2021年5月31日 (月)

子どもへの新型コロナウイルスワクチン接種

2021年6月16日に日本小児科学会が新型コロナワクチンの提言を発表しました。
「新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~」
http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=374

以下が提言の要旨です。
・子どもを新型コロナウイルス感染から守るためには、周囲の成人(子どもに関わる業務従事者等)への新型コロナワクチン(以下、ワクチン)接種が重要です。
・重篤な基礎疾患のある子どもへのワクチン接種により、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の重症化を防ぐことが期待されます。
・健康な子どもへのワクチン接種には、メリット(感染拡大予防等)とデメリット(副反応等)を本人と養育者が十分理解し、接種前・中・後にきめ細やかな対応が必要です。

新型コロナウイルスワクチンについては、国外での小児(12~15歳)を対象とした接種経験等をもとに、日本でも2021年5月31日に12歳以上の小児へのワクチン接種が承認され、6月1日から適用となりました。
国内では小児に対するワクチン接種後の副反応に関する情報はありません。一方で、国内の医療関係者約2万人へのワクチン接種後の調査から、接種部位の疼痛等の出現頻度が高く、若年者の方が高齢者より接種後に発熱、全身倦怠感、頭痛等の全身反応を認める割合が高いことが明らかになっています。
学会では、12歳以上の健康な子どもへのワクチン接種は意義があると考えています。

ちなみにファイザー社製新型コロナワクチンについて、海外での治験から、16歳以上の有効率は94.6%でしたが、12歳から15歳におけるワクチン有効率は100.0%という報告があります。

さて日本では65歳以上の高齢者から接種がはじまり接種者数が増えてきています。
接種で問題になるのはアナフィラキシー等の接種後の副反応です。
日本の臨床の現場では一般に、皮膚粘膜、呼吸器、循環器、消化器から二つ以上の臓器に症状が出てきた場合をアナフィラキシーといいます。
強い蕁麻疹だけではアナフィラキシーではありません。喘息のような喘鳴や腹痛・嘔吐を伴ったらアナフィラキシーを考えます。

2021年1月18日時点で米国での予防接種後副反応報告システムに報告されたアナフィラキシーは、ファイザー社のワクチンについては、
頻度:5件/100万接種、年齢中央値:38歳、女性:94%、発症までの時間中央値は10分で15分以内が74%、30分以内が90%でした。

ところで日本で報告されたアナフィラキシーも世界基準で見直すと数がだいぶ少なくなることが話題になっていました。
そこにはアナフィラキシーの診断基準の違いがあります。

日本では、2021年5月16日まで報告されたアナフィラキシーの事例は943件でした。
しかし海外の基準であるブライトン分類で見直すと日本のアナフィラキシーは146件となり、報告例の15.5%にしかなりません。
この数は、100万回接種当たり24件で米国や英国と比べても日本でのアナフィラキシーは決して多くはありません。
日本ではアナフィラキシーでの死亡例はなく、前例が快復しています。

ブライトン分類では、アナフィラキシーの必須基準である、突発性の発症・兆候および症状の急速な進行・2つ以上の多臓器の症状があるだけでなく、、
皮膚/粘膜症状、循環器症状、呼吸器症状にそれぞれ規定された、Major症状と、
皮膚/粘膜症状、循環器症状、呼吸器症状、消化器症状、臨床検査にそれぞれ規定されたMinor症状を組み合わせでレベル1から5までに分類されます。

ブライトン分類では、レベル1から3をアナフィラキシーとしています。
日本ではアナフィラキシーと報告されたなかで最も多かったのはレベル4(十分な情報が得られておらず、症例定義に合致すると判断できない)が82.5%でした。
またレベル5は(アナフィラキシーではない 診断条件を満たさないことが確認されている)です。
そのため日本でアナフィラキシーと報告された例が国際基準ではほとんど当てはまらなくなりました。

ところで循環器症状については血管迷走神経反射および起立性低血圧による失神がアナフィラキシーとの鑑別が難しいです。
アナフィラキシーでは血圧低下と頻脈、皮膚は蕁麻疹、紅潮、血管浮腫になり、血管迷走神経反射では血圧低下と徐脈、皮膚は顔面蒼白、発汗、冷たく湿った肌になります。

次に接種の際に提出する予診票から注意点を見てみます。

◎ 薬や食品などで、重いアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を起こしたことがありますか。
食物アレルギー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、アレルギー体質等だけでは、接種不適当者にはなりません、接種するワクチン成分に関係のないものに対するアレルギーを持つ人も接種は可能です。ただし1回目の接種でアナフィラキシーを起こした人は、2回目の接種はできません。
卵やゼラチンは含まれていないためこれらの物質にアレルギーのある人も接種は可能です。
1回目の接種後に遅発性の局所反応(紅斑、硬結、掻痒症)があっただけでああれば、2回目接種は可能です。
ところでファイザー社とモデルナ社のワクチンにはポリエチレングリコールが含まれています。
医薬品、ヘルスケア製品、スキンケア製品、洗剤などに含まれるポリエチレングリコールに重度の過敏症が既往が明らかな方は接種不適当者に該当します。
ただしポリエチレングリコールのアレルギー検査は今はまだありません。

◎ これまでに予防接種を受けて具合が悪くなったことはありますか。
過去に迷走神経反射を起こしたことがある方は、接種後30分間の経過観察を行います。
迷走神経反射を予防するためベッドに臥床して接種することもあります。

◎ 接種間隔は、ファーザー社のワクチンは3週間、モデルナ社のワクチンは4週間です。

◎ 最近1か月以内に熱が出たり、病気にかかったりしましたか.
治療後2週間を目安として間隔をおきます。

◎ 最近、新型コロナウイルス感染症に感染歴がある場合は、臨床的に回復していれば接種は可能です。
米国CDCからは、隔離を中止するための基準がみたされるまで延期する必要があるという意見が示されています。
実際は、10日から14日の間隔をあけた方が良いでしょう。

◎ けいれん(ひきつけ)を起こしたことがありますか。
小児の熱性けいれん等の既往のみでは、接種不適当者にはなりません。
ただし2回目の接種では発熱を認めることがあるため、発熱によってけいれん発作が生じやすいとされているてんかん患者については、発熱が生じた場合の発作予防策と発作時の対策をする必要があります。

◎ 妊娠中、授乳中の方も接種は可能ですが、接種のメリットとデメリットをよく検討して接種を判断してください。
日本産婦人科学会の提言が発表されています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報
http://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=10
COVID-19 ワクチン接種を考慮する妊婦さんならびに妊娠を希望する⽅へ
妊産婦のみなさまへ ―新型コロナウイルス(メッセンジャーRNA)ワクチンについて―

◎ 新型コロナワクチンと他のワクチンとの接種は、13日以上の間隔をおくこととしています。
13日以上とは2週間と考えてもらってよいです。

最後に、接種を受けるときの注意点です。
腕の筋肉の緊張を解くために、腕はだらりと下げるか、お腹の下大腿部に置くようにします。腕を腰に当てる姿勢は筋肉の緊張をまねき接種による障害がでやすいので避けます。
接種部位は三角筋中央部で肩峰から真下に3横指程度下です。
接種部位が上すぎるとワクチン関連肩関節障害を、下すぎると橈骨神経障害を起こすリスクがあります。

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2021年4月29日 (木)

子どもと新型コロナウイルスの変異株

新型コロナウイルスの変異株が猛威を振るい始めました。変異株は従来株より感染力が強く、発症から短い時間で重症化しやすく、若い人も重要化することがあると言われています。
ところで子どもが変異株に感染するとどうなるのでしょうか。
少し前になりますが日本小児科学会が3月23日に「子どもと新型コロナウイルスの変異株感染について」を公開しました。
「子どもと新型コロナウイルスの変異株感染について」 http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=333
それによると、 子どもは、新型コロナウイルスにかっても症状が出なかったり、出たとしても軽くすむことが多い多いことが知られていますが、 変異株に関してはどうかと問うています。
英国で流行が始まって変異株は既存株に比べて最大70%感染力が高く、子どもが集まる施設ではクラスターが報告され、多くの子どもが感染しています。ただロンドンでは変異株による感染は、特に子どもに多いということはなく、成人と子どもの感染者の割合は変異株が出現した前後で大きく変わっていません。
また、変異株が子どもに感染した場合、既存株と異なる経過を示すことはないと報告されています。子どもでは感染者の多くが無症状から軽症で、既存株でも変異株でもその違いはありません。変異株が子どもにより重い症状を引き起こす可能性を示す証拠はこれまでに得られていません。
しかし最後には、子どもの感染者については慎重に見ていく必要がありますと結んでいます。

文部科学省は同省のサイト「幼小中高・特別支援学校に関する情報」のなかで
https://www.mext.go.jp/a_menu/coronavirus/mext_00020.html
「感染症の専門家へのインタビュー動画について」感染症の専門家のインタビューを4月23日に動画配信しています。
国際医療福祉大学医学部 和田耕治教授
「子供たちの感染状況と学校の感染症対策」
https://www.youtube.com/watch?v=wVzxK742mXw

動画では、日本で主流となりつつある英国株と呼ばれる変異株が子供たちにこれまで以上に悪影響があるのではと不安が広がっていることを受け、現時点でわかっていることを正確に伝えることを目的としています。
児童生徒の感染状況については、変異株に感染した子供の事例が増えているものの、厚生労働省の専門家会合で示された国内データから、現段階では15歳未満の小中学生について変異株の感染が従来のものと比べてより広がりやすいということは明らかではない。重症化からも従来同様に守られており、あくまでも感染拡大の主体は成人、特に20歳代が多いという状況が明確になったと言っています。
学校における感染対策や変異株で気を付けるべき点については、変異株だからということよりも普段からの対策がしっかりできているかが重要だとして、生活している地域に感染拡大の状況が見られた場合は、密になる行事や歌を歌うといった感染拡大のリスクがある行動を減らす必要があると言っています。
授業等、日々の教育活動においては、体調・症状の確認を日々行い、喉の痛みや咳、発熱、下痢等、軽微な体調不良の場合でも必ず休むようにし、休んだ児童生徒に対して「コロナじゃないの」といった差別的な発言がないよう配慮することを求めていて、これから暑さが増す中でも、できる限りマスクを着用することが重要だと言っています。
2020年は状況がわからない中で子供たちを守るための一斉休校が行われたが、1年間のデータから、専門家の間でも地域で一斉休校が必要だという考えには至っていないと言っていて、感染拡大を防ぐためには、まずは接触機会を減らすことが何よりも重要だと言っています。
家庭における感染対策では、毎日の体調確認し熱・咳・のどの痛みなどの症状があれば他の家族と距離を開ける、高齢者と同居している場合には接点を持たないよう気を付けてほしいと言っています。


4月21日の朝日新聞デジタルに長崎大学小児科の森内浩幸教授の「私は一斉休校に反対する 小児科医が語る変異株の事実」が配信されています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e8d6d72d5df41d929db37718749ac5ecc25ed84c
この中でイギリス株日本より前に変異ウイルス株の流行が広がり、大きな感染の波ができたイギリスでは、感染が最初に広がったのは15~24歳で、24~49歳と続き、15歳未満の拡大が見られたのは一番最後だったという欧州疾病予防管理センター(ECDC)の論文を紹介しています。
それによると、15歳未満は、感染の拡大がみられた時期がほかの年齢層に比べて遅かったことに加え、ピークの山も一番低かった。このことから、変異ウイルス株の場合でも、子どもは流行の中心ではなく、子どもから大きく広がった事実はないことがわかり、同様に、子どもが重症化しにくいということも、変わっていないと話されています。
当初、イギリスでも「これまではかかりにくかった子どもの感染者が増えている」として、「子どもが感染する」例が多く報道されていました。ただ、流行の波が終わったあとに振り返ってみると、それは「注目されたから報道された」という報道バイアスがあったことがわかっています。
現時点ではイギリス株で子どもが感染拡大の中心になるという事実はないということです。

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2021年3月31日 (水)

ワクチンが不足

新型コロナウイルスのワクチンについては、ファイザーのワクチンが欧州から入らず接種が遅れていて、さらに別のメーカーのワクチンも治験と承認が遅々として進まない状況になり、日本はOECD加盟国の中では最下位の接種率になっています。

ところで小児の定期接種の日本脳炎ワクチンが不足して接種を受けれない子どもたちが出てきています。
日本脳炎ワクチンは国内では阪大微研研究会の「ジェービックV」と熊本のKMバイオロジクスの「エンセバック」があります。そのうちの阪大微研の工場の製造工程で問題が発生して、4月から「ジェービックV」が出荷停止になり再開が12月になる予定です。その結果日本脳炎ワクチンが一気に不足して病院や診療所に対して供給制限がかかるようになりました。
そこで厚生労働省からも優先接種対象者が設けられ、以下のようになりました
(1)1回目2回目の接種を受けていない方
(2)概ね6歳半~7歳半未満の方で3回目の接種が終わっていない方
(3)12歳の方及び高校3年生相当~19歳の方で4回目の接種が終わっていない方
上記以外の接種対象の子どもは今年は接種を見合わせて来年に接種を予定してほしいということになりました。当院でもこの方針でご案内しています。
なんとか早い事態の改善を期待します。

追記
4月に入ったら今度は任意接種のおたふくかぜワクチンが不足になりました。
おたふくかぜワクチンは国内ではタケダと北里第一三共がつくっています。そのうちのタケダの工場の製造工程で問題が発生して4月からタケダのワクチンが出荷停止になり再開が10月末になる予定です。そのた日本脳炎ワクチン同様、国内のワクチンが一気に不足して病院や診療所に対して供給制限がかかるようになりました。
当院でも1回目接種の子どもさんを優先して、2回目の子どもさんは年末まで待ってもらうにしています。

日本では毎年何らかのワクチンが不足に陥ります。ワクチンの危機管理ができていません。新型コロナウイルスワクチンの接種が大幅に遅れるのもさもありなんで残念なことです。

「糸島市における新型コロナワクチンの接種について」のホームページをみると4月16日に「現在、糸島市にワクチンは供給されておりません」とあります。
もちろん私もまだ接種できていません。
糸島市における新型コロナワクチンの接種について 

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2021年2月28日 (日)

食物アレルギーの診断書

年度末が近づくと保育園・幼稚園・学校へ提出するアレルギー診断書の依頼が増えてきます。食物のアレルギーがあるため園や学校の給食で食べれない食材を伝える生活管理指導票です。
公的な書類なので保護者の希望だけに基づいて書けません。食材を食べた時の症状だけでなく、アレルギーを疑う食材の負荷試験、血液検査の所見などを踏まえて、医師がアレルギーと診断する根拠を記載しなくてはいけません。
また卵白や乳などの食材の血液検査が陽性だけでは除去の対象にはなりません。負荷試験をしてから症状があったら初めて除去を決めるのが正式なやり方です。
以前は血液検査の値が低くてもずっと除去にしていた例もみられました。最近は保護者の理解も進み院内で食物負荷試験をおこなったり、家庭で順番に食べてみる内容を指導したりしてから判断をするようになりました。

アレルギーの血液検査は、卵なら卵白や卵黄といった項目があります。これは以前からある項目で粗抗原検査といいます。食物アレルギーは食材の特定の蛋白質に対して自分の免疫細胞が異にの反応してしまって蕁麻疹をおこす物質とかを出してしまいます。その結果、蕁麻疹や喘鳴などいろいろな反応がおこってしまいます。粗抗原の検査ではアレルギー反応のもとになる蛋白質だけでなく関係ない蛋白質も含んでいます。その結果、厳密さに欠けるところがあります。
最近はアレルギー反応のもとになる特定の蛋白質だけをみるコンポーネント検査が増えてきました。鶏卵ならばオボムコイド、乳ならカゼインや、β-ラクトグロブリン、小麦ならグルテン、ω-5グリアジンなどです。さらにピーナッツには Ara h2 というコンポーネントが検査できるようになり食事指導等がやりやすくなりました。ナッツ類のコンポーネントはここ数年で充実してきました。

食物アレルギーには血液検査が陽性でなくても食べるとアレルギー症状がでることがあります。特に食べたら嘔吐や下痢などの消化器症状のタイプは血液検査ではわからないことが多いです。このようなアレルギーを消化管アレルギーと言いますが、診断が難しことが多いです。確定診断のためには、原因食物を負荷試験して症状がでるかどうかを確認するか、消化管組織検査をして消化管炎症のおもな病態となる白血球の一種の好酸球が増加していること。さらに他の消化管の病気が除外できることが必要です。

最後に牛乳を飲んだらお腹がゆるくなるのは乳糖不耐症の可能性があります。これは消化酵素のラクターゼの欠乏により乳糖が消化できないためです。食物アレルギーではありませんが給食での牛乳除去の対象になります。

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2021年1月31日 (日)

新型コロナウイルス感染症 現在のまとめ

新型コロナウイルス感染症で子どもに関する現在の知見をまとめてみました。
ワクチン以外の内容の多くは長崎大学医学部小児科森内浩幸教授の講演で教えて頂いたことです。

日本人にファクターXはない
欧米に比べて日本人の感染が桁違いに少ないのは理由があり、それをファクターXと言われるようになりました。
しかし人口100万人あたりの死者数は、米国747、英国776、米国ではアフリカ系住民が多いのに、ケニア14、エチオピア26でアフリカの国では多くはなく、白人もニュージーランド5です。
死者数は環境の違いで人種の違いではないともいえます。
アジアでは中国3、台湾3,韓国10、日本15で、アジアでは日本は死者数が多い国になります。
またダイヤモンド・プリンセス号の致死率をみると、外国人0.9%、日本人3.3%で致死率は日本人が高かったのです。
日本人にファクターXがあるのではなく、全体の感染者数が違うので犠牲者の数も違っているだけのようです。

ユニバーサルマスキングの重要性
新型コロナウイルス感染症は発症する前に感染のピークがあります。
全体の44%は発症前に感染しており、感染性のピークは発症の0.7日前です。
だからこそ、無症状の人もマスクをしなければなりません。
症状のある人と接するときだけ注意しても6割は感染を防げません。

新型コロナウイルスはいつまで人に感染していくのか
PCR検査では感染力のあるウイルスが体からいなくなっても、ウイルスのかけらまで拾って検査してしまうので、陽性が感染力を示すわけではありません。
生きたウイルスが検出されるのは、発症後8日までと言われています。
データからは発症して6日目以降では、他の人にほとんど感染させていません。

3密回避の重要性
感染者の4分の3は誰にも感染させていないのに流行がおこるのはなぜでしょうか。
感染源が密な環境にいるかいないかで、感染力が18.7倍違ってくると言われています。
感染拡大の最大の決め手は「3密」の場にいるかいないかです。
ユニバーサルマスキングに加えて、フィジカルディスタンスを2メートル以上に保つならば感染のリスクは非常に低くなります。

子どもに感染は少ない
12月までの統計で、感染者数は10歳未満は2.4%、10代は6.0%、死亡者は10歳未満、10代ともいませんでした。
子どもはほとんどが無治療で治ってました。
欧州では子どもの感染者数も多いため死亡例も数例ありますが、いずれも心血管系異常や悪性疾患の基礎疾患がありコロナが原死因とは考えられていません。
米国では1歳未満は重症化することもありました。乳児は注意をします。
子どもに新型コロナウイルス感染症が少ないもっとも有力な説は、ウイルスがヒトの細胞に侵入するときに必要な受容体ACE2が子どもには有意に少ないからと言われています。

子どもには新型コロナウイルスよりRSウイルスが怖い
小児では新型コロナウイルスの重症度(致死率)は極端に低く、インフルエンザは少し高く、RSウイルスはさらに高くなります。
子どもにとって恐いのは何よりRSウイルス、次いでインフルエンザ、新型コロナウイルスは子どもにとっては基本的に風邪のウイルスです。

感冒コロナウイルス
人に感染するコロナウイルスは一般的な風邪症状しかおこさない感冒コロナウイルスが4種類、他にSARS、MARS、そして新型コロナウイルス(SARS-CoV2)がいます。
感冒コロナウイルスは4から6歳くらいまでに感染します。感染は冬場に多くなります。
感冒コロナウイルスも2歳未満か基礎疾患を有する児、高齢者においてはまれに重症急性呼吸器感染をおこすことがあります。
感冒コロナウイルスに免疫がない高齢者は、新型コロナウイルス並に危険なウイルスになることがあります。
ただし感冒コロナウイルスと新型コロナウイルスの最大の違いは疫学像です。
感冒コロナウイルスは5歳前後までにほぼ全員がかかるので大人になったら既に免疫があるのでかかりにくくなります。
新型コロナウイルスはまだ誰もかかっていないので、子どもも大人も等しくかかり、高齢者もかかりやすく重症化しやすくなります。
感冒ヒトコロナウイルスもはじめて世に出てきたときは新型コロナウイルスと同様に動物由来の新興ウイルスでした。
大流行をおこし、多くの人が重症化し亡くなった人も多かったと思われます。その後、集団免疫が確立して風邪のウイルスになりました。
しかし感冒コロナウイルスが最初に世の中に出てきて大流行をおこした昔には高齢者で亡くなる人は少なかったと思われます。
なぜなら昔は平均年齢が縄文人で15歳、弥生人は25歳、江戸人は37歳、大正人でも42歳でした。 
江戸時代に新型コロナウイルスがやってきても、高齢者は少なかったので死者数は少なく、大人もかかりやすい風邪の流行にすぎなかったでしょう。
そのうち全員がかかって集団免疫が確立してただの風邪になります。

子どもの新型コロナウイルス排泄量は大人よりも多いのか
いろいろなデータが発表されていますが、子どものウイルス排泄量が特別多いことはないようです。

子どもが他の人にうつす感染力は弱い
口から出た飛沫は、呼吸では0.5m、会話で1m、咳で2m、くしゃみで3から6m飛びます。
新型コロナウイルスに感染しても子どもはほとんどが無症状なので、咳とかくしゃみはなく飛沫もせいぜい1mなので感染力は弱いといえます。
子どもと大人の顔の位置を比べると、背が低い子どもの飛沫は大人の顔には届きにくく、以上からも子どもの感染力は決して強くはありません。

学校での感染の実情
日本の6月1日から11月25日のデータをまとめた結果では、学校における新型コロナウイルス感染は第3波がきて、学校も再開され感染した児童は増えてきましたが、子どもは無症状が多く、小学生は大半が無症状で、小中高特別支援学校でも重症例は一人もいませんでした。
小中学校では大多数が家庭内感染で学校内感染は小学校では6%、中学校では10%に過ぎませんでした。
幼稚園でも家庭内感染が70%で、園内で感染は13%でした。
5人以上の感染者が出たクラスターは、小学校が0.06%(1700校に1校)、中学校が0.11%(900校に1校)、高校になるとリスクが高くなり0.75%(130校に1校)でした。
インフルエンザでは学校での流行が家庭に持ち込まれ社会全体へと拡がっていきます。
新型コロナでは社会の中での流行が家庭に持ち込まれ学校の中にも若干拡がっていきます。

子ども達にとっての新型コロナウイルス感染症
子どもにとっては新型コロナウイルスの重症度は普通の風邪程度です。RSウイルス感染症やインフルエンザと比べて圧倒的に軽症です。
インフルエンザとは違って、子どもは流行の中心にはいません。それどころか、ごく少数派にすぎません。
それなのに、学校や保育園に行けなかったり、お友達と遊べなかったり、成長・発達に欠かせない様々な機会を失ったりしています。虐待・事故のリスクも増えています。
いわば子ども達は大人を守るために、犠牲になっているとも言えます。
大人達が失った年月とは異なり、成長・発達過程の年月は取り返すことが出来ません。
なぜ子ども達に対してインフルエンザ流行への対応以上のことを強いるのでしょうか。
保育園や学校で流行しても社会全体に広げることはありません。
過度の忌避や休校で子どもたちの心身の健康が間接的にそして深刻に脅かされています。

これから先、感染者が増えれば子どもの感染者も増える
子どもにとっては軽症である新型コロナウイルス感染症でも、乳児や基礎疾患のある子、心身障害児・者、ダウン症候群は新型コロナウイルスのハイリスクになり注意が必要です。

普通の感染症をみなくなった
全国民レベルでの感染対策のおかげで、インフルエンザ、アデノウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、マイコプラズマ、溶連菌などの普通の上気道、呼吸器の感染症がみられなくなりました。
それは良いことですが、このことが2から3年も続くと、一般的な風邪ウイルスに対して免疫を持たない小さなことも達の集団が膨れ上がってきます。
そような感受性のある集団にウイルスが入り込むと大流行をおこしてしまします。
来年か再来年に新型コロナウイルス感染症を抑制できたら、今度はインフルエンザなど他のウイルスの大流行がおこる恐れがあります。

新型コロナウイルスのワクチン
今年からワクチン接種が始まりますが、16歳未満は接種できません。子どもの治験ができていないからです。
m-RNA型のワクチンは非常に高い効果があるようです。
心配される副反応で、アナフィラキシーはどうしても避けられません。これまでのワクチンに比べ10倍くらい頻度が高いようですが接種後の対策を十分に取れば許容範囲と考えられます。
専門家の間で心配されていた、ワクチン接種後に稀にみられる急性散在性脳脊髄炎ADEMなどの神経障害や、接種後にワクチンの疾患に感染するとかえって症状が重くなる抗体依存性感染増強AEDなどの報告は今のところありません。
ワクチン接種は前向きに考えた方が良いと思います。

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2020年12月31日 (木)

この一年を振り返って

昨年の大晦日に、来るべき2020年がこんなにも世界中の人々に試練を与える年になるとは夢にも思いませんでした。
今年はこれまでとはまるで違う行動様式を求められるようになりました。
そして人々の健康と命を守る医療、生活を守る経済、社会を守る政治、この三者がバランスを取れなくなりました。

不幸中の幸いと言うか、日本では新型コロナウイルスで子どもが重症化することも亡くなることもありませんでした。また子どもが他の人に感染させる事例はほとんどありませんでした。子どもの感染はほとんどが家族や近しい大人からでした。
しかし子どもたちは突然の全国一斉休校、在宅学習、遠隔授業、学校行事の中止に翻弄されました。

新型コロナウイルスの第一波の流行時は病院や診療所への受診控えがあり、小児科では予防接種の受診も控える保護者もいらっしゃいました。幸い私のクリニックでは予防接種を控える方はほとんどいらっしゃいませんでした。保護者の方々の予防接種への意識の高さのおかげです。
全国民の感染対策の徹底でインフルエンザをはじめとする多くの呼吸器感染症の発生が大きく減少しました。これは良いことでした。

2021年は新型コロナウイルスの遺伝子の変異や、ワクチンが人々の行動様式を変えるのでしょうか。良い方向に改善することを期待しますがまだまだわかりません。

治療薬やワクチン開発に携わる科学者、最先端の現場で働く医療者と保健行政の関係者、社会基盤を支えるエッセンシャルワーカーには敬意を表します。そしてそれらの人々に応えるためにも我々一般人は感染対策の意識を高めて日々の生活を送らなくてはいけません。

 ことしは思いもよらない一年でしたが、来年が少しでもよい年であることを祈ります。
 みなさま良いお年をお迎えください。

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2020年11月30日 (月)

子宮頸がんワクチンの新しい話題

当院では昨年まで接種する女児が皆無に近かった子宮頸がんワクチンですが、今年に入り少しずつ接種する児が増えてきました。これは全国的な傾向のようです。
子宮頸がんワクチンの供給元のひとつであるグラクソスミスクライン社が、ワクチンに関する個別案内を行う自治体が増えたことにより、ワクチンの需要が増加しており
発注量が供給量を上回る場合は、出荷量の調整が行われると11月24日に発表しました。これはワクチン接種がふえてワクチンが不足しそうだということです。
全国的にはそこまで接種者が増えてきたということなのでしょう。

ワクチンに関する個別案内では、福岡市も11月に高校1年生相当女史の保護者あてに、子宮頸がんワクチンについてのリーフレットを発送しました。国はまだ「積極的な勧奨の差し控え」という立場なので、福岡市も「接種をおすすめするお知らせをお送りするのではなく、希望される方が接種を受けられるよう、みなさまに情報をおとどけしています。」としていますが、接種を希望する人は接種できますよと言っているのは明らかです。詳しくは以下のサイトをご覧ください。
子宮頸がん予防ワクチン(ヒトパピローマウイルス感染症予防接種)接種について
https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/hokenyobo/health/vaccine/2506HPV.html

そのような中、11月16日の日本経済新聞に「子宮頸がん 予防効果高く」という記事が載りました。これを読むとあれだけ世間が忌避した子宮頸がんワクチンの接種が最近になって増えてきたのを理解できます。
今までは子宮頸がんワクチンの効果はがん自体の予防効果を明確に示すデータがなく、「前がん病変」を予防するというデータしかありませんでした。しかし今年になって、子宮頸がんの発症リスクが明らかに減るというデータが発表されました。
それと世界保健機関(WHO)の推計では、2019年に15歳の女性のうちHPVワクチンの接種を完了した割合は英国やオーストラリアで8割、米国で55%でしたが、日本は突出して低く0.3%とでした。この接種の低さをWHOから相当に叱責されてたようです。

日経の記事の要約は「接種率が低い子宮頸(けい)がんを防ぐワクチンの有効性を示す研究結果が相次いでいる。スウェーデンのカロリンスカ研究所はリスクが最大9割減少すると発表。大阪大学は日本の接種率の低下で4千人以上の死者が増加すると推計した。厚生労働省は副反応への懸念から積極的な接種呼びかけを中止してきたが、転機を迎えている。」です。

以下も日経の記事からです、
子宮頸がんは子宮の出口近くにでき、若い女性のがんの多くを占めます。日本では毎年約1万1千人の女性がかかり、毎年2800人が死亡し、30代までに治療で子宮を失う人も毎年約1200人にのぼるといわれています。
スウェーデンのカロリンスカ研究所は10月、10~30歳の女性が接種すると、子宮頸がんの発症リスクが63%減るとの研究結果を発表しました。約167万人の女性について、接種の有無で発症リスクが異なるかを調べたところ、10~16歳に限ると発症リスクは88%減っていました。

日本で積極的勧奨の中止の要因となった「接種後に持続的な痛み」や「意図しない体の動き」などについては、名古屋市立大学の鈴木貞夫教授らは、名古屋市の約3万人の女性を対象に接種の有無ごとの発症リスクを比較し、18年に報告し、痛みや意図しない体の動きなど接種後に報告された24の症状について、接種で発症リスクが上がるといった関係はみられなかったとしました。9月にはデンマークの研究チームが、慢性的な痛みが続く「複合性局所疼痛(とうつう)症候群」などと接種に因果関係はみられないと報告しました。
厚労省内にも「積極的勧奨を再開すべきだ」との意見はあるようですが、健康被害を受けたとして国や製薬会社を訴える訴訟も起きており、なお慎重です。

厚労省は7月、製薬会社MSDの新たな子宮頸がんワクチン(組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン)の製造販売を承認しました。
また日本では女性のみが接種対象として承認されている子宮頸がんワクチン(ヒトパピローマウイルワクチン)ですが、ヒトパピローマウイルスは男性もかかる中咽頭がん、肛門がん、陰茎がんなどの原因となることでも知られています。子宮頸がんワクチン(ヒトパピローマウイルワクチン)「ガーダシル」を製造販売しているMSD株式会社が男性への適応拡大を承認申請しているのを受けて、厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は、男性接種への適応拡大について審査することを決めましたた。先進国では男性への接種が当たり前になっています。

子宮頸がんワクチン(ヒトパピローマウイルワクチン)は内容・効果・適応が進化しています。

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2020年10月31日 (土)

スキンケアとプロアクティブ療法

乳児の湿疹や冬の乾燥からくる湿疹は保湿やステロイド軟膏で対処します。
しかしなかなか症状が良くならない例があります。
どこに問題があるのでしょうか。

まず乳児にはなぜ湿疹が多いのでしょう。
新生児は母体の性ホルモンの影響で皮脂分泌が増えて脂漏性皮膚炎がみられます。
しかし3か月を過ぎると皮脂の分泌量が生涯で最も少なくなり肌のうるおいが最低になります。
その結果カサカサ肌になってこの時期にアトピー性皮膚炎が最も多くなります
その上に機械的刺激・科学的刺激が加わり続けるとドライスキンではかゆみ過敏になりますます肌が荒れてきます。
おむつ部では拭きすぎや尿・便の刺激、口の周りでは乳児が母親の服などに顔をスリスリしたりする刺激やゆだれ・食べこぼしの刺激です。

肌の対策の第一はスキンケアでまず大事なのは体の洗い方です。
石けんはよく泡立てて、手でなでるように洗います。ガーゼやタオルを使わずに手洗いが一番良いです。
入浴時の洗いすぎは皮脂がより少なくなってしまうので注意します。
しっかり石けんの成分を洗い流した後は、保湿剤をぬります。

入浴後の角質水分量は入浴直後は入浴前の約2倍ですが、約20分で元に戻ってしまします。
また60分で入浴前より乾燥してしまします。
入浴後は5から15分以内に保湿剤を塗ります。
そして入浴直後だけでなく朝起床時、外出の前後、プールの後など1日に何回もぬることが大事です。

保湿剤には、油脂性の皮膜で水分の蒸散を防ぐワセリン(プロペト)と、水分と結合して保湿効果を発揮するヘパリン類似物質(ヒルドイド、ビーソフテン)があります。 、
秋・冬は油分の多い軟膏やクリームタイプ、夏や頭皮にはのびのよいローションタイプが良いでしょう。

保湿剤はたっぷりと優しくなでるように、少しテカテカするくらいぬります。
外用薬が適量ぬられた皮膚は、ティッシュを付けて逆さにしても落ちないくらになります。

さてカサカサは保湿剤を十二分にぬれば改善していきますが、ガサガサが強いところや赤くなったり、びらんになったところは炎症という状態になっています。
炎症はステロイドをぬらないと改善しません。

ステロイド外用薬の塗る量やランクを自分で調整したり、湿疹が良くなったら勝手にやめてはいけません。
ステロイド薬はできるだけ使わない方が子どものためであるという思いこまず医師に相談するようにしましょう。

今までは皮疹が悪化した時だけステロイドをぬって、炎症が治まったら保湿剤だけをぬるという方法が主でした。
これはリアクティブ療法と言われます。しかし一見よくなったように見えても皮膚組織には炎症が残存しているためすぐに再燃してしまいます。


そこで最近は炎症が良くなったように見えた後も落ち着いた後も保湿剤を毎日ぬるだけでなく、定期的にステロイド外用薬をぬることが勧められています。
これをプロアクティブ療法と言います。この方法が湿疹が再燃するまでの期間が長く、再燃回数も少ないことがわかってきました。

たたおえば炎症が良くなってもステロイド軟膏をすぐに中止せず、1日2回から1日1回、2日に1回、3日に1回、1か月ごとに週に1回に減らす、途中再燃したら皮疹が無くなるまで1日2回に戻る
続けることによってやがては炎症が起こりにくい状態になってきます。

スキンケアとプロアクティブ療法で完全に湿疹やアトピー性皮膚炎を治すことを目指しましょう。

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2020年10月 4日 (日)

この冬は その二

新型コロナウイルスのワクチンの開発競争が過熱しています。そして米国、中国、ロシアはWHOなどが立ち上げた新型コロナウイルスのワクチンの公平供給を目指す国際枠組みに不参加で拠出金の協力をしていません。大国はワクチンを政治利用するようにみえます。
日本政府は来年前半までに全国民に行きわたる量のワクチンを確保する方針です。厚労省の分科会では「まん延防止上、緊急の必要がある」として「臨時接種」とし、国民には接種を受ける「努力義務」を課すとするようです。これには分科会の委員の中から「どようなワクチンが出てくるか分からない中で接種勧奨と努力接種を付けることに強い抵抗感がある」との指摘がでました。私もまったくその通りと考えます。

ワクチンは最も安全性を要求される薬剤です。既存のワクチンは何年もかけて忍耐強く研究・治験を行い開発されています。今度の新型コロナウイルスワクチンは既存の生ワクチンや不活化ワクチンとは全く異なる仕組みのワクチンがほとんどです。アデノウイルスを運び屋としてに抗原たんぱく質の遺伝子を組み込んだウイルスベクターワクチンやRNAワクチン、DNAワクチンなど今までほとんどなかったか、史上初めてのワクチンばかりです。それを半年か1年の開発期間で使うとは信じられません。

コロナウイルスワクチンでは感染症やワクチンの専門家が危惧する問題があります。それがADE(抗体依存性感染増強)です。普通ワクチンを接種すると免疫反応でウイルスなどの病原体を無力化する抗体が作られます。そしてワクチン接種後に体内に病原体が入ると、この抗体が感染や重症化を防ぎますが、抗体が逆に身体に悪さをする可能性もあります。抗体がウイルスを無力化できないと、抗体が架け橋のようになり、ウイルスが免疫細胞に入って、その中でウイルスが増えて感染を強めると考えられています。これがADEで、以前デング熱ワクチンの治験で小児が死亡した原因と考えられています。過去のコロナウイルスワクチンでも動物実験の段階でADEが確認されたとの報告もあります。

コロナウイルスは呼吸器感染のウイルスです。呼吸器ウイルス感染症に対するワクチンでは、感染予防効果を十分に有するものが実用化された例は今までありません。例えば同じ呼吸器感染のインフルエンザのワクチンでは、ワクチンを注射して血液の中にウイルスを直接攻撃する中和抗体を作っても、中和抗体は血中にありますからウイルスが気道に付くことは防げません。インフルエンザワクチンは重症化予防が主な目的で、感染予防までは望めないワクチンです。コロナウイルスワクチンも同じではないかと思います。ワクチンさえできれば新型コロナウイルスに感染せず元の生活に戻れると大きな期待は持たない方がよいでしょう。

新型コロナウイルスワクチンの開発に取り組む欧米製薬企業9社はワクチン開発に際し、「安全性と接種する個人の健康を最優先する」との共同声明を発表しました。高い倫理観と、深いサイエンスに裏づけされた成果物としてのワクチンや治療薬の開発に取り組む姿勢を示したものです。通常のプロセスを経ずに、早期承認することなどないよう強調しました。すなはち政治の圧力で中途半端な製品は世に出さないと言ったようなものです。

新型コロナウイルスワクチンが小児でも治験がおこなわれているのか私はまだ知りません。小児への安全性は担保されるのかまだ不明です。新型コロナウイルスは小児では感染しても無症状か軽症です。重症者は限りなく少数です。政府が接種を努力義務化をすることで、子どもの保護者や小児科医がワクチンを接種するのと自然感染とどちらがリスクか決断を迫られる事態にはなってほしくはありません。

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2020年9月30日 (水)

この冬は その一

今年の冬はインフルエンザと新型コロナウイルスの同時流行で医療機関はたいへんなことになると言われています。これをツインデミック(双子のパンデミック)」という人もいます。果たしてそうなるでしょうか。感染症の流行予測はできません。しかし興味深いデータがあります。
WHOの統計によると、オーストラリアの3月20日から8月30日までの感染者数は全国でわずか33人でした。2019年の同時期の1万1196人から99.7%も減りました。ブラジルは91%減の218人、南アフリカは99.5%減の6人だったそうです。これらの国ではインフルエンザの検査数は昨年よりも増えた国が多く、オーストラリアは26%増の約7万件、ブラジルでも24%増の約1万4千件を実施しました。専門家は感染者が見つからなかったのではなく、実際にインフルエンザが減ったとの見ているようです。
感染者数が減った理由について、米疾病対策センター(CDC)は「新型コロナのまん延を防ぐために実施された対策により、感染が減少したようだ」といっています。
オーストラリアは渡航制限や集会、営業の制限のほか、ソーシャルディスタンスの確保、手洗いやせきエチケットの徹底も求めました。ブラジルは、学校の休校やマスクの着用義務化のほか、政府がインフルエンザ予防接種を推奨したことも感染抑止にプラスに働いたといいます。
冬が終わった南半球ではインフルエンザワクチンの接種や感染対策をおっこなってインフルエンザの流行をほぼゼロにしたのです。日本人も感染対策にはまじめに取り組んでいます。先行した南半球の国々の例から、今年の冬はインフルエンザの流行はかなり抑えることができそうです。
実はその予兆がすでに表れています。厚生労働省によると、9月14~20日の1週間に全国5千カ所の定点医療機関から報告されたインフルエンザ患者数はわずか4人でした。毎年秋の始まりでもインフルエンザのの患者はいます。全国では1000人以上はいます。しかし今年は例年の千分の1以下の低水準となっています。
インフルエンザだけではありません。例年なら外来で診られる感染症が今年は激減しています。小児科では夏に見られる手足口病をほとんど診ませんでした。例年夏の終わりから秋の始めにも流行があるRSウイルス感染症も今年は皆無です。これらは個人個人の感染対策の結果と考えられます。
感染症流行の予測はできませんが私はこの冬はインフルエンザ流行の可能性はかなり低いと思います。

インフルエンザワクチンについて厚生労働省は、10月1日から定期接種の対象になっている65歳以上の高齢者など重症化のリスクの高い人を優先してワクチンを接種し、それ以外の人は今月26日まで接種を待つよう呼びかけました。これに対して日本小児科医会は乳幼児はインフルエンザ脳症のリスクがあることからハイリスク群であり、優先順位は高く接種を遅らせるべきではないと提示しました。
厚生労働省作成のポスターには「お示しした日程はあくまで目安であり、前後があっても接種を妨げるものではありません」と明記されています。
私のクリニックでも例年通り10月1日から接種を始めます。

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