元気がなく、頭痛・嘔吐、高熱を伴う、などが見られた場合は慎重に対処する必要があります。
 また手足口病は登校・登園禁止の病気ではありません。この件については、1993年に小児科学会が見解を発表しています。手足口病のウイルスは、喉からは1から2週間、便からは3から5週間排泄されます。発症後のウイルス排泄期間が長く、実質的に登校停止で感染を予防することは困難です。そのため発疹だけのこどもを登園禁止を強いる必要はありません。いまだに手足の発疹が出ている間は登園禁止にしている幼稚園・保育園がありますが考え直していただきたいと思います。ましてや登園許可証を要求するなど非現実的です。

手足口病についての詳しい情報は、国立感染症研究所 感染症情報センターのサイトをご覧ください。
手足口病とは?
http://idsc.nih.go.jp/disease/hfmd/about.html
東アジア地域で分離されるエンテロウイルス71型の分子疫学
http://idsc.nih.go.jp/iasr/25/295/dj2952.html

手足口病」の登校(園)停止に関する見解 (日本小児科学会雑誌 97:1875-1876,1993)
手足口病はエンテロウイルスの感染であり、コクサッキーウイルスA16型、エンテロウイルス71型による報告がほとんどである。コクサッキーウイルスA4、5、6、10型の報告もある。口腔内の粘膜疹(アフタ様)と手のひら、足の裏、膝、臀部の米粒大の水疱が特徴である。特記すぺきは中枢神経系合併症で、髄膜炎が主であるが、きわめてまれに弛緩性麻痺をおこす。ウイルスは口腔内、便中に排泄され、飛沫感染、経口感染をおこす。不顕性感染が多い。潜伏期間は3-6日でウイルスの排泄期間は長く、咽頭からl一2週間、便から3-5週間排泄される。本症の場合は、発症後のウイルス排泄期間が長く、実質的に登校停止で感染を予防することは困難である。また全体的にみて不顕性感染も多く症状も軽微のため、本症をもって他のエンテロウイルスと分けた特別の扱いは不要である。したがって本症の発疹期にある患児でも、他への感染のみを理由にして登校(園)を停止する積極的意味はないと考える。ただし、本症には合併も見られることがあり、個々の症例の最終判断は主治医が決めることになる。以上の考えに基づいて地域の学校医(または医師会)で見解を統一しておくことが望ましい。

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