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2007年5月24日 (木)

はしか(麻疹)

 最近は麻疹をみなくなりました。若い小児科医は見たことがないでしょう。麻疹は過去の病気になりかけていたのに、この春から関東で流行しています。(実は昨年も関東では麻疹の発生はありましたが流行にはなりませんでした。)
 麻疹はどんな病気でしょうか。麻疹は感染力の強い病気です。患者さんの咳などで出た麻疹ウイルスは部屋の中に約2時間くらいは漂っています。だから患者さんがいなくなっても感染することがあります。これを空気感染といいますが、空気感染する病気は麻疹、水痘、結核などわずかです。
 麻疹はまず高い熱がでます。熱が出たばかりの時期の診断は困難です。口の中の粘膜に小さな白いブツブツ(コプリック斑)があれば麻疹を疑います。約3日たつと全身に赤いブツブツがでます。高い熱は約1週間続き、咳がひどくなり、からだが衰弱します。まれに息苦しくなる肺炎、意識がなくなる脳炎をおこして命を落とすことがあります。麻疹はウイルスの病気ですから抗生物質は効果がありません。麻疹ウイルスを殺す薬はありません。直接的な治療法がないのです。ただし前もって予防接種をしていれば95%の確率で麻疹にならずに済みます。麻疹は昔は「命定め」といわれ、こどもにとってはきつい病気でした。 麻疹にならないための唯一の方法は予防接種です。WHOは麻疹を地球上から撲滅しようと各国に働きかけています。欧米では90年頃から麻疹の予防接種を2回するようになり、その結果麻疹の発生は皆無になりました。2回接種が始まったきっかけは今回の日本と同じように80年代の終わりに米国の大学生の間で麻疹が流行したためでした。
 ワクチンの接種率が95%以上になると流行はなくなります。最近の幼児の接種率は95%を超えていますが、今回患者数が多かった高校大学生の年齢は90%を切っているいるようです。これはこの年齢がMMR(麻しん・風しん・おたふくかぜ混合)ワクチンのトラブルの時代に当たるためです。当時MMRワクチン接種後に髄膜炎の副反応が多く出たため、MMRワクチンが中止になり、麻しん単独のワクチン接種も控えた保護者がいらしたからです。
 ワクチンの接種率が落ちたため病気が流行したことは過去にもありました。百日咳ワクチンが70年代に副作用が問題になり75年に一時中止になりました。その直後から百日咳の患者数が急増し百日咳脳症で死亡する乳児も急増しました。81年に新三種混合ワクチンが再開された後から患者数もようやく減少しました。
 さてこれで考えさせられるのが日本脳炎ワクチン差し控えの件です。一昨年から日本脳炎ワクチンの差し控えが続いています。毎年100万人近い日本脳炎ワクチンの未接種者がでています。昨年は未接種の3歳児の日本脳炎が報告されました。新たな患者発生を防ぐためにも早急な対応が必要です。

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