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2006年10月18日 (水)

気管支が弱い?

 RSウイルスが今年も流行し始めました。風邪ウイルスの一つですが、乳幼児、特に6ヵ月未満の赤ちゃんが罹ると高熱、咳が強くなり、ゼーゼー喘鳴がでて気管支炎や肺炎になります。入院になることもあります。インフルエンザのタミフルのような特効薬がないので治療に難渋するウイルスです。ところでRSウイルス感染や喘息で気管支炎になるとゼーゼーという呼吸音がする喘鳴がでてきます。風邪をひいてゼーゼーいうと保護者の方から「この子は気管支が弱いのですか」とよく聞かれます。私は「気管支が弱いのではなくウイルス感染やハウスダストに過敏に反応しやすくなっているのです。」と答えています。医学的には気管支の過敏性の亢進と言います。私は「弱い」という言葉は使いたくありません。弱いと言ったらその子が気管支に障害を持っているようにも聞こえるからです。

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2006年10月 9日 (月)

法と科学の狭間で

 9月に熊本で3歳の日本脳炎患者が報告されました。救命はできましたが後遺症は避けられないようです(日本脳炎に罹ると3分の1は死亡し、3分の1は後遺症が残ります)。ワクチンは未接種でした。これが昨年からのワクチンを積極的に勧めない厚労省の方針の結果とは言いませんが、1980年代に韓国では日本脳炎ワクチン接種を緩めた結果、患者発生が約10倍に急増したことがありました。
 厚労省は8月31日付けの事務連絡で「日本脳炎ワクチンの説明書」を発表しました。
 http://www.med.or.jp/kansen/18ch3_104.pdf
その中に記された内容は
「70万から200万回に1回程度ADEM(急性散在性脳脊髄炎)が発生すると考えられています。なお、平成元年度から平成17年度までに日本脳炎ワクチンを接種した後に死亡された方の中で、ワクチンとの因果関係があるとして健康被害救済制度の認定を受けた方は4名です。」
「予防接種後にみられたADEMの患者さんで、予防接種法に基づく健康被害救済制度の認定を受けた方は、平成元年度から平成17年5月までで14名です。日本脳炎ワクチンの積極的勧奨差し控えについて平成17年5月31日、厚生労働省は都道府県に対し、定期予防接種として日本脳炎ワクチンの積極的な勧奨を差し控えるよう勧告しました。現行のワクチンの使用と重症のADEMとの因果関係があるとの判断が下されたことにより、より慎重を期するためこのような措置がとられました。」
以上の文章を読めば多くの保護者は、日本脳炎ワクチンは怖いワクチンで接種すればADEMという病気になったり死んだりするかもしれないと不安を覚えるでしょう。これでは国は接種をするなといっているようなものです。
 しかしWHO(世界保健機構)のワクチン安全性に関する世界助言委員会(the Global Advisory Committee on Vaccine Safety)は以下の報告を出しています。
 http://www.who.int/wer/2006/wer8134_35/en/index.html
「マウス脳ワクチン(従来の日本での日本脳炎ワクチン)接種後のADEMに関しては、5万-100万接種で1例の報告があるが確定的な研究報告はない。日本ではADEMの事例報告以後接種見合わせをしているが、ワクチン安全性に関する世界助言委員会の最近の結論は、「マウス脳ワクチン接種でADEM発症リスクが増加する明確な証拠は得られておらず従来のマウス脳ワクチン接種奨励の勧告を変更する理由はない」
 ここで注意しておかなければならないのは、WHOの報告は科学的な検証によるもので、厚労省の説明は法律的、行政的な考え方によるということです。厚労省がいうADEMとワクチンの因果関係には科学的根拠はありません。予防接種をした後で問題があった事例の健康被害救済を判定する委員会が決めたものです。行政的には救済をすることは意味があります。また過去の予防接種禍の裁判で国が敗訴したことからそうしなければならなくなりました。予防接種を受けた後で問題がおこればそれは予防接種による、「疑わしきは救済する」原則を裁判所が用いたためです。
 科学的な論証とは別の次元で、日本には予防接種に反対する人々もいます、また国には行政としての立場もあります。大人が自分の立場で考えを言うのはかまいませんが、病気に罹って苦しむのは子どもたちです。大切なのは子どもたちを病気から守る責任を大人が自覚することだと私は思います。

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