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2007年11月27日 (火)

安全で楽しい遊具を作るために 1

 10月11日のNHKラジオ夕刊で、独立行政法人、産業技術総合研究所、デジタルヒューマン研究センター、人間構造理解チーム、チーム長の西田佳史さんの「安全で楽しい遊具を作るために」についての話がありました。興味ある内容でしたのでまとめてみました。
 最近は公園に設置した遊具で事故が起きるとその遊具が撤去されることが多く、そうなるとこども達の遊ぶ場がなくなってよくありません。そこで安全な遊具を設計するにはどうしたらよいか西田さんたちは研究してきました。
 まずどのような事故がおきているか調べてみると、半分以上が落下(転落)による事故でした。そのなかで24%が登る場所でおきていました。
 こどもが遊具でどのように遊んでいるのかというデータはありません。そこで科学的なデータを取るために西田さんは筋肉の微小な電流を計測するセンサーを使いました。西田さんはもともとセンサーの研究をしていたのです。こどもが力を入れると筋肉に微小な電機が流れます。その電気を計測することで、こどもが遊具のどこでどんな力を使っているのかがわかります。こどもが力をいっぱいつかっているところに落下の危険があると予測できます。
 こどもの行動の分析にはこの筋電計センサーとカメラを使いました。50人のこどもを年齢ごとに調査をしました。そして同じジャングルジムでもこどもの年齢によって登り方も違ってくることがわかりました。3歳以下と4歳以上では登り方が違っていました。石が出っ張ったところ手を引っ掛けて登る遊具では、出っ張りが2cm以下であると3歳以下のこどもには難しくて登れません。しかし出っ張りが5cmくらいになると簡単に登れるようになります。これを使うと設計者がどのあたりを難しく、または簡単にするか設計できるようになります。
 小さい子が間単に上まで登って落ちてしまうと大きな事故につながります。そこで小さい子は落ちるならできるだけ下で落ちるようにします。大きな怪我につながらないうちに落ちてしまうことで安全になります。最初の登りかけのところを難しくすると転落のリスクをコントロールできます。
 ところで遊具を安全にするとこどもが危険を察知する能力がなくなるのではという意見があります。西田さんたちは究極の安全な遊具をつくっているのではありません。落ちれば痛い、だけれども死んでしまったり重篤な後遺症の事故にはいたらない遊具を目指しています。

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安全で楽しい遊具を作るために 2

 またこどものけがの程度と原因の両方を分析するシステムを西田さんたちは開発しました。こどもの死亡原因は病気ではなく不慮の事故が1歳から19歳まで死因のトップです。こどもの事故を防ぐためには、どういう事故が起きているのか、その情報を集めるところからはじめました。国立生育医療センターと共同で開発した障害サーベーランシステムをつかって、多くの病院と協力して、事故にあった子が病院で治療するときの情報を蓄積します。。これまでに6000件以上データを集めることができました。公園ばかりではなく家のなかの事故も集めました。どういうところにけがをしているのか体の地図上にけがの情報を書き入れるソフトウエアをつくりました。するとけがが圧倒的に頭部に集中しており、なかでも左側の額にけがが多いことがわかりました。転倒、転落事故が多く、頭を打つ確率が高いようです。例えば、こどもは椅子やソファーで飛び跳ねて遊ぶことが多く、近くに机など角の鋭いものがあると落ちてけがをします。またソファーの背もたれ側から落ちて骨折をすることもあります。 
 家の中のどういうものにどういう危険があるか調べる指標として、けがをしてから完治するまでの治療費を試算しました。結果は椅子のけが 89000円、電気ポットの熱傷 79000円、味噌汁の熱傷 76000円、コーヒーの熱傷 55000円でした。転落と熱傷の治療費が高くかかっています。これは治療に要する通院回数が多くなるためです。お湯の温度を60度以下にするとずいぶん熱傷の危険性が減らせるデータが出ています。こどもがいる家では熱い味噌汁は食べないようにする。手の届かないところに置かないようにすることが重要になります。
 こどもが事故にあったら 親がちゃんと見ていなかったからだとよく言われます。また今までの事故予防の資料をみるととにかく「眼をはなさないでください」と書かれています。しかし24時間目を離さないでこどもを見ていることのできる保護者なんていません。そこで少しくらい眼を離しても危険な状態にならない安全な環境を作っていくことが事故予防につながります。危険を察知して知らせるセンサーの技術を開発して、例えばお風呂場に1歳くらいのこどもが来て 水遊びをし始めたらそれを教えてあげる(警報が鳴る アナウンスが流れる)。するとお母さんが急いで駆けつけて無事に保護できます。
 われわれの身の回りが計測の対象になって、具体的に数字とか映像で見せられるようになって、初めて科学的に扱えるようになってきます。これからは日常の科学技術が大きく発展し、安全まで高まってくることが期待ができます。
(10月11日のNHKラジオ夕刊、独立行政法人、産業技術総合研究所、デジタルヒューマン研究センター、人間構造理解チーム、チーム長の西田佳史さん「安全で楽しい遊具を作るために」より)

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